第12章:不合格と失意の中で
佳奈が出産免許試験で不合格の結果を突きつけられ、夢を奪われる絶望を味わいます。彼女の理想と現実が大きく揺さぶられる中、支えとなるはずの涼とのやり取りにも孤独を感じ、制度への疑念が膨らんでいきます。
佳奈は試験結果を告げられた瞬間、全身が一気に冷え込むのを感じた。彼女の期待と不安、努力のすべてが、この一言で砕け散った。
「23756番、不合格」――無機質なアナウンスが再度響き渡り、佳奈の頭にその言葉が鋭く突き刺さった。母親としての夢が、たった一度の試験で断たれたことに彼女は呆然とする。
彼女は震える手で拳を握りしめ、心の中で言い聞かせた。「私は、ずっと母親になりたかった……それだけなのに……」周囲には、同じく不合格を告げられた他の受験者たちが、無表情で列をなして退出していく。佳奈の目にはその姿が人形のように映り、まるで心を失った存在のようにさえ見えた。
不合格のショックから抜け出せないまま、彼女は帰宅の途につく。家に戻ると、彼女を待っていたのは冷たい沈黙だった。
「涼、何か言ってよ。このままじゃ結婚しても子供を育てられないんだよ。もし子供ができても免許がなかったら……」
「俺だって、佳奈がどれだけ頑張ってきたか知ってる……でも、次の出産免許試験の3年後にはきっと大丈夫だよ」涼はそれ以上何も言わず、ただ彼女の様子を見守るだけで、慰めの言葉さえもかけてくれない。他人事のようにも取れるその姿に、佳奈は一層孤独を感じた。
「未来を考えると、どうしても喜べないの。この制度の中で、私たちは本当に子供を幸せにできるのかな……?」佳奈は自分の夢が壊された原因が、制度そのものにあると痛感し始める。母親になりたいという純粋な願いが、厳格な制度によってどれほど重いハードルとなっているのか。そして、それを乗り越えることができなかった自分を責める気持ちも、同時に押し寄せてくる。
彼女は机に向かい、出産免許の受験票を見つめた。それは、希望の象徴でもあり、今では無力感を抱かせる証拠でもある。その紙を何度も握りしめ、涙が滲んで視界がぼやけていく。「私は、何のために努力を続けてきたのだろう……」
佳奈の心にあるのは、夢を奪われた絶望と、制度そのものに対する強い疑問だった。
夢を失った佳奈に、政府側の由紀が接触し、制度の裏側や反免許組織の存在をほのめかします。由紀の誘いに戸惑いながらも、制度への疑問が佳奈を新たな一歩へと駆り立てようとしています。




