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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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89.精霊の寵児 8


 フリージアは乗馬したままゲオルクに近づいた。


 馬が互いに顔を寄せ、体を寄せる。


「美しいだろ、この場所は。

 この土地は。

 この国は。

 この世界は。

 私はこの場所を――この土地を――この国を――この世界を――守りたい。

 誰もが健やかに過ごせる世界であって欲しい」


 フリージアの手につられて見た景色には、眼下に緑豊かな土地が広がっている。


 近場は木々ばかりだが、その先に、田畑や農園、果樹園、その他、家畜等、生活に必要な生産物が生育され、人の生活と一体となっている。


 そうした情景が――フリージアの話を聞いたゲオルクの脳裏に浮かんだ。


 ゲオルク自身、驚いたことだった。


 実際、目にしたような現実感を覚えるとは。


 戸惑うゲオルクに、フリージアは続けた。


「無茶して悪かったな。

 人目のない場所で確認しておきたかった」


 言って、ゲオルクをじっと直視する。


 白い肌に深い桃色の髪。


 藤色の瞳に見つめられ、ゲオルクは小さく息をのんだ。


 フリージアは続ける。


「そなた――婚姻の意思はあるのか?」




       ◇◇      ◇◇



 婚姻。


 言われても、すぐには理解できなった。


「――誰と……誰の」


「私と、そなたの」


「………………。

 ………………。

 ………………は?」


 絶句するゲオルクを見て、フリージアは「やはり」と息をついた。


「そなたには悪いが、うちもルスター家もそのつもりだ。

 思うところあって断るなら、今のうちだぞ?」


 フリージアの話に、ゲオルクはしばらく混乱していた。


 その話が本当だとするなら。


 ゲオルクが「エルド家が貴族籍とのつながりが欲しかった」と思っていた季節折々の訪問は、互いの信頼関係だけでなく、婚姻関係を考えてのものだったのだろう。


 困惑し、過去をすさまじい思考速度で振り返っていたゲオルクだったが。


 考えし尽くした後、ふと疑問を感じた。


「なぜ――今、その話を……?」


 ゲオルクは馬から下りて、丘にそびえる大木の根元に座り込んでいた。


 自分の馬の首元を撫でるフリージアに、ゲオルクは問う。


 フリージアは少し考えて、苦笑した。


「想い人がいるのだろう?

 ロージェスとフロリアから聞いている。

 ああ、二人からは「秘密」だと聞いたのだ。

 そなたにも秘密にすると。

 二人を責めないで欲しい」


「――秘密……」


 何をもって「秘密」というのか。


 ゲオルクは困惑を深めるばかりだ。


 フリージアに対する過去の自分の行いを振り返ると、頭痛をおぼえた。


 フリージアの考え、思いは、ゲオルクとは異なる場所にあった。





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