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猫と月の夜想曲~猫に転生した異世界転生者は脇役です~  作者: 高月 すい
第十一章 精霊の寵児
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81.貴族裁判 74


 そうしたやりとりの中、フィーナは身の置きどころのなさを感じていた。


 祖父は隣の席にいるが、見知った祖父と違いすぎて、別人のように感じる。


 何より、思考が追いつかない。


(――精霊教会シルニーファ

   おじい様とカシュート叔父さんが関わってる?

   精霊?

   私が加護?)


 困惑したフィーナは、側にいるアルフィードに助けを求めた。


 アルフィードが理解している分でいいから、説明が欲しい――と。


 アルフィードはアルフィードで、表面上、平然としていたが、内心は困惑していた。


 動揺して、フィーナの視線に気付けない。


 そんなアルフィードを見つつ、フィーナは思う。


(――お父さんと……お母さんは?)


 祖父ゲオルク、叔父カシュート。


 二人がいるのに、なぜ両親がこの場にいないのか。


 上級裁判所で感じていた不安は、今も続いている。


 ゲオルクとカシュートからだけでなく、リオンとロア、両親からの説明を聞きたい。


 アルフィードとフィーナ、二人への子煩悩ぶりを周囲に隠そうとしない両親の不在が、フィーナの心細さを深めていた。


 隣席のゲオルクに、両親の所在を訊ねる機会を逃したまま、話は続いた。


「ファ・ディーン」のくだりで一度話を止めたゲオルクが、再び話始める。


「ディーンは、自然豊かな集落でした。


 ――逆に言えば、自然しかない田舎。 


 幼少時、学生時、中央職の仕事に就いてからも、その認識に代わりなく――しかしなぜか「退屈」を感じない。


 その時の――世間知らずの私は、物事の表面しか見えていなかった。



    不便は大変。

    不便でかわいそう。

    不便より便利がいい。


 

 そう思っていた私の認識を、ことある度に覆したのが、ファ・ディーンであり――我が妻、フリージア・エルド――真名、フリージア・エルディナードでした」



   フリージア・エルディナード



 その名を聞くと同時に、フィーナの意識下に、多大な情報が流れ込んだ。


 豊かに波打つ、深い桃色の長毛。


 表情がコロコロと変わる感情の豊かさ。


 気になることがあれば、自分で調べる行動力。


 若いゲオルクと思われる青年が、フリージアに振り回されながらも、彼女を憎めない、快く思っている情景が、脳裏に流れた。


 自由奔放な赤毛の女性。


 彼女を諫める青年。


 互いに憎からず思っているのが伝わってきた。


 その光景が、祖父ゲオルクと――祖母フリージアの若きころだろうと、フィーナもわかった。


 わかると同時に、疑問も浮かぶ。



     この光景を見ていたのは、誰――?



『私の記憶』


 アクアリューネが、申し訳なさそうにフィーナの耳元で白状する。


『見せるつもりはなかったんだけど……思い出してしまって……』


 流れ込んだ映像と共に、見る側の微笑ましい感情も伝わった。


 過去視の映像は、アクアリューネに影響されたもののようだ。


 ゲオルクが話し始めると同時に、映像は消える。


 アクアリューネが、ゲオルクの話に集中しているからだろう。


「我が妻、フリージアは、自由奔放な性分でした。

 気になるものがあれば気が済むまで探求し、興味なければ岩のごとく微動だにしない。

 自分本位のフリージアには、私も手を焼いていました」


 それからゲオルクは「ファ・ディーン」での日々を語る。



   ファ・ディーン



「かの地がサヴィス王国、始まりの場所なのです」

 




次回より、ゲオルクの若かりし頃の話となります。その予定です。

ゲオルクの過去語りで進めようとしましたが、手が進まず……。

サブタイトル、変更の機会をうかがっていたのも相まって、過去の当時目線の方がよさそう。

……と、語りでなく「過去を語りで無く状況を(……なんと表現すればよいのか……)」をゲオルクとフリージア、二人のやりとりを再現した方がわかりやすいと思っての次回です。

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