104.精霊の寵児 23
フリージアのセクルト貴院校入学は、伴魂問題の対処方がなかったため、見送られた。
アグロテウスの守護を受けるフリージアに、仮初めでもなつく小中魔物がいなかったのだ。
そうした経緯の中。
刺激が強すぎるからと、精霊神達の力で、子供達はその日一日の記憶を、大人達も断片的に記憶を封じられた。
解除となる鍵は、精霊神との接触。
思い出すと同時に、ゲオルクは納得する。
フリージアがオズマを気に入るのも当然。
(横やりを入れたのは自分の方だ)
『それは違うよ?』
心の声にタイミング良く告げられたアグロテウスの言葉に、驚いたゲオルクが顔を上げる。
『君が自分を犠牲にして庇ってくれたから、銀狼もジアも、今、こうして存在しているんだ。
ジアも銀狼も、恩義は感じても、邪魔されたなんて思ってないよ』
声に出していただろうか。
思わず口に手を当てるゲオルクに、アグロテウスは苦笑する。
『考えが顔に出てる。
――本当に、あの時は助かった。
僕からも礼を言わせて欲しい』
「しかし――私が成さずとも、あなた様が助けたのでは――。
現に、大蛇を退治したのはあなた様でしょう?」
『それはジアが僕を呼んだから。
――助けを求めたから。
それまで、僕たち精霊神は、ジアと顔見知り程度の接触があっただけ。
危険を知っていても、ジアが助けを求めなければ、手出しできなかった。
襲われたジアを君が庇ってケガをして――その君を助けてとジアが僕達に願った。
ジアが求めた助けに応じて、ようやく力を行使できた。
ジアを襲う大蛇に気付いていたけど、あの時の僕たちは何もできなかったんだよ。
――このままだと、ジアが命潰えるとわかっていても。
君が何もしなければ――誰も間に合わなければ。
ジアも銀狼も、今、生きていなかっただろうね』
「――めんど……んん……。
いろいろと――難しいのですね」
わかったような、わからないような。
思わず「面倒くさい」と言いそうになったのをこらえて、咳払いでごまかした。
「難しい」と言い換えたが、ゲオルクの考えはアグロテウスも察していた。
『制約があるからね。
僕たちも万能ではないんだ。
もともと――僕たちと人とは別次元で暮らしているから。
僕たちの力が君たちの世界に作用するのも、条件がある』
「――遙かなる記録……?」
苦笑交じりに、歯がゆそうに告げるアグロテウスを見たゲオルクは、無意識のうちにぽつりとつぶやいていた。
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