108.精霊の寵児 27
「なぜ、エルディナード公爵家だけが裏仕事を請け負うのですか。
その上、尽力に対する十分な見返りを得ているとは、到底思えないのですが」
ファ・ディーンでのエルディナード公爵家は「質素倹約」と誰もが思う暮らしぶりだ。
王族の、絢爛華美な宴席を、スーリング祭で見たゲオルクは、その差が不快だった。
武力と外交。
戦う土俵が違えど、国への貢献度は変わらないはずだ。
同等の待遇を与えられるべきではないのか。
ゲオルクの想いに、アグロテウスはあっけらかんと答えた。
『この暮らしはエルディナード公爵家が望んだものだよ』
「――――――は?」
ゲオルクは素で、不機嫌をあらわにする。
精霊神に、不遜な態度をとったと気付いたのは後のこと。
このときのゲオルクは、功績にたいしてエルディナード公爵家――ひいてはフリージアが軽んじられていると、思えたのだ。
『「名声は諸刃の剣」』
「――――――名声?」
続けて告げるアグロテウスに、ゲオルクは理解が追いつかず、目を点にする。
告げたアグロテウスも困り顔で腕を組み、『ん~~~』と考え込んでいる。
『ラドフィクトが言ってたんだよ。
――ああ、ラドフィクトは、エルディナード公爵家の始祖でね。
彼が質素倹約を掲げて――って言うか、好んで、村民と同じ生活を選んだ。
――ラドフィクトも、つらい幼少期を過ごしたからね。
長子を差し置いて、精霊神から守護を受けたから。
あの頃は、僕たちも人と――ウォルチェスター家との関わり方について、制約も制度も定まっていなかった
僕たちはただ、エターナルローズの気配を受け継ぐ子達に助力したいだけだった。
助力の形が守護となり、いろいろな経験の中、僕たち精霊神が守護できるの生存する一人だけと知った。
精霊神の守護を受けた者が生きている限り、同族の守護はできない。
守護により、人と精霊神――守護する者との強い繋がりが生じる。
守護されるものは強力な魔法を行使できるようになるから、様々な面で注目を集める。
ラドフィクトが守護者となったのは、偶然が重なった結果だ。
兄が守護精霊を定める前に、ディアがラドフィクトを守護した。
結果、ラドフィクトが存命の間、僕たち精霊神は他の人間を――ウォルチェスター家長子、ラドフィクトの兄を、守護できないと知った』
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