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「役立たず鑑定士」と捨てられた俺、全部鑑定したら勇者より強くなった  作者: 愛田茶々


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第31話 不成立の決着

「……魔剣、か。多少はマシな玩具を持っているようだが」


 九条が槍を無造作に構え直す。

 俺は魔剣を握りしめ、地を蹴った。魔物から奪ったスキル『突進Lv3』だ。


 さらに『加速領域』を組み合わせ、かなりのスピードがでる。

 しかしこの加速領域、発動中はMPがガンガン削られるようで、多用はできない。


 心許ない『剣術Lv1』を出来る限り補強するための策だが、どこまで通用するか──あとはただ、"因果の糸"を九条へ結び付け、それに縋るのみだ。


 ギィィィィィィィンッ!!


 火花が散り、強烈な衝撃が腕を痺れさせる。

「なんだ、その素人同然の太刀筋は。その程度では、俺の装甲に微かな傷一つつけることもできんぞ」


 何度か力任せに魔剣を叩き込む。

 しかし、九条は俺の必死の連撃を、欠伸でも出そうな様子で槍で弾く。

 やがて遊びに飽きたのか、彼は石突で俺の胸元を突き放した。


「ガッ……はっ……!」

 肺の空気が引き抜かれ、石畳を転がる。

 九条は追撃とばかりに、無防備な俺の頭上へ槍を振り下ろした。


(――させねえッ!)


 瞬時に『因果の糸』を操作し、座標を歪ませる。槍は虚しく地面を穿ち、轟音と共に石畳が爆ぜた。


「やはり妙なスキルを使うな。……まあよい。冥土の土産だ。とっておきを見せてやろう」


 九条は大きくバックステップして距離を取ると、聖槍を天へと掲げた。

 その穂先に、バチバチと若紫の火花が狂ったように弾け、収束していく。


「全方位展開――『竜槍・天霆龍轟(ドラグーン・レイド)』!! 」


 空がにわかに掻き曇り、無数の雷光が依人たちの頭上に降り注ごうとする。


(――まずい、この規模は防ぎきれない!)


「よせ!街の奴らまで巻き込むつもりか!?」

「黙れ。俺のプライドに比べれば、住民の命など安いものだ」


 俺は焦る。自分一人なら何とか助かるかもしれないが、背後には老人とティルメア、そしてエリナがいる。

 落雷の予兆が、大気をチリチリと震わせる。


(……っ!間に合うか?『竜槍術』を直接強奪するしかない!)


 依人は賭けに出た。スキルの発生源そのものを奪ってしまえば、今からでもこの大規模なスキルをキャンセル出来るはずだ。

 因果の強奪を発動し、スキルに狙いを定めた、その時――。


――シュンッ。


 音もなく放たれた一筋の光──"魔力遮断の矢"が九条の掲げた槍の先端を通過する。


「……なっ!?」


 瞬間、九条の魔力が霧散し、立ち込めていた暗雲が嘘のように晴れていく。

 九条が激昂して背後を振り向くが、そこには誰もいない。

 ただ、遠くの時計塔の影から、低く、抑揚のない声が響いた。


「……そこまでにしなさい。見苦しいですよ、(めぐる)


 建物の屋上、逆光の中に腰を下ろしていたのは、長弓を携えた青年――月読灯矢(つくよみ とうや)だった。

 彼は感情の読み取れない瞳で、チェス盤の駒でも眺めるかのように戦場を俯瞰している。


「灯矢……。 貴様、俺の邪魔をするのか?」


「邪魔、ではありません。()()()()()です。……今のあなたは全能感に酔いしれ、周囲の損害計算すら放棄している。……非効率極まりない」


 灯矢は淡々と告げると、手元で新たな矢を弄んだ。

 その指先の動きすら、機械的なほどに正確だ。


「奴隷の腕輪の負荷をこれ以上上げたくないでしょう?思考が焼き切れる前に、その槍を収めなさい。……これは、邪魔でも命令でもありませんよ」


 灯矢の言葉には、拒絶を許さない冷徹な説得力があった。


「……チッ。どいつもこいつも……!」


 九条は忌々しげに槍を収め、俺を射殺さんばかりの目で睨みつけた。


「命拾いしたな、小僧。……灯矢、行くぞ」


 九条は老人やティルメアの事はもう完全に忘れたようで、俺に対する興味すらも、この一瞬のやり取りでもはや希薄になっているようだった。

 彼が踵を返すと、灯矢もまた、陽炎が揺れるようにその姿を消した。


 あとに残されたのは、静まり返った街と、右手に残る魔剣の重みだけだ。


(……トウヤ、と言ったか。敵意はまるで感じられなかった。むしろ……)


 去り際、灯矢と目が合った一瞬。

 彼の瞳に宿っていたのは、軽蔑でも怒りでもない。

 同じ「狂った世界」を観測する者同士の、共鳴のような冷たさだった。

その後の九条廻「アイツと戦ってから、なんか俺弱くなってるんだが!?」

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