119.精霊の寵児 38
国境警備戦場の場に。
フリージアに盲目的に好かれているとは思えないが、嫌われてもいないと、ゲオルクは思っている。
フリージアとの政略結婚をしてもしなくても、婚姻前に国境警備の戦場を知られてるのは不利益なはずだ。
ゲオルクの問いに、フリージアは、より一層オズマを抱きしめて、体毛に顔を埋めた。
「嘘を――つきたくなかった」
大変な国境警備を知らせないままの婚姻を、フリージアは疑問視していた。
「実情を知ってから婚姻するか否か、判断すべきだ」と。
国境警備は危険だ。
その事実を隠したくなかったと、オズマに抱きついたフリージアは、へらりと笑う。
「断るなら、早めに返事が欲しい」
眉先を下げた、力ない笑みを。
「次の候補選定がどうとか……急かされてる」
困り顔で告げるフリージアに、ゲオルクは思考が停止した。
「……断る?」
顔を強ばらせるゲオルクに、フリージアがうかがうように、そろりそろりとつぶやく。
「婚姻が嫌だったから、不機嫌だったのだろう?」
不機嫌だったが、それは休暇中、セクルト貴院校に残りたかったからだ。
フリージアとの婚姻話を、ゲオルクが知らなかった。
「それは……っ」
言いかけて――言葉が続かなかった。
違うと答えて「では婚姻はどうするのか」と聞かれても、ゲオルクは答えに詰まる。
フリージアとの婚姻は、考えていなかった。
――互いに対象外だと、ゲオルクは思っていた。
フリージアもゲオルクも、共に第一子だ。
サヴィス王国は、性別より生まれ順を重視する。
フリージアもゲオルクも、自分の家を継ぐのだと思っていた。
フリージアの婚姻相手は、少々年が離れるが、五つ年下の弟、ロジェスが候補だろうと、ゲオルクは思っていた。
その点もあって、自分はファ・ディーンへ行かずともいいのではと思っていたのだ。
フリージアとゲオルクの婚姻。
フリージアの話ぶりでは、エルド家――エルディナード公爵家だけでなく、ゲオルクの家、ルスター家も承諾しているようだ。
家同士の繋がりを目的とする婚姻は、当人の意志は軽視されがちだ。
フリージアは「無理に進めたくない」と、ゲオルクの想いを確認したのだ。
ゲオルクは困惑した。
フリージアとの婚姻はあり得ないと思っていたと同時に、考えないようにしていた。
連日更新11日目です。
朝は間に合いませんでした……。
仕事から帰ってから書いて、どうにか間に合いました。
連日更新で間違いないですよね?(汗)
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