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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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118.精霊の寵児 37


 フリージアは笑みを消して視線を落とし、より一層オズマを抱きしめた。


 彼女の不安が、ゲオルクにも目に見えた。


「今日の警備は――以前は父上がされていた。

 私が――父上を助けようと、アグロテウスの力を借りて魔法を使って、倒れてから――魔法を使っても倒れないよう、鍛錬してから――そう、できるようになってから――。

 次第に父上は、警備から遠ざかった。

 始めは「お忙しいから」と思っていたが、頻度が増え、年に一度も警備につかなくなった。

 前公爵――おじい様は、国境警備に注力されていた。

「領民に示しがつかないから、国境警備に参加して欲しい」


 そう父上に進言しても――。


寵児ディーバが対応するから、充分だろう」

 ――と……言われた」


 抱きしめるオズマに、フリージアは顔をうずめる。


「元々父上は、物質的な争いごとを厭う人だった。

 それでも「公爵家跡継ぎ」の肩書きが、父上を奮い立たせていた。

 そんな父上の矜持を――私が手折ってしまった」


 オズマの首元に顔をうずめ、フリージアは話す。


 そうした経緯でフリージアは国境警備に従事するようになり、大々的な魔法を使う時は、公爵の許可を得るようになったという。


 公爵の許可を得るのは、フリージアが公爵をたてていると、対外的に示すためだ。


 ファ・ディーンの長は、公爵とするために。


「すまない。こんな話をして」


 言って、フリージアは苦笑する。


 その笑みは痛々しげで、これまで、相談できる者がいなかったのだろうと感じられるものだった。


 公爵は領地経営を図り、警備はフリージアが主体となる――。


 それがファ・ディーンの――エルディナード公爵家領地の体制だ。


 おそらく、朝の散策――国境警備が日課だと、ゲオルクを誘ったのは公爵の意図だろう。


 公爵は「普通の散策」で終わらせるつもりだった。


 実情を見せたのは、フリージアの思慮だろう。


 ゲオルクは、ほぼ確定しているフリージアの伴侶候補だ。


 貴族籍の政略婚姻だとしても、ゲオルクが本気で拒否し、ルスター家が「危険な場所だと知らなかった。婚姻の件は白紙にして欲しい」と願い出れば、エルディナード公爵家は承諾せざるを得ない。


 それほど戦況地帯は、サヴィス王国では希少な地域だった。


 ――負の意味で、だが。


「――なぜ……」


 潜入者との戦闘の場を見てから、ゲオルクはずっと不思議だった。


「あの場に、連れだった?」





連日更新10日目です。

やった! 二桁!

いつも綱渡りです~。(焦)


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