第4話 追放された鑑定士は王都を旅立つ
鑑定のスキルレベルが上がった。
小さな露店街にて、大きな感動と出会うことができた俺は、上機嫌であたりを見回していた。
【鉄の剣】
分類:剣
攻撃補正:+3
耐久度:低
【鉄の盾】
分類:盾
防御:+3
耐久度:低
さっきよりも、かなり情報が増えている。
嬉しすぎて鼻歌のひとつでも歌いながら小躍りしたい気分だ。
もちろん、一人でそんなことをしては不審者の烙印を押されかねないので、気分の中だけに留めておく。
食べ物の屋台へと目を向けてみる。
【パン】
【オーク肉】
【水】
こっちは変化なしか。
どうやら食べ物は、鑑定レベルが上がっても表示が増えないらしい。まあ困ることはないだろう。
屋台のおばちゃんに声をかけ、パンと水をもらう。
串に刺したオーク肉を焼いたやつも美味しそうだったが、ここは我慢だ。
王様から受け取った路銀は金貨十五枚。
それがどれほどの価値なのかはさっぱりわからないが、無駄遣いはできまい。
おばちゃん店主に金貨一枚を渡し、釣りとして銀貨九枚と銅貨四枚を受け取る。
礼を言い、水を一口飲んだ。
パンと水で銅貨六枚だったわけだ。
正直、この世界の物価なんてものを俺は知らない。
ぼったくられている可能性もあるが、ここは信じるしかない。
(とりあえず、街へ行かないとな。……この店主に聞いてみるか)
「あのー、街へ行きたいんですが」
「あんた、王都のほうから来たよね?リーフェルに行きたいなら……歩いて一日半だね」
一日半か。野宿を覚悟しなければならない。
「魔物とかって大丈夫です?」
「このあたりの街道沿いは、スライムかゴブリンくらいさ。それより人のほうが怖いかねえ」
「人、ですか?」
「盗賊だよ。なんだか最近、馬車が襲われるっていう物騒な噂を聞くねえ」
腰に据えた短剣は、取り上げられることなく持ってきている。
そうだ、こいつも鑑定してみよう。
【ブロンズダガー】
分類:短剣
攻撃力補正:+32
耐久度:中
(ミスリル……あれ、ひょっとしてこれだいぶいい武器なのか?)
さすが、勇者に支給される武器といったところか。
パンと水をさらに二つずつ買い、改めて礼を言ってその場を去った。
(とりあえず、歩きますか)
途中、スライムがいたので試しに戦ってみた。
武器のおかげもあり、意外となんとかなった。
商人や冒険者の集団とも何度かすれ違う。
不思議な事が起きたのは、夕暮れ前だった。
森のやや手前で、銀色に光る何かが見えたのだ。
遠すぎて鑑定はできない。少しだけ街道をはずれ、森の近くまで足を運ぶ。
そこにいたのは、銀色のスライムのような物体だった。
鑑定を試みるが、何も表示されない。
(なんだ?生物じゃないのか?それとも、強すぎる何かとか?)
──いや、某メタル系だったら、倒したら美味しい可能性もある。
じりじりと間合いを詰めて探っているうちに、そいつは土の中に染み込むようにして消えてしまった。
一体、なんだったんだ。
気にはなるが、それよりも夜をどう過ごすか考えなければいけない俺は、その不思議な存在のことはすっかり忘れてしまっていた。
暗くなりきる前に、なんとかちょうど良い斜面を見つけた。
ここなら、街道からは陰になって見えないはずだ。
森からは離れているし、下手な魔物もでてこないだろう。
俺はそこにそっと腰をおろし、周囲の草をむしって集める。
クッション、保温材、目隠し。あればあるだけ便利だ。
簡易的な寝床の完成である。
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翌朝、まだ暗いうちに再び歩き始めた俺は、夜の帳が下りた頃、リーフェルに到着した。
門兵が身分証を見せろ、と言ってくる。
もちろん、そんなものは持っていない。
一か八かで言ってみる。
「この街で冒険者ギルドに登録しようと思ってるんですけど......」
そもそもこの世界に冒険者ギルドがあるかも分からないのだが。
「通行税、銀貨五枚だ」
なんだ、金を払えば通れるのか。
よかった。
とりあえず、宿だ。
冒険者ギルドの登録は明日でいいだろう。
適当な宿にはいってみる。
「すいませーん、泊まれますか?」
「一泊素泊まり銀貨三枚だよ」
銀貨三枚を渡し、部屋の鍵を受け取る。
「ふぅ......あぁぁぁぁ〜〜疲れたぁ......」
ベッドに四肢を投げ出し何度も深呼吸する。
気持ちいい。
......あとは風呂があれば完璧なんだが。
せめてシャワーくらいは浴びよう。
寝落ちしそうな体に鞭を打ち、宿のシャワーを借りた。
よし。キレイさっぱり。
やはり体の汚れを落とすのはいいものだ。
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