107.精霊の寵児 26
そう気付いた瞬間。
これまで感じていた王族への印象が、がらりと変わった。
現国王は、統率力のある、革新的な人だと思っていた。
――が。
見方が変わると、横柄で独断的。
周囲の意見を聞き入れず、我が強すぎるように感じる。
王妃の控えめさは美点でなく、主体性なく、加えて王に意見できない弱さでしかない。
「国王と王妃は同等。互いが互いを切磋琢磨する関係」
そう書かれる国の婚姻条文に、ほど遠い関係に思えた。
王子、姫とも、己の身分、地位をひけらかし、王族の立場にあぐらをかく言動の数々――。
「――――――。」
なぜ、彼等を敬っていたのか。
言葉を失うゲオルクに、アグロテウスがつぶやいた。
『君の言う「王族」は、表の王族。
それがウォルチェスター家。
裏の王族が、エルディナード公爵家。
今日――君が見たように、人知れず他国の侵略からこの国を守ってる』
言われて思い出す、今日の戦場。
「なぜ、隠すのですか」
国民に、エルディナード公爵家の行いを――役割を。
フリージアの行動から察するに、今回が初めてではないのだろう。
朝の散策も、警備の一貫だと、今になって思いいたる。
国を守る功労者を、なぜひた隠すのか。
それがゲオルクには理解できなかった。
『この国の為だよ』
アグロテウスは即答する。
ゲオルクは納得できず、眉根を寄せて口をつぐんだ。
アグロテウスもゲオルクの想いを察して、淡々と説明を続ける。
『遙かなる記録には記されてないけど、建国当初は周辺国との小競り合い、国盗り合戦が続いた。
戦の度に、国は疲弊していった。
戦にかかる費用、人と土地の被害。
始祖王から十数代あとの王族次男がね、国を憂いて提案したんだ。
「自分が、この国の防波堤になる」――と。
争いごとは一手に引き受け、表沙汰にしない。
同時に、それらに関わるものも秘匿して欲しい。
「国の発展には、平穏な日々が必要」と主張してね。
とは言っても、緊急時に無理を通せるようにと、王族に次ぐ、第一位上位貴族とした。
普段は表舞台に顔を出さない、気が向いたときに社交場に顔を出す、普段は人に知られることのない、失われた一族。
エルディナード公爵家は武力魔力で国を守り、王族であるウォルチェスター家は、外交で国を守る――。
それが今に続くサヴィス王国のあり方だ』
アグロテウスの話はゲオルクも理解できたが、同時に疑問も生じた。
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