123.精霊の寵児 42
呪文のみの発動は、感覚的理解が大きく関わっている。
勘がいい者はすぐに取得し、馴染めない者は時間がかかった。
セクルト貴院校でも、魔法は「貴族籍の必須の嗜み」の認識だ。
能力の高さは羨望を受けるものの、能力の高低は騎士および騎士家系以外、政治的駆け引きに使えなかった。
長年、近隣国との戦争がないサヴィス王国は、魔法取得の必要性が低かった。
武力、魔法の鍛錬を重視する騎士も、自国内の警備、犯罪者等の取り締まりに必要とし、他国との争いに必要との認識はない。
ファ・ディーンは違う。
国境警備――境界警備の戦場を目の当たりにしてたゲオルクは、魔法習得の必要性を痛感した。
魔法だけでない。
剣技なり体術なり、武術的訓練も必要だと切迫した想いを抱いた。
――考えは当たっていた。
アグロテウスに教えを請うた時。
彼はあっけらかんとこう告げた。
『いいよ。寿命が延びたね?』
笑って告げるアグロテウスの目の奥は――寒気を感じるほど冷淡だ。
『寵児の伴侶条件は知ってる?』
教えを請うたゲオルクに、アグロテウスは涅槃姿で宙を浮きながら、世間話のような軽い口調で続けた。
首を横に振るゲオルクに『ふふん♪』と得意げな笑みを浮かべ、得意げに続けた。
『一つ、古の家系であること。
二つ、寵児の選出者であること。
三つ――僕たち、精霊神が認めた者であること』
明るく、くつくつと笑いながらアグロテウスは告げる。
だが。
「――――っ!?」
最後の条件を告げたアグロテウスから、重圧を伴った威圧感が、ゲオルクに向けられた。
重しを乗せられたような空気の重圧、呼吸も苦しくなるほどの圧迫感。
立っていられなかったゲオルクは、アグロテウスに礼をとるように見せて、片膝を立てた形で膝をおった。
片膝をついて、頭を垂れる姿勢で、呼吸を確保する。
――礼を取るように見せて、苦痛の少ない体勢をとったのも、アグロテウスには見抜かれている。
うつむいて顔が見えないが、向けられる視線から、溢れる感情が伝わってきた。
そなたは、フリージアにふさわしいのか?
感情と同時に、付随する情報も伝わった。
ゲオルクが婚約者となったのは、フリージアの要望、オズマが伴魂である点が大きかった。
婚約者時点では、精霊神の意向はほとんど採用されない。
精霊神の選定は、婚約後、大きく作用する――。
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