124.精霊の寵児 43
古の家系
それは、サヴィス王国始祖と光の精霊神エターナルローズの血筋を受け継ぐ家系だ。
4親等以上離れた親戚との同族婚を繰り返しながら、時折、無関係の外部の者と婚姻する。
そうして血筋の濃淡を操作する家系が、茶会に参加した一族達であり、ゲオルクのルスター家も、その一つだった。
寵児の伴侶は、基本、古の家系から選ばれる。
精霊神達は、光の精霊神エターナルローズの気配が薄まりすぎると、寵児を定めにくくなり、守護も与えにくくなる。
そうした長年の経験から、現在の婚姻形式となった。
寵児の不在
それは、サヴィス王国の存亡に関わってくる――。
そうした情報を、アグロテウスはゲオルクをねじ伏せつつ、意識下に情報を流してくる。
寵児のあり方、存在意義。
同時に――突きつけられる、過去の婚約落第者の記録。
寵児がありながら、他の女性達と色恋沙汰に興じる者。
寵児の意向を無視し、他者の意見を聞かず、自分が正しいと引かぬ者。
寵児の権力を傘に、富を得ようとした者――。
精霊神達が体験、もしくは当時の寵児の記憶が、一気にゲオルクに流れこんだ。
実際は数秒なのだろうが、ゲオルクは数時間の情景を見せられた感覚だ。
それらを見ても――思いに変わりは無い。
「――一つ、聞いてもよろしいでしょうか」
威圧に飲まれながらも、ゲオルクは平静であろうと努めた。
『なにかな?』
首をかしげながらも、アグロテウスは威圧の手を緩めない。
浅い呼吸、深い呼吸を織り交ぜて、ゲオルクは威圧に耐えた。
「なぜっ! フリージア嬢は守られないのですか……っ!」
威圧で声が途切れないよう、意識が飛ばないよう耐えながら、ゲオルクは叫んでいた。
ゲオルクのその声に、アグロテウスの威圧が唐突に途切れる。
圧力から解放された体は、極度の疲労感に見舞われた。
ゲオルクは両膝をつき、激しい倦怠感をおぼえながら、アグロテウスに顔を向けた。
アグロテウスは――狼狽していた。
ゲオルクが驚くほどに。
『守られないって――どういう意味?』
告げる言葉に、ゲオルクもわかるほど、動揺がにじんでいる。
威圧から解放された体で、数呼吸、深い呼吸を繰り返して心肺を調えてから、ゲオルクは続けた。
「神遠の森での襲撃で、慎重にならざるをえないのは理解できます。
しかし――それは本当に、セクルト貴院校入学を断念する理由だったのでしょうか」
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