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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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116.精霊の寵児 35


「許可が下りるまで待つ」


 告げて門の前でゲオルクが待っていた数分後。


「ゲオルク!?」


 声の方を見ると、馬駆けしていたフリージアが、目を丸くしてゲオルクを見ている。


 普段着の、粗野なフリージアだった。


 スーリング祭後、「最終学年だから」と、夏と冬の長期休暇時、ゲオルクはファ・ディーンを訪問しなかった。


 ゲオルクは自身の能力を高める訓練に注力した為だ。


 ファ・ディーンでは、ゲオルクが「フリージアとの接触を拒んでいる」との噂も流れるほど、ゲオルクがファ・ディーンを訪問しないのは、人々の目に異質に映った。


 セクルト貴院校では、アグロテウスがゲオルクに魔法を指南した。


 アグロテウスへの見返りは、ゲオルクの能力向上。


 フリージアと同じ立ち位置に居ようとするなら、必要最低限の武力、魔力が必要だろう――。


 アグロテウスの加護を受けた日。


 自分の魔力制御に不安を抱いたゲオルクは、アグロテウスにそう訊ねた。


 ゲオルクの問いに、アグロテウスはにこやかに微笑む。


『そんなの、大前提の話だよね?』


 朗らかな微笑みに内包される、容赦ない能力主義。


 アグロテウスはゲオルクに加護を与えた。


 ――フリージアの今後を考えて。


 アグロテウスは――精霊神は。


 寵児ディーバを至上と位置づけている。


(――だからか)


 アグロテウスの返答を聞いて、ゲオルクが察する部分もあった。


 精霊神たちに、悪気はないのだろう。


 自分の思いで行動しているのだろうが。


 ――それが、フリージアの周囲に及ぼす影響を、慮られない。


 寵児ディーバは現世に一人だけ。


 寵児ディーバは死後、約一月の間に後継者が引き継ぐ。


 フリージアの前――先代寵児ディーバは、彼女の父方の祖父だった。 


 通常、祖父からフリージアの父へ、フリージアの父からフリージアへ。


 寵児ディーバはそのように受け継がれるはずだった。


 精霊神の守護を受けるまでに魔力制御が必要なため、つなぎとして伴魂を得ていた。


 人単独での魔法行使は、体に負担が大きいためだ。


 そうした世襲を超えて、先代寵児ディーバが健全なのに、フリージアがアグロテウスの寵児ティーバとなった――。


 それも、フリージアの父が中抜けとなる形で。


 精霊神達に聞けば、緊急時、こうした事例はこれまでにもあったという。


 同時期に二人の寵児ディーバの存在は可能だが、祖父が存命中、フリージアは魔法を使わないようしつけられた。





連日更新8日目です。

今日から仕事です。

書き溜めできてません。(汗)


X(ツイッター)で、更新お知らせ始めました。

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アカウント @taka_sui_x

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