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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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84.精霊の寵児 3


「あた……」


 小さな声を上げるフリージアが額を抑えた時には、ゲオルクは門扉を抜けて敷地内へ踏み入れていた。


「姉様~?」


「大丈夫~?」


 ロージェスとフロリアが、フリージアの様子をうかがう。


 幼い二人も、ゲオルクの不機嫌を感じていた。


 二人の心配に気付いたフリージアは、ニッと笑った。


「心配するな。いつものことだ」


「「そうなの?」」


 首をかしげるロージェスとフロリアの頭をなでながら、フリージアは苦笑する。


(本当に……いつものことだ)


 いつもそう。


 ゲオルクはフリージアを厭う。


 側に行くと距離をとられ、話しかけると必要最低限の答えを告げて、顔を――視線を合わせようとしない。


 幼い頃から、負の感情を向けられた事が無いフリージアには、ゲオルクは「変わった人」との認識だった。


 これまでファ・ディーン後継者への尊敬敬意――時々媚びへつらい――を感じても、ファ・ディーンで嫌な顔をされた記憶は皆無に等しい。


 ゲオルクは自分に好意的でないと、フリージアは感じていた。


 そうありながらも、敵意、嘲りなく、対等に接してくれる。


 フリージアより年下だが、弟と妹がいるからだろうか。


 ゲオルクはフリージアよりしっかりしていて、どちらが年上かわからない状況も度々あった。


 一人っ子のフリージアは、ゲオルクを無意識のうちに頼りにし、ロージェスとフロリアを実の弟妹のように慈しんだ。


 ゲオルクの後をフリージアはロージェス、フロリアと続きながら、エルド家の邸宅に荷物を運び入れる。


 セクルト貴院校夏期休暇の一月ひとつき


 ファ・ディーンでの生活はこうして始まった。




       ◇◇      ◇◇




 ファ・ディーンの朝は早い。


 朝は四時よつどきに起床、領の境界を四半時しはんときほど散策する。


 散策後、朝食をとり、日暮れ時の境界散策までは自由時間、夕食、入浴後、就寝となる――。


 早朝の散策は、ゲオルクが中児校年齢になってから習慣だった。


 今回も同じく、ゲオルクは参加するが、その年齢に至らないロージェスとフロリアは免除される。


 朝食後、日暮れ時の境界散策までは自由時間なのだが――。


 前回までは何かと声をかけられ、なし崩し的に共に行動せざるをえなかった。


 エルド家からの要請もあったが――大半はフリージア個人のものだ。


 領内の散策、領民の手伝い、勉学や魔法の訓練――。


 セクルト貴院校に入学した今年。


「関係ないものは断固として断る」と決めていたゲオルクだったが、心配は杞憂だった。






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