115.精霊の寵児 34
ファ・ディーンでの、簡素な装いに見慣れていたゲオルクは、彼女の全てに見とれた。
ゲオルクだけでなく、会場の誰もが――男女問わず、王族も含めて、フリージアに呆けた視線を送っている。
人としての美しさだけではない。
精霊神の寵愛を受ける、神聖さも感じさせた。
そんなフリージアの話を聞いて、ゲオルクは我に返ると同時に驚いた。
彼女の勘違いと――自分の行いが招いた誤解に気付いた。
――フリージアは、ゲオルクが自分との婚姻を望んでいないと思っている――。
理解したものの、フリージアの誤解を解いたのは、ゲオルクがセクルト貴院校を卒業した後だった。
ゲオルクは卒業の半年前に、成人の儀を行った。
通常の貴族籍は成人と認められる「祝福」で終わるそうだが、ゲオルクは加えて「加護」を受けた。
『おまけだよ?』
――と、加護を授けたアグロテウスは、いたずらっぽく笑った。
「祝福」でも驚くほどの魔力の高まりを感じるのだが、「加護」で「祝福」の数倍の魔力の高まりを感じるゲオルク。
急に高まった魔力に、ゲオルクは「魔力暴走」の恐れを抱き、魔法の訓練にこれまで以上に注力した。
アグロテウスの加護を受けてから、ゲオルクは彼はセクルト貴院校でもアグロテウスを見れるようになった。
――見えるのは、ゲオルクだけだが。
加護の効能だろうと、ゲオルクは思う。
アグロテウスはゲオルクの鍛錬を面白そうに眺め、時々、助言した。
「ファ・ディーンに居なくても大丈夫なのですか」
頻繁に見かけるようになったとき、ゲオルクは国境警備を案じて訊ねた。
フリージアの守りは大丈夫なのか。
『なにかあれば、すぐに行けるよ』
瞬時にファ・ディーンに移動できると言う。
ほっとしつつ、ゲオルクは魔法に関してわからないことがあれば、遠慮なくアグロテウスに質問した。
アグロテウスもゲオルクの向上心を好ましく思い、惜しみない助言を与えた。
そうして迎えた貴院校卒業の日。
首席として代表あいさつを述べたゲオルクは、卒業式終了後、親しい生徒同士の打ち上げ、家族との食事会も断って、ファ・ディーンへ向かった。
ファ・ディーンへの入村は、警備上、事前に許可が必要とされた。
成人の儀後、アグロテウスの加護を受けたゲオルクは知っていたが――自分を抑えられなかった。
事前申請なく、ファ・ディーンを来訪したゲオルクに、村の門番は驚き、対処に困った。
連日更新7日目です。
目指せ! 二桁!(連続更新日数)(苦笑)
あともう少し!
連日更新されてる方、尊敬します……。
Xで、更新お知らせ始めました。
https://twitter.com/taka_sui_x
アカウント @taka_sui_x
 




