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「役立たず鑑定士」と捨てられた俺、全部鑑定したら勇者より強くなった  作者: 愛田茶々


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48 スラム街

 翌朝。


 薄暗い森の隙間から、白んだ光が差し込む。


「ほら、起きろ坊主ども!出発の時間だぜ!」


 ベネディクトの豪快な声に叩き起こされ、俺たちは手早く荷物をまとめた。

 朝食は歩きながら食べられる干し肉で済ませる。


「……参りますわよ。今日は魔物よりも、人の目が厄介になるわ。気を引き締めなさい」


 クロニカの言葉に、全員が表情を険しくする。

 一歩、森の奥へと踏み出した。


 亡霊の森での最後の行軍が始まった。

 目指すは、この因縁の始まりの場所――王都。


 幸い、王都側に進むにつれてアンデッドの数は徐々に減っていった。

 ベネディクトの話によれば、定期的に騎士団が討伐しているらしい。


 それはつまり、この辺りからは「人の領域」だという証でもある。


 俺たちは一層、気を引き締めて進んだ。


 午後を過ぎた頃、ついに視界を塞いでいた鬱蒼とした巨木が途切れ、眼下に広大な平原が姿を現した。


 その中心に、王国の象徴である巨大な城壁が鎮座している。


「……着いた。あそこが、王都か」


 俺の呟きに、全員が足を止める。

 今となっては俺たちはお尋ね者。


 国の人間に見つかるわけにはいかない。


「相変わらずデカい壁だ。だが、今日の目的地は違うんだろ?」


 ベネディクトが視線を向けるのは、豪華な正門から遠く離れた、外壁の影にへばりつくように広がる薄暗い一角だ。


「たしか、クロニカの兄の知り合いとかいう魔法付与の店へいくんだっけか」


「ええ、スラム街に潜伏いたしますわ。ここから先は、私の後ろを離れないでくださいませ」


 クロニカがフードを深く被り、慣れた足取りで獣道を進む。 

 華やかな大通りの賑わいを遠くに聞きながら、俺たちはゴミの山と廃材で組み立てられた小屋が並ぶスラムへと足を踏み入れた。


────


 スラム街、とは言うものの、思ったほどひどい有様ではなかった。


 確かに、街ではなくスラム街、という表現が正しい景観ではある。

 基本的に家という家はなく、テントのような物や、ちょっとした木小屋が建っている程度だ。

 

 子供が屋台を開いて食べ物や魔物の食材を売っていたり、子供がせっせと荷物を運んだりと、思うところはあるが、それもむしろ活気があっていいようにすら思える。


 俺たちが歩いていても、危険な香りは特にしない。

 王都に存在を許されているだけのことはある。


 俺たちは、看板すら出ていない、一軒の小さな店に辿り着いた。


「入るわよ」


 クロニカが合言葉のように扉を三回叩き、中へ入る。

 店内は所狭しと埃被った古書が並べられ、怪しい水晶や奇妙な色をした液体が詰まった瓶が戸棚に並べている。


「おお、クロニカじゃないか!珍しい、生きていたのか!……その、兄の事は残念だったな」


 カウンターの奥から顔を出したのは、顔の半分を火傷の跡で覆った、一人の細身な男性だった。

 沈痛な面持ちで、声をかける。


「ええテリオット。久しぶりね。兄さんのことは……ええ、本当に残念でしたわ。今は少々、面倒な荷物を抱えておりますの。この者たちを少し匿っていただけないかしら?」


 そういって、事情を説明する。


「匿うのは構わないけど、んー、場所がないよねえ」


 テリオットと呼ばれた店主は頭を掻く。

 火傷の跡のせいで怖く見えるが、話してみるとただの優男だ。


 気まずそうに、ある提案をする。


「じゃあ、地下を使う?作業場にしてるから、綺麗とは言えないんだけど……あそこなら外からは絶対に見つからないし、魔力遮断の処理もしてあるから、追跡魔法も届かないよ」


「助かるわ。いまは贅沢を言っていられる立場ではありませんもの」


 クロニカが頷くと、テリオットはカウンター下の重い隠し扉を開けた。



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