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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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93.精霊の寵児 12


 庭の奥に――オズマが身を潜める茂みに目を向ける。


 ゲオルクは見える範囲なら、離れていてもオズマを身近に感じていた。


 オズマはゲオルクの声に応じて側に現われると、主の思いに即座に答えた。


 フリージアに襲いかかる野犬との間に割って入いると、その喉元に食らいついた。


「ギャンっ!!」


 悲鳴を上げる野犬に噛みついたまま、二度三度、頭を大きく振り回し、同時に野犬も振り回す。


 そうした後、オズマが野犬を解放すると、野犬は「キャンキャン」と、情けない声を上げてその場から逃げ出した。


 居合わせた子供達は、その場にしばらく呆けていた。


 時間の経過と共に、意識が鮮明となり、起きた状況を理解した。


 ゲオルクは子供達の中で、早急に「現状把握」していた。


 同席した子供達の中では一番早かったはずだが。




    (『モフっ』)



「モフ……?」


 伝わった感触をつぶやいていた。


 自分ではない――オズマの感覚だと、その光景を見て気付く。


 フリージアがオズマに抱きついていた。


「ありがとう……――っ!」


 オズマから、フリージアの手の震えを感じた。


 自分も怖い中、フリージアは気丈に振る舞っていたと、ゲオルクは気付いた。


 オズマは困りながらも、フリージアをそのままにしていた。


 同席した子達も、恐る恐るオズマに近づいて、礼を告げる。


 オズマに対する恐れは薄らいだものの、フリージアのように触れるまではならなかったようだ。


 ――フリージア以外の子達がオズマに触れなかったのは、別な理由があったと、ゲオルクは後に知る。


「大丈夫? ケガはない?」


 ゲオルクはオズマの側に行くと、フリージアと同席の子供達に聞いた。


 フリージアと子供達はうなずいたが、男児の一人が手と足に擦り傷があると、ゲオルクはオズマから聞いた。


 ゲオルクはすぐに、大人達の元へ走って、事情を説明し、擦り傷を負った男児の手当を請うた。



   ――それが、フリージアと初めて会った日の出来事だ。



 フリージアはその日の事を言っているのだろう。


 当時、同席した子供達とは、貴族籍の小児校、中児校、セクルト貴院校でも縁が続いている。


 しかし、あの日以降、ファ・ディーンを来訪するのはゲオルクだけだ。


 親に言われるまま、ゲオルクはファ・ディーンに訪れていた。


 茶会の同席者達は、その後、フリージアと一度も会っていないという。


 面会を望んでも、茶会、パーティ、夜会に招待しても、応じてくれないのだそうだ。








 

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