106.精霊の寵児 25
そうして月日を重ね、やがて「国」としての素地ができあがる中。
若者はエターナルローズと心を通わせるようになった。
若者には、親友がいた。
――が、後に二人は決別する。
若者にエターナルローズが助力したように、若者の親友には、アビスフローム――深闇の精霊神が助力した。
調和を重んじ、多生の間違いは糾弾しない若者と、規律を重んじ、微少な間違いも許さない親友。
方向性の違いから、やがて二人は袂をわかつ。
若者とエターナルローズが現サヴィス王国領地に残り、親友とアビスフロームは、根付く土地を求めて旅に出た。
サヴィス王国は若者が王となりウォルチェスター家の始祖となった。
そうして光の精霊神との間に生まれた子が、次の王となる。
こうして光の精霊神の加護をうけるウォルチェスター家の統治の元、サヴィス王国は他国の侵略の脅威にさらされることなく、平穏な日々が続いている――。
エルディナード公爵家も、エターナルローズの子孫
そう告げたアグロテウスに、ゲオルクは息巻いて自分の知るサヴィス王国創世記話簡略版を話した。
ゲオルクは王家を崇拝している。
血筋はもちろん、人として尊敬する方々ばかりだ。
熱く語るゲオルクに対し、アグロテウスのいぶかしげに眉を寄せた。
『君は彼等の何を知ってるの』
「拝見したのは数えるほどですが、王族たる風格を――」
ゲオルクの言葉に、アグロテウスはフッと鼻白む。
『周りに威張り散らすのが?』
「――っ。上に立つ者として、そのような時も必要でしょう」
答えに窮しながらも反論したゲオルクに、アグロテウスは口をつぐんだ。
見える表情に変化はなかったものの、表情も雰囲気も、冷ややかなものに変わっている。
(不快をかった――)
冷水を浴びたような寒さを感じると同時に、恐れで体が硬くなる。
恐れ
似た感覚を、ゲオルクは覚えていた。
「――私も……捕らわれている――?」
王家の――光の精霊神、エターナルローズの子孫であるウォルチェスター家の威光に。
本人達も気付かない、潜在的な部分で。
セクルト貴院校入学時、入試成績首席だったゲオルクは、スーリング祭に参加した。
スーリング祭には国王を始め、王妃、王子、姫等、直系王族は必ず出席する。
普段、接する機会のない王族を、間近で見た時に感じた畏敬の感情と。
アグロテウスに感じた恐れが――似ていた。
ようやく、過去部分にたどりつきました。
以前から考えていた部分です。
どう繋げようか、どう話を切り出そうか、設定として考えてたけど、話せる状況になるのか。
自分でもわかりませんでしたが、話の流れで今となりました。
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