116.精霊の寵児 35
「許可が下りるまで待つ」
告げて門の前でゲオルクが待っていた数分後。
「ゲオルク!?」
声の方を見ると、馬駆けしていたフリージアが、目を丸くしてゲオルクを見ている。
普段着の、粗野なフリージアだった。
スーリング祭後、「最終学年だから」と、夏と冬の長期休暇時、ゲオルクはファ・ディーンを訪問しなかった。
ゲオルクは自身の能力を高める訓練に注力した為だ。
ファ・ディーンでは、ゲオルクが「フリージアとの接触を拒んでいる」との噂も流れるほど、ゲオルクがファ・ディーンを訪問しないのは、人々の目に異質に映った。
セクルト貴院校では、アグロテウスがゲオルクに魔法を指南した。
アグロテウスへの見返りは、ゲオルクの能力向上。
フリージアと同じ立ち位置に居ようとするなら、必要最低限の武力、魔力が必要だろう――。
アグロテウスの加護を受けた日。
自分の魔力制御に不安を抱いたゲオルクは、アグロテウスにそう訊ねた。
ゲオルクの問いに、アグロテウスはにこやかに微笑む。
『そんなの、大前提の話だよね?』
朗らかな微笑みに内包される、容赦ない能力主義。
アグロテウスはゲオルクに加護を与えた。
――フリージアの今後を考えて。
アグロテウスは――精霊神は。
寵児を至上と位置づけている。
(――だからか)
アグロテウスの返答を聞いて、ゲオルクが察する部分もあった。
精霊神たちに、悪気はないのだろう。
自分の思いで行動しているのだろうが。
――それが、フリージアの周囲に及ぼす影響を、慮られない。
寵児は現世に一人だけ。
寵児は死後、約一月の間に後継者が引き継ぐ。
フリージアの前――先代寵児は、彼女の父方の祖父だった。
通常、祖父からフリージアの父へ、フリージアの父からフリージアへ。
寵児はそのように受け継がれるはずだった。
精霊神の守護を受けるまでに魔力制御が必要なため、つなぎとして伴魂を得ていた。
人単独での魔法行使は、体に負担が大きいためだ。
そうした世襲を超えて、先代寵児が健全なのに、フリージアがアグロテウスの寵児となった――。
それも、フリージアの父が中抜けとなる形で。
精霊神達に聞けば、緊急時、こうした事例はこれまでにもあったという。
同時期に二人の寵児の存在は可能だが、祖父が存命中、フリージアは魔法を使わないようしつけられた。
連日更新8日目です。
今日から仕事です。
書き溜めできてません。(汗)
Xで、更新お知らせ始めました。
https://twitter.com/taka_sui_x
アカウント @taka_sui_x




