109.精霊の寵児 28
驚くゲオルクに、アグロテウスは苦笑する。
『ディアは、知識を得ようと貪欲な人間を好むから。
ラドフィクトは知識の習得も優秀だったから、ディアの好む人間だったんだ。
ディアはラドフィクトを守護しても、他の精霊神の誰かが王族長子を守護できると思っていた。
僕たちもそう思っていた。
――正直なところ、僕たちの誰も、高慢なラドフィクトの兄兄を守護したいと思わなかった。
守護する順番は決まっていたから、ガイアーティス――ガイが、渋々ながら請け負うはずだった。
だけど、ガイが守護を与えようとしてもできない。
なぜか。
後に、ディアがラドフィクトを守護したためだと判明した。
理由が判明してから、ラドフィクトはひどい冷遇を受けていたよ。
人の世界では――特に王族では、長子が絶対だからね。
ラドフィクトが心根を折らず、誠実でいられたのは、彼が追いやられた先――ファ・ディーンの人々が、彼を受け入れたからだ。
王都から見れば、僻地で質素倹約、不自由が多く、自然に根ざした生活を送っていた。
ラドフィクトは、村では付き人が常時付きそう、村民からすれば不可解な状況だった。
ラドフィクトは王城では経験しなかった、身の回りのことは自分で対処するよう強いられた。
高慢なラドフィクトの兄なら、かたくなに拒否しただろうが、ラドフィクトは即座に受け入れた。
ラドフィクトにはその方が性にあっていた。
ファ・ディーンで暮らす中、村の実情を知ったラドフィクトは、この地を国の防波堤にと考えるようになったんだ』
ファ・ディーンは山深く、地形の入り組んだ土地だ。
外来との交流が乏しいはずなのに、村は近隣国の侵入被害に悩まされていた。
南北に長いファ・ディーンは、近隣国数国と国境が接している。
山深く複雑な地形は、大群が押し寄せる侵は不可能。
その為、国は関所を設けなかったが、近隣国から度々潜入されていた。
潜入者と鉢合わせた村民が襲われた事例もある。
国に対策を願ったが、潜入者は少数、被害者が僻地の村民だったため、うやむやとなり、結果、対策は講じられず、今に至る。
そうした現状を、ラドフィクトはファ・ディーンでの生活で知った。
大怪我を負った村民もいた。
幸い、一命は取り留めたが――。
そうした実情を、ラドフィクトは重く受け止めた。
潜入者は少数だから大事ない
そう政府中央機関は思っているが。
根本的な考え方が間違っていると、ラドフィクトは思う。
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