第3話 役たたずの鑑定士はギルドに入る
小さな露店街。
大きな感動と出会うことができた俺は、上機嫌であたりを見回していた。
【鉄の剣】
分類:剣
攻撃補正:+3
耐久度:低
【鉄の盾】
分類:盾
防御:+3
耐久度:低
さっきよりかなり情報が増えている。
テンションが上がりすぎて鼻歌のひとつでも歌いながら小躍りしたい気分だ。
......もちろん、一人でそんなことをしては不審者の烙印を押されかねないので、気分の中だけに留めておく。
食べ物の屋台へと目を向けてみる。
【パン】
【オーク肉】
【水】
...こっちは変化なしか。
どうやら食べ物は、鑑定Lvが上がっても表示が増えないらしい。まあ困ることはないだろう。
パンと水をもらう。
串に刺したオーク肉を焼いたやつも美味しそうだったが、ここは我慢だ。
王様から受け取った路銀は金貨十五枚。
それがどれほどの価値なのかはさっぱりわからないが、無駄遣いはできまい。
おばちゃん店主に金貨一枚を渡し、釣りとして銀貨九枚と銅貨四枚を受け取る。
正直、物価なんてものは俺は知らない。ぼったくられている可能性もあるが、ここは信じるしかない。
礼を言い、水を一口飲む。
......とりあえず、街へ行かないとな。
聞いてみるか。
「あのー、街へ行きたいんですが」
「あんた、王都のほうから来たよね?リーフェルに行きたいなら......歩いて一日半だね」
一日半か。野宿を覚悟しなければならない。
「魔物とかって大丈夫です?」
「このあたりの街道沿いは、スライムかゴブリンくらいさ。それより人のほうが怖いかねえ」
なるほど。盗賊か。
腰に据えた短剣は、取り上げられることなく持ってきている。
......そうだ、こいつも鑑定してみよう。
【ブロンズダガー】
分類:短剣
攻撃力補正:+25
耐久度:中
......あれ?だいぶ良くないか?
さすが、勇者に支給される武器といったところか。
パンと水をさらに二つずつ買い、改めて礼を言ってその場を去った。
とりあえず、歩きますか。
途中、スライムがいたので試しに戦ってみた。
意外と、なんとかなった。
商人や冒険者の集団とも何度かすれ違う。
不思議な事が起きたのは、夕暮れ前だった。
森のやや手前で、銀色に光る何かが見えたのだ。
遠すぎて鑑定はできない。
少しだけ街道をはずれ、森の近くまで足を運ぶ。
そこにいたのは、銀色のスライムのような物体だった。
鑑定を試みるが、何も表示されない。
なんだ?危ないやつか?
......いや、某メタル系だったら、倒したら美味しい可能性も──。
そんなことを考えているうちに、そいつは土の中に染み込むようにして消えてしまった。
一体、なんだったのか。
夜をどう過ごすか考えながら歩いていると、ちょうど良い斜面を見つけた。
街道からは陰になって見えないはずだ。
森からは離れているし、下手な魔物もでてこないだろう。
俺はそこにそっと腰をおろし、周囲の草をむしって集める。
クッション、保温材、目隠し。あればあるだけ便利だ。
簡易的な寝床の完成である。
────
翌朝、まだ暗いうちに再び歩き始めた俺は、夜の帳が下りた頃、リーフェルに到着した。
門兵が身分証を見せろ、と言ってくる。
もちろん、そんなものは持っていない。
一か八かで言ってみる。
「この街で冒険者ギルドに登録しようと思ってるんですけど......」
そもそもこの世界に冒険者ギルドがあるかも分からないのだが。
「通行税、銀貨五枚だ」
なんだ、金を払えば通れるのか。
よかった。
とりあえず、宿だ。
冒険者ギルドの登録は明日でいいだろう。
適当な宿にはいってみる。
「すいませーん、泊まれますか?」
「一泊素泊まり銀貨三枚だよ」
銀貨三枚を渡し、部屋の鍵を受け取る。
「ふぅ......あぁぁぁぁ〜〜疲れたぁ......」
ベッドに四肢を投げ出し何度も深呼吸する。
気持ちいい。
......あとは風呂があれば完璧なんだが。
せめてシャワーくらいは浴びよう。
寝落ちしそうな体に鞭を打ち、宿のシャワーを借りた。
よし。キレイさっぱり。
やはり体の汚れを落とすのはいいものだ。
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