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148.赦しと破滅の分水嶺

~リアルのこれまでのあらすじ~

 バイオハザードは終わっていなかった。

 旦那の出勤停止が解除されたと思ったら、今度は下の子がインフルと診断された。

 入院した姑は守り切ったが、結果として三週間という長い戦いになった。自分がかからなければ、来るなら一気に来いと思うのは自然な感情ではなかろうか?

 その戦いが、一昨日ようやく終息した。

 あとは自分と舅が発症しないことを祈るばかりである。


 偽の聖歌手さんたち一行も、これからが苦難の本番だ!

 なのにあんな嘘を重ねる対応で自分たちを追い詰めるのを見て、ユリエルたちの反応は。

「おお~足掻いてる足掻いてる。

 しかも、自ら爆弾を積み上げる方に」

 ユリエルたちは、集まってタカネノラたちの様子を見ていた。

 相変わらず結界のせいで天幕内のタカネノラたちの会話は聞こえないが、カーリーンたちと言い争う様子は手に取るように見聞きできる。

 タカネノラたちは案の定、真実を明かすなんてことはせず、何としても攻略するためにこれでもかと嘘を積み上げている。

 途中まではタカネノラとワイロンがそれぞれにやらかしていたが、ワイロンの知略でどうにか説明をつけ、パッショニオの乱入で話を一旦棚上げすることに成功した。

「……そんな事しても、どうにもならないのになぁ」

 ユリエルは、呆れ半分哀れみ半分で呟く。

 タカネノラたちのしていることは、一時しのぎでしかない。しかも確実に、このダンジョン攻略までしのげないヤツである。

「今は未来を守るためって言えば人々は納得するかもだけどさ……実際歌が切れて人々に余裕がなくなったら、そんな事言ってられなくなる。

 そうなった時に、弱くてもいいから歌ってって命懸けでお願いされたら、どうするの?

 ま、後先考えないあいつらに、そこまで考えるのは無理か」

 冷笑するユリエルの横で、フビンダが憎らし気に言う。

「お言葉ですが、考える訳がないかと。

 他人を踏みつけて平然としている人間は、踏まれる側の事情など考えませんもの。そして、世の中は自分のためのものだと思い込んでいる。

 私の婚約者がそうであったように。

 むしろその報いがどこまで降りかかってきても、自分のせいだと思えるか怪しいものだわ」

「それもそうか。

 あいつら、この期に及んでこれまでの搾取生活を維持することしか考えてなさそうだもん。

 でなきゃ、こんな馬鹿な判断ができるもんか!」

 タカネノラたちの冷静に考えたら最悪の判断を目の当たりにして、見る者は皆、それがあいつらの全てだと納得した。


 タカネノラは、力の要を失ったことを隠したまま、進軍を強行する道を選んだ。

 それが、考え得る中で最悪の破滅の道だというのに。

 どんなに嘘でその場をごまかしたって、もうあと半日ちょっとで全軍の強化が切れ、それに防がれていたダメージが津波のように襲ってくるのに。

 そんな状態で、これまでと同じように進軍と食糧輸送ができる訳がないのに。食糧に仕掛けられた罠は、もうその牙を見せ始めているのに。

 こんな状態で進軍継続など、正気の沙汰ではない。

 しかも、外に助けを求めずになど。


 にも関わらずタカネノラがこんな地獄の沼に突っ込んでいく理由は、たった二つ。

 何としてもミュゼという金の卵を産む鶏を取り戻し、これまでと同じ、いやこれまで以上の甘い汁を吸いたいから。

 そして、これまでの詐欺がバレて全てを失いたくないから。

 この二つを何より重く考えるタカネノラたちに、ここで引いてミュゼを諦めるという選択肢はないのだ。

 自分たち以外の全軍を捨て駒にしても、自分たちの甘い汁を守ろうとしている。

 そしてそれが、都合よくうまくいくと信じている。

 これまでさんざん曲がったことを押し通してそれが当たり前になってしまい、常識的に成功率を考えることができないのだ。

 そのせいでうまくいった時のことしか考えられず、今自白するより何倍もひどい事になる嘘と悪手を雪だるま式に重ねている。

 これが、タカネノラたちのバグッた行動原理だ。


 イシアタマンたちが嘘を暴けず進軍が再開されたのを見ると、ミュゼの目からはらはらと涙がこぼれた。

「本当に……何て罪深い人たち!

 今ここで私を見殺しにすれば、私が世に出られなくなる代わりに、討伐軍の皆さんの命が助かるのに。

 自分の嘘のために、どれだけ殺せば気が済むの!!」

 ミュゼは捕まって地獄から解放された後も、ずっと討伐軍の人々の身を案じていた。

 タカネノラの言う事ばかり信じて虚言をもてはやし、自分を閉じ込め嘲笑う牢獄の一部だった人たち。

 しかしその人たちは騙されているだけで、基本的に世のため人のため行動に出ようとする善人なのだ。

 しかも元々死と隣り合わせの軍人だけでなく、タカネノラの人気に引きずられてきた一般人まで混じっている。

 自分の真実が明かされるのと引き換えにその人たちが命を落とすと思うと、ミュゼは胸が張り裂けそうだった。

「タカネノラさえ、罪を認めてくれたら!

 たった今でも、赦しを乞うためだけでも、謝ってくれたら!

 本当のことを知ってもらうためだけに、こんなに人が死ななくていいのにぃ!!」

 ミュゼは、血を吐くように叫んだ。

 しかしタカネノラの秘密を知る者全員がこの態度では、代わりに使われる人々が消耗しきるまで、人々自身も過ちに気づかないだろう。

 いや、秘密を知る者全員ではないが……。

「……これを見ると、あなたの決断の大きさがよく分かりました。

 あなたも赦したいとは思えませんが、あの方々よりははるかにましです。

 謝罪し、償いをその身で示したことに免じ、赦しましょう。顔を上げてください、クレバーノさん」

「寛大なお言葉、感謝いたします」

 被害者からの大いなる許しを得て、クレバーノはようやく土下座を解かれた。


 その決断が済むと、ミュゼは呆然としている一番若い聖騎士にも声をかけた。

「……それで、あなたは納得できましたか、ショタンニさん?」

 ミュゼは、ショタンニに自省を促すように問いかける。

「さっきのあなたの態度は、タカネノラたちとクレバーノさん、どちらに近いものだと思いますか?

 そしてあなたは、どちらが好ましいと思いますか?

 己の胸に手を当てて、よく考えてみてください」

 まっすぐに見つめられてそう言われると、ショタンニは気まずそうに目をそらし、口をモゴモゴ動かした。

 反応を見るに、自覚はできたのだろう。

 少なくとも、逆ギレしてこちらに非を押し付けてはこない。

 どうにかこいつも赦しの峠を自力で越えられるよう祈りながら、ユリエルたちはさっきのことを思い出しつつ返答を待った。


 ショタンニは真実を知ってから、クレバーノを責め通しだった。

 クレバーノに顔を上げることを許さず、ひたすらなじって罵声を浴びせ続け、下げたままの頭を蹴りつけた。

 さらにクレバーノがミュゼにも謝罪すると、ショタンニはにわかに勇ましい顔になってミュゼにこう言ったのだ。

「ミュゼ様、あなたと僕は、こいつらに騙された者同士。その無念はよく分かります!

 こんな奴、どうしたって赦せませんよね?

 ここは僕が貴女のために、この嘘つきなうえ都合が悪くなると裏切る最低野郎を討ち果たして差し上げましょう!」

 なんと、自分を同志として売り込み、ヒーロー気取りである。

 傍から見ていたフビンダとユリエルは、思わずあんぐりと口を開けた。

「え……何なのこの調子の良さ?状況分かってる!?」

「いやいや、冷静に考えるってことが……あ、こいつ酔っぱらってるんだった。

 しょうがないな、私が酔いだけは治してみよう」

 思えば、ショタンニは未だ二日酔いで正気とは言い難い。何となく本性は見えた気がするが、ユリエルはショタンニに解毒をかけてやった。

 しかし、ショタンニの態度はあまり変わらなかった。

 クレバーノへのボロクソな罵倒は鳴りを潜めたが、代わりにますます調子よくミュゼの気を引こうとしている。

「ミュゼ様、これからはこの僕が、必ずあなたを守ってみせます!

 僕は、あのわがまま女やそこに転がってる嘘つきとは違います。僕はこの聖剣に誓って、あなたの真実に尽くしましょう。

 大丈夫です、僕はこいつみたいに裏切ったりしません!

 必ず、あなたをこの悪の巣窟から救い、そこの裏切り詐欺野郎に引導を渡してみせますから……僕のために、歌ってください!」

 ショタンニは目をキラッキラ輝かせてこう言うが、ミュゼの顔色は芳しくない。

 当たり前だ、本人は気づいていないが、どんなに今正義に燃えているつもりでも、こいつにこんな事を言う資格があるものか。

 本人以外はみーんなそれに気づいて(顔を上げられないクレバーノ以外は)白い目で見ているが、本人はますますアピールしようと盛り上がるばかりだ。

 上半身裸で魔封じの鎖で両手首も縛られているのに、その状態でマッチョなポーズを取ったりクレバーノにキックの型を取ってみたり。

 完全に、真の聖歌手のために悪を倒すつもりになっている。

 その態度に、ミュゼはげんなりして呟いた。

「……どうしよう、クレバーノ以前にこいつを赦したくなくなってきちゃった」

「何で!?」

 ミュゼの言葉に、さすがにショタンニも気づいて目をむいた。

「ど、どうしてですか!?僕はただ騙されてただけ、あいつの嘘を私欲で守ったりしてないだろ!

 僕は、騙された気持ちが分かる、あなたに寄り添えるはずだ!

 なのに何で……はっ、神敵め、おまえが何かしたんだな!?

 やい神敵、彼女の心を解放しろ!!」

 己を省みもせず、悪い奴が悪いに違いないとユリエルを責める。

 ユリエルは、こめかみをピクピクさせながら突っ込んだ。

「ええ、あなたたちの誰もやらなかったように、身も心も解放してあげたけど?

 てゆーかこれを否定するなら、あなたは、ミュゼちゃんが不当に奴隷にされたままのがいいのかしら」

 それを聞くと、ショタンニは目を白黒させた。

「ああ、いや……そんなつもりじゃ……知らなかったんだから仕方ないだろ!!

 知ってたら、絶対に助けた!神に誓って!!

 それにおまえなんかが、ミュゼにいいことをするもんか!分かってるぞ、信用させて悪に加担させる気だろう!?

 ミュゼ様、必ずお救いします!どうか、僕に力を!!」

 しかしミュゼは、すげなく首を横に振った。

「お断りします」

「は……はああぁーっ!!?何でだ、おかしいだろ!!」

 憤慨するショタンニに、今度はフビンダが突っ込んだ。

「何が、知ってたら助けた、真実に尽くします、よ。

 あんたがその口で言えば言うほどね、紙よりも薄っぺらくなるの。相手のせいにすれば信じてもらえるなんて、おこがましい!」

「何だとぉ!?おまえなんかが、僕のどこを見て……!」

 キャンキャン喚くショタンニに、フビンダは冷徹に突きつける。

「見るとこだらけよ、この口だけ男!

 タカネノラが処女だなんて、自分も楽しんでおきながら言ってたくせに。それを肯定するワイロンの背任も、知らないとは言わせないから。

 そのあんたが真実を守るなんて言って、信じられる訳ないでしょ!」

 そう、ミュゼの件だけならともかく、その他のいくつもの件でショタンニは確実に詐欺を働いた側である。

 特に、自分もタカネノラの肉体を味わっておきながら人々には処女と喧伝していたのは、どう足掻いても真っ黒だ。

 しかも、これを含んだ多くの件でワイロンが人々の信頼を裏切るのを、側で見ていながら文句の一つも言わなかった。

 この有様のどこをどう見れば、真実を守るなんて信じられるのか。

 そこを突かれるとショタンニは一瞬はっとしたが、すぐに言い返した。

「それとミュゼ様のことは、別だろ!話を逸らすな!

 少なくとも僕は、ミュゼ様のことで騙した側じゃないぞ。なのに寄ってたかって、違う話で決めつけるな!!」

 鼻息荒くやりこめたつもりのショタンニに、ミュゼは静かに告げた。

「ええ、あなたがこれから真実を大事にして誠実に守ってくれたら、どんなにいいでしょう。

 でも、本当にそれができるか、他の日頃の行いから考えるのは当たり前よね。

 現にあなたはタカネノラの貞操の件でフビンダさんを騙していたのに、言い訳をしたり話を逸らしたりで、謝罪の一つもないわ。

 こんな不実を見せつけておいて、信じろと言われても……」

 すると、ショタンニはボッと赤くなり、ぐっと唇を噛みしめてひどく悔しそうにフビンダをにらみつけた。

 フビンダには強く出られても、さすがにミュゼにはそうはいかないらしい。

 ショタンニは、勢いよくというよりぶっきらぼうにフビンダに頭を下げた。

「騙してて、すみませんでした!

 でも、別にこの嘘でおまえらの命まで脅かした訳じゃないからな。タカネノラや、全軍の命に関わる裏切りをやったクレバーノとは違うから。

 ほら見ろ、僕はこの通り、誠実に謝れる男だぞ!」

 謝るには謝ったが、その後の言い訳と都合のいい誇示は止まらない。

 フビンダもミュゼも、呆れ果てている。

「命を脅かしてない?そもそもタカネノラが処女じゃないって知られていれば、ついて来なくて助かった人がいたんじゃって、私さっき言ったのに。

 それに、男って本当、処女には幻想を抱いてお財布のひもが緩むから……それで生活が苦しくなった奥さんに今の謝罪をしてみなさいよ!」

「ええ……あんなにタカネノラと楽しんで、当事者意識がまるでないわ。

 それに、クレバーノの裏切り以前に全軍を苦難に叩き落しているのは、タカネノラたちだから。

 それを裏切ったのは、むしろ足を洗ったってことでしょうに」

 ショタンニの言い分は、状況の中であらゆることを自分に都合よく解釈するばかりの、全く筋が通らないパッチワークだ。

 しかしそんなの、被害者には通用しない。

 むしろショタンニが責めを逃れようと足掻けば足掻くほど、潔く足を洗って謝罪したクレバーノとの差が際立つというのに。

 ショタンニは、自分はクレバーノより悪くないと見せつけようとするほど逆方向に見られる、泥沼にはまっている。

 だがショタンニがこれ以上馬鹿な言い訳を思いつく前に、ユリエルが一旦話を止めた。

「おーい、タカネノラたちに動きがあったから、ちょっと中断!」

 ユリエルは、ショタンニに生温かい目を向けて言った。

「人間、他人の事はよく見えても自分のことは激甘フィルターで見えないもんよね。

 だったら、ちょっとタカネノラたちの方を見て、自分とクレバーノを比べてみよっか。あんなのを裏切らない方がよっぽど罪だって、きっとよく分かるぞ~」

「うう……神敵や裏切り者の言う事なんか……!」

 しかしやはり一度本気で惚れた女のことは気になるのか、ショタンニはタカネノラが目を覚ますことを期待してついて来た。

 クレバーノも、顔を上げられないまま匍匐前進でついて来た。


 そして目にした、タカネノラが己の嘘と利益を守るための、醜いうえに将来にツケを回す愚行の数々。

 歌の効果が切れれば全軍がどうなるかは火を見るより明らかなのに、タカネノラは頑として真実を明かさない。

 約束を果たせと当たり前のことを求める指揮官たちに嘘を積み上げ、逆に非を押し付け、自分のためだけの苦行を強いる。

 そのうえ、生じた混乱と被害について一言も謝らず逆ギレするばかり。

 これには、ショタンニも唖然とした。

「え……ちょっと、何やってんだよ……!

 そんな事したら、ますます勝てないしみんながひどい事になる……」

 ここまで皆を導いて来たタカネノラだからきっと皆のことを考えてくれると、そんな期待は粉々に打ち砕かれた。

 それにこんな事をしていては、タカネノラたちが自分とミュゼを助けに来られる公算もひどく怪しくなってきた。

 もうショタンニの視界に、愛した勝利の女神はいない。

 いるのは、自分の利益にかじりつく嘘塗れの鬼婆だけだった。


 この現実を目の当たりにして、ショタンニはひどい自己嫌悪を覚えた。

 自分はタカネノラに、真実を明かして人々に謝り、人々と力を合わせて勝ち筋を見つけるか、せめて人々を守ってほしかった。

 なのにタカネノラがしたのは、全く逆のこと。

 真実を明かさない現実を認めない謝らない、他人のせいにする。

 見ていて、絶望しか感じなかった。こんなにも自分のことしか考えられない人間がいるものかと、打ちのめされた。

 しかし……一方で、ショタンニには、そうするタカネノラに共感もできてしまった。

(分かる……分かるよ、こんな重いもの背負いたくないんだよな。

 しかもこれまでうまくいってもてはやされてたから、それが悪かったなんて認めたくないし、これまでの輝いた日々や手に入れたものを否定されたくないんだよな。

 でも、被害者から見たら……その考えが甘えでしかないんだ!)

 ショタンニが共感できるのは、自分がついさっき同じことをしていた時にまさに同じことを思っていたから。

 現実を認めたくない、謝ったら終わりだという気持ちが、手に取るように分かった。

 しかし同時に、そんなタカネノラが醜くて憎くて仕方がない。

 共感はあっても、被害者としての自分がこんなの許せるかと叫ぶのだ。

 その時ショタンニは、自分がさっきどう見られていたかを理解した。

 周りを騙して裏切っておいて、それでも己の正しさにしがみつくことが、いかに罪深く許しがたいことであるか。

 タカネノラと未だ目覚めぬ先輩たちを見て、ああはなりたくないと思った。

「その……本当に、すみませんでした!」

 ショタンニは、未だに駄々をこねようとする情けない己をねじ伏せて、さっきのクレバーノのように土下座した。

「騙しておいて、言い訳して謝らなくてごめんなさい!

 みんな、僕が嘘を守る側だって分かってたのに……本当のことを認めなくて、ごめんなさい!

 それから、クレバーノ先輩……僕なんかよりずっと誠実で正しい事をしていたのに、僕より悪いなんて責めてごめんなさいぃ!!」

 ショタンニの頬に、己を恥じる涙が伝う。

 初めから、素直に謝れば良かった。現実をしっかり見て、被害者の気持ちを考えれば良かった。

 そうすれば、自分がここまで見下げられなくて済んだのに。

 己の頭の軽さと身勝手が、痛くて仕方がなかった。

 そんなショタンニに、ミュゼの優しい声がかかった。

「顔を上げてください、ショタンニさん。

 あなたは、己のしたことと向き合うことができました。この痛みを胸に刻んでこれから真実に尽くすなら、私は赦しましょう」

「あ、ありがとうございますうぅ!!」

 フビンダも、仕方がなさそうに赦した。

「私も、信じてみることにするわ。

 他人のふりを見て己を省みられるなら、まだ見込みがあるもの。自分がパワハラで嫌な思いをしても他人にモラハラをまき散らしていたあの男とは、えらい違い!」

「……く、苦労したんスね。本当にすみませんでした!」

 最後に、ユリエルも手を叩いてショタンニを迎えた。

「おめでとう、よく言えました!

 悪い事は誰でも多少はやっちゃうもんだけど、謝って直せるなら未来はあるわ。

 もっとも、これからはクレバーノ共々しっかり償ってもらうことになるけど……その方が自分が救われるって、分かったね!?」

「は、はい!もちろんですとも!」

 タカネノラたちの醜態を他山の石とし、ショタンニは己の罪を見つめ直して赦された。

 それができるかが運命の分かれ道であることを、未だ謝らない罪人たちは知る由もなかった。


 ショタンニ君は、少年と呼べる年で聖騎士になったくらい素質はあるので、あまり苦労を知らない分現実を見る目が育っていません。

 しかし、他人のふりをみて自分に重ねたり、周囲がどうなるか想像する(補助と誘導は要る)程度の良心はあります。

 なので、促されてではありますが謝って反省することができました。


 現実、本当に心を入れ替えて謝る奴はそう多くありません。

 謝罪がスムーズにできるとしても、クレバーノのように打算で行う者が大多数でしょう。

 しかし、為さぬ善より為す偽善。行動と結果が9割を決める世界では、自分のためであってもすぐ謝れる人に軍配は上がるのでした。

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