112.精霊の寵児 31
◇◇ ◇◇
『なぜ君たちは神遠の森で君たちは襲撃された?』
神遠の森。
初めて聞く場所だというのに、ゲオルクは即座に大蛇に襲われた森だと推測した。
「フリージア嬢が……王族の血縁者であることからの――跡目争い余波だと、聞いております」
王位継承者第一位は、ウォルチェスター家の第一子だ。
第一子である男児は、素行の悪さから、表立っていないものの「王不適格」とされていた。
数年後、女児が誕生するが、このときは男児一人だけだった。
そこで目をつけられたのが、母を現王妃の姉とするフリージアだ。
フリージアの母方の血筋も、注目される要因だった。
フリージアの母方の家系は、度々、王族の配偶者となる家系だ。
遠縁ながら、王族の血縁者である。
アグロテウスに告げるゲオルクは、自分の言葉で状況と事情を察する。
アグロテウスも、ゲオルクの表情から想いを察した。
『余計なもめ事は排除したいからね』
上位貴族としての華やかな生活、誰もが家名を知る高名さ。
それらは豊かな生活、周囲からの賞賛を得られるが、望まぬ外部の感心を引き寄せてしまう。
近隣国侵入に対処するファ・ディーンからすれば、余計な仕事が増えるだけだ。
それならば。
有事の際の為に、必要最低限の夜会には出席して「存在する」と認知させる。
そうしながらも、人々の関心は――個々人への関心は避けるように軽い暗示を施す。
今の体制が取られる前は、貴族籍間の抗争に巻き込まれそうになったことが多々あった。
現状は、エルディナード公爵家と精霊神達は相談した結果によるものだ。
対策をした中での「神遠の森」の一件。
神遠の森は神聖で、魔獣は入れないはずだった。
大蛇は大魔だったから入れたとも言え、その大魔を使役する輩を、強く警戒した。
フリージアをセクルト貴院校に入学させなかったのも、彼女の安全を考慮してのことだ。
『僕たちの守護は、成人の儀でもある。
本当はジアは貴院校に通う年頃だけれど、訳あってそうしていない。
ファ・ディーンに留まった結果、本人の希望もあって、境界警備に携わって――今となっている』
「危険では――ないのですか」
『僕が守護者に傷を負わせると思う?』
凄烈な笑みを浮かべるアグロテウスに、ゾッとしたゲオルクは「失礼致しました」と頭を下げた。
その後、ゲオルクはファ・ディーンの境界警備、ゲオルク達がファ・ディーンで過ごす理由等、アグロテウスの話を聞いた。
『ジアの婚約者として』
――それだけは、どうにも納得できなかったが。
連続更新4日目です。
ギリギリです……。
さっき書き終えました。
最近は1,000字ほどで更新しています。
以前は1,500字で連日更新してました。
どうしてできていたんだろうと、自分でも不思議です。
主人公祖父の、過去話。
長くてすみません。
根幹に関わる部分なのです~。
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