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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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86.精霊の寵児 5


 そのような経緯から、王都から遠く離れたファ・ディーンで暮らすフリージアも、無関係ではいられなかった。


(周囲の干渉を防ぐために、セクルト貴院校には行かなかったのだろう)


 ゲオルクが見る限り、フリージアは貴院校の入学できる十分な知識と能力を有している。


 貴族籍にとって、セクルト貴院校卒の肩書きがないのは、百害あって一利なし。


 領地を持つ貴族籍は特に、他の貴族籍との繋がりが必要だ。


 正妃の姉であろう、フリージアの母、リラ。


 セクルト貴院校に通えない代わりに、貴族籍との繋がりを持つために、ルスター家の子らが時期折々訪問しているのだろう。


 思いつつ、ゲオルクは邸宅の二階に割り当てられた自室から、部屋に面した庭を見下ろした。


 庭からはロージェスとフロリア二人の声と、フリージアの声が聞こえている。


 フリージアはロージェスとフロリア、二人に請われるまま、簡単な魔法を見せていた。


 小さな水球をいくつも浮かべる水宴アクアフェスタを見せて、高く上げた上空で水球を霧散させ、小規模の雨を生じさせる。


 降り注ぐ水に、ロージェスとフロリアは歓声を上げてはしゃいでいた。


 その光景をぼんやりと眺めながら、ふとゲオルクは思う。


(フリージアの伴魂――)


「……オズマ」


 つぶやく声に呼応して、瞬時にゲオルクの伴魂、狼のオズマが傍らに現われる。


 オズマは共に行動するには、遭遇した人が恐れを抱く体躯の大きさであることから、普段は携帯用の縮小住まいで暮らしている。


 伴魂は千差万別だ。


 小型動物が大半だが、ゲオルクのように、大型動物が伴魂の場合もある。


 ゲオルクは「リンク」と呼ばれる、手のひらサイズの筒状の物の中に、オズマを格納していた。


 特殊な作りのリンクは、伴魂も居心地がいいらしく、縮小サイズで留まってくれる。


 原理は製造社にしかわからない。


 そうした物だと浸透していた。


 ――貴族籍傀儡で「リンク」は普通に知られていると、ゲオルクは思っていた。


 極秘裏の物だと知ったのは、数年後のことになる。


 リンクへの収納、リンクからの開放は、主の支持。


 呼ばれたオズマは、嬉しそうにゲオルクの頬に頭をすりよせた。


 体を寄せるオズマを抱きかかえ、体を撫でながら、ゲオルクは庭にいるフリージアを見る。


(フリージアの伴魂を――見たことがない)


 これまで、不思議に思ったことはなかった。


 伴魂を明かさない人もいる。


 そのような人もいるとわかった上で、ゲオルクは疑念を抱いた。





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