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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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90.精霊の寵児 9


「私の両親は、思い合って結ばれた。

 私の理想は両親だ。

 思うだけでなく、思われるだけでなく。

 互いに思い、思われ、互いを尊重する関係でありたい。

 それが私の理想で――できるならそうできたらと思っていたのだが――。

 ――すまない。

 結果、私のわがままに付き合わせてしまった」


 淡々と語るフリージアを見ると、彼女はゲオルクに背を向けていた。


 小さな違和感を、ゲオルクは覚える。


 話す時はいつも、互いの顔が見える位置だったのに。


 背を向けるフリージアは――自分を拒絶しているようだと、ゲオルクは感じた。


 背を向けて話したのは偶然だったのか、意図したものだったのか。


「フリージア?」


 普段と異なる彼女の様子に、ゲオルクが声をかけたのと――。


 フリージアが背を向けたまま、口を開いたのは、ほぼ同時だった。


「婚姻は、家と家との繋がりだとわかっているが――。

 隠し事をしたままは嫌だった」


(隠し事?)


 婚姻話の件かと思ったが、フリージアは再び馬にまたがると、ゲオルクにも乗馬を促した。


 切れた息も落ちついたゲオルクは、フリージアに従う。


 馬を走らせるフリージアに、ゲオルクは続いた。


「……初めて会った日を、覚えているか?」


 並んで馬を走らせながら、フリージアがつぶやく。


 馬駆けしながらだというのに、フリージアの小声はゲオルクにしっかり聞こえた。


 その時は会話がスムーズに成り立つ状況を、不思議に思わなかった。


「……覚えている」


 ゲオルクがオズマを伴魂として数ヶ月後のことだった。


 両親と一緒に小さな茶会に参加した。


 それはエルド家が主催した茶会だった。


 主催者であるエルド家、ゲオルクのルスター家、他、六つほどの貴族籍が参加していた。


 どの貴族籍も子供を同伴していた。


 年もフリージアやゲオルクと近しい。


 ゲオルクを含め、男児が四名、女児が二名だった。


 当時は言われるまま参加しただけだったが、後になって思うと、フリージアのお披露目会だったのだろう。


 小児校入学前に、繋がりを持とうとしたのだと、ゲオルクは思っている。


 参加者が席に着いた後、主催者であるエルド家が――フリージアが登場した場面は、ゲオルクに強烈な印象を与えた。


 質素ながら気品あるドレスを纏い、両脇を両親に伴われて、静やかな足取りで入場したフリージア。


 彼女の美しさに、同席した子供は、男児女児ともに見とれていた。


 衣服や靴に慣れていないとわかる足取りだった。






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