117.精霊の寵児 36
先代寵児の死後、公爵を継いだフリージアの父は、ガイアーティスの加護で奮闘した。
加護でも、行使する魔法は常人より強力だ。
加護と守護には大差ない
領民や警備人はそう思った。
フリージアもその一人だ。
先代寵児が亡くなってから、フリージアは魔法の鍛錬を始めたが、父である公爵のように上手く行使できない。
呪文を唱えても、魔法が発動しないことも、ままあった。
そんなフリージアに、公爵は苦笑する。
「時間はある。これからじっくり鍛錬を重ねればいい」
そう励ました。
そんな日々でのことだった。
その日、公爵はフリージアを伴って、国境を巡回していた。
きな臭い噂のない時期だった。
抗争の無いとき、後学の為に国境巡回を経験させようと思ってのことだったが、運悪く、潜入者と遭遇してしまう。
公爵はフリージアを戦線から離脱させ、応戦した。
ファ・ディーン側優勢の戦況だったのだが。
「っ!
お父様っ!」
流れ矢が公爵に当たりそうになり、フリージアは反射的に魔法を使った。
矢は当たる寸前、盛大な業火に包まれ、消し炭となる。
規模、精度ともに上級魔法だったが、最前線から離れた場所だったので、気付いた者は少ない。
気付いたのは、公爵と、側にいた警備人数名。
直後、フリージアは慣れない魔法を使った、過度な気力消費で、意識を失った――。
国境警備を明かし、アグロテウスとゲオルクが話し込んだあの日。
「……ずるい」
フリージアはゲオルクと話し込んだアグロテウスに、胡乱な眼差しを送った。
アグロテウスは苦笑し、部屋主であるゲオルクの承諾なしに、勝手に入室を許可した。
「勝手に話を進めるな」と、ゲオルクは即座に退室を求めようとしたのだが。
嬉々としてオズマに抱きつくフリージア、嬉しそうに尻尾をパタパタ揺らす自身の伴魂を見て、何も言えなくなる。
――オズマから伝わった感情も、フリージアに「退室」と告げるのを躊躇わせた。
オズマから、フリージアの切迫した雰囲気が伝わってきた――。
フリージアはゲオルクの勉強机に設えた椅子に座り、ゲオルクと真向かう。
オズマを抱きしめる姿は「誰がオズマの主か」と戸惑うほど、仲がいい。
フリージアはひとしきり、オズマと触れ合った後、つと、アグロテウスを見た。
アグロテウスは肩をすくめただけ。
ゲオルクにはわからなかったが、それがフリージアへの返事だったのだろう。
連日更新9日目です。
二桁が見えてきました!
書き溜めできてません。(苦笑)
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