103.精霊の寵児 22
それらの状況を見たアグロテウスが、面々に――大人達に告げた。
明るい声で――冷徹な内容を。
『本当はね?
僕を使役したジアには、伴魂はつけられないんだ』
「――――え?」
驚きの声を、フリージアの両親があげる。
アグロテウスはフリージアの両親と、居合わせた大人達に笑顔を向けながら――感情のない言葉を継げる。
『体と精神が安定するまでの、仮の媒介者だからね。
僕たち精霊神が幼少期から関与した結果、影響を受けて弊害が現われたことも過去にあったから。
その用心として取られた仕組みなんだ。
小で慣らして僕たちを受け入れられるように。
逆に。
精霊神との繋がりをもったあと、伴魂は持てない。
伴魂の位置に、精霊神がいるから。
小から大には移れるけど、大から小には移れない。
ジアは――心身弊害の心配はないようだけど。
人の世界を――住みにくくなるかもだね』
言葉を失う大人達に、アグロテウスは肩をすくめて苦笑する。
『ごめんね? ちょっとを試させてもらった。
男児の命より伴魂を選んでいたら、ジアを僕たちの世界に連れて行くつもりだったから』
『あはは~』とアグロテウスは笑うが、聞いている者達にとっては笑い事ではない。
呆然とする大人達に、アグロテウスは軽口を続け、再度、説明する。
『伴魂は僕たちの世界と人との世界の媒介者。
それはわかっているよね?
ジアが僕たち精霊神の加護を受ける存在とも、わかってるよね?
――だけど。
幼子に、僕たちの直接的な加護は弊害があることもあるから、心も体も安定して守護を受け入れられる年になるまで、伴魂を定めて媒介になるよう、これまでされてたけど――。
ジアは僕を受け入れられた。
伴魂決まる前に、ジアの望みに僕が応じたから、関係性は僕に移るんだよ。
伴魂から精霊神に、繋がりの移行はできても、精霊神から伴魂に繋がりの移行はできない。
伴魂を持たなくても魔法が使える――それがジア――フリージアだ』
何とはない、世間話のように話すアグロテウスの話は、その場に居合わせた大人達に多大な衝撃を与えた。
続けて、アグロテウスは釘を刺す。
『人と人との諍いは僕たちには関係ないけど。
寵児が危険にさらされることは、今後ないようにしてほしいものだね』
後に、大蛇は王位継承絡みで、フリージアを危険視する一派が仕組んだことだと判明した。
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