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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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102.精霊の寵児 21


『おいたが過ぎたようだね』


 言いながら、テスは大蛇に向けて右腕を肩の高さに上げた。


 腕の動きに呼応して、炎の勢いは激しくなる。


 口元の微笑、柔らかな声音。


 穏やかな物腰とは真逆の、大蛇を襲う容赦ない業火ごうか


 直立姿勢から大火に焼かれ、消し炭と化した大蛇は、テスの合図で炎が消えると同時に、どう、と轟音を上げて崩おれた。


 その場に居合わせた者が、呆然とする中。


 テスと呼ばれた――火の精霊神、アグロテウスは、涙目で肩をいからせ、ゲオルクと子狼を抱きしめる、興奮状態のフリージアの側に降り立った。


『――ジア』


 呼ばれた愛称に反応して、フリージアはゆっくりとテスを見上げる。


 見上げて――興奮状態のまま、顔をくしゃくしゃに歪めて、泣きながら訴えた。


「助けて……っ!」


 ゲオルクを――自分を助けてくれたこの子を。


 アグロテウスはゲオルクの体に手をかざして様子を見たあと、フリージアの両親に顔を向けた。


『この子は伴魂を得ていない。

 伴魂は、人と、僕たちの世界をつなぐ媒介だ。 

 ジアが気に入った銀狼の子を、この子の伴魂とすれば、助けられる。

 この子も銀狼の子に好意を持っていたようだし、銀狼の子も、この子に恩義を感じてる。

 伴魂となる用件は満たしている。

 ――代わりに。

 ジアは僕の正式な守護を受けるまで、伴魂の恩恵は受けられない。

 ジアの伴魂をとるか、この――勇敢な男児の命を取るか。

 どうする?』 


 フリージアの両親は無言で顔を見合わせ、うなずきあうと、アグロテウスに頭を下げた。


「どうか――娘を身を挺して助けてくれた、勇敢な稚児をお救いください」


 震えながら、精霊神とフリージアの両親のやりとりを見ていたゲオルクの両親は、その場に座り込んで涙ながら礼を告げる。


 フリージアの両親の返事を受けて、アグロテウスは上機嫌で『了解~♪』と答えた。


 子狼を指さして小さな輪を描き、次いでゲオルクにも同じく小さな輪を描く。


 共に描かれた光の輪が、アグロテウスの、交差する手の動きに呼応して動いて――交わり、光の粒子となって霧散した。


 そして――ゲオルクの体が光に包まれ、みるみるうちに傷が治ってゆく。


「ゲオルクっ!」


 ゲオルクの両親が、フリージアから子を受けとり、抱きかかえる。


 子狼はゲオルクを気遣い、側から離れない。


 興奮状態が落ち着いたフリージアも、両親に付き添われた。





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