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麗しのハーフダークエルフの最恐魔王が勇者アリアにだけは甘い  作者: 久遠悠羽
第4章 死者を愛する者の罠

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第99話 死者を愛する者の罠 2


「…… 起動ヴァチラク?」


 フィスファーナがラキシャ語の発音に気付いてそちらを向いた。


 台座の側に立っていた、帯が巻き付いた形の人型の物から全ての帯がブワリと浮き上がり、ハラハラと解けて落ちていく。


「あれは?!」

 彼女が異変を見て声を上げる。


 しかしどうした事だろう。

 他の4人は台座を見つめたまま気が付かない。


 それどころかラザルが続きを読んでしまう。


「『強き力を持ちし者』」


「やっぱりリヒトの罠だわ!彼は言霊を操るのよ。皆んな読まないで!!」

 大声を出して皆に近付き必死で止める。


 その間にも人型の帯が全て解け、中から傀儡人形が姿を表した。

 音もなくゆっくり一歩を踏み出すと、赤く光る目をこちらに向けた。


「皆んな!敵よ!……!!」


 アウドラの肩を掴んで警告する。

 そこでフィスファーナはハッとして全員の顔を見た。


 彼女以外の4人が、虚な顔で立っている。

 その瞳の下部からじわりと色が滲んで行き、淡く光る藍玉色アクアマリンに染まって行った。


「あ……そんな……」

 リヒトの術に嵌ってしまった事に気付く。


 胸元に手を置き、息を整えて落ち着こうとする。


「私には……言霊は効いていないようね。

 今は身体と魂が一致していないからだわ。

 彼の術はまず身体を操りその者の魂に直接効くんだもの。

 でも、私以外の4人には強力に効いてしまう……!」


 彼らの瞳がリヒトの言霊支配を示す色に変わって行くのを見て、フィスファーナは呟く。


「……『2名を……我が……愛しき……』」

 ヴェイルがそれでも抵抗する様に息を詰めながら読み上げる。


「ダメだわ。私がなんとか……!」

 フィスファーナが傀儡人形に剣を振り翳して襲い掛かった。

 しかし幾重にも伸びる帯がそれを振り払い、彼女の身体に巻き付いた。


「えっ?!物理攻撃には無効なの?私……酷……」

 喋らせないようにする為か、口元にも帯が巻き付く。


 彼女の姿にやや我に帰り、危機を感じたのか、他の4人も抵抗する様にぎこちなく身体を動かす。


「『フィスファーナ……の復活の為の……贄とする』……アウドラ!逃げろ!!」

 無理やり読まされるラザルが苦しげに声を絞り出すと、急に剣を抜き、その背でアウドラの胴を殴った。


「あ!!」

 アウドラの胴衣リーヴィの魔紋が光り、姿が消えた。

 

 しかし彼もフィスファーナと同じく帯に捉えられてしまう。

「くっ!!」


 ラザルが抵抗しようにも、ぐるぐると巻いて来る帯の力は弱まらない。


 リュークが冑を脱ぎ捨て、自分の口を左手で掴んだ。


「『魔石……プラバライア……にその命を……捧げよ』フィスファーナ!すまん!」


 それでも尚読み上げてしまう中、なんとか保つ意識で、同じように剣の背で縛られているフィスファーナの胴を殴った。


 彼女の姿も、胴衣リーヴィの反応で消え去った。


 片目が藍玉色アクアマリンに染まったヴェイルが、同じく冑を脱ぎ歯を食いしばりながらも、漏れ出てしまう言葉を吐いてラザルに剣を向けて迫る。


「『名乗り……をあげよ……』ラザル!2人を頼む!!」

 

 そしてクルリと剣を裏返し、峰で彼の胴を殴った。


「陛下!」

 叫んだラザルの姿もその場から消え、縛っていた帯がパサリと落ちた。



 チキチキと微かな音を立て、傀儡人形がゆっくりと歩みを進め、止まった。


 ——場に2人だけ残ったヴェイルとリュークが、ついに瞳を完全に藍玉色アクアマリンに変えてしまい、台座の正面に突っ立っている。


 2人の読み上げまいと口と喉を抑えた両手が、力無く脇に落とされた。


 その身体を捉えるように、ラキシャ語の細い帯が足元からじわりと巻き上がって行く。


 彼らの横に傀儡人形が立ち、手を翳した。


【指定ノ贄ノ名シカ浮き上ガラヌ。本人ノミガ声ニスル事ガ可能。

 読ミ上ゲテミヨ、だーくえるふノ子孫達】

 彼らに分かるエルフ語で厳かに言う。

 

 台座に光る文字が浮き上がった。


『我、魔族の帝王、グラディス=ヴォルクリア』

 2人に反応はない。


【……コノ者ハココニハオラヌノカ……】

 傀儡人形が呟く。


 別の文字が浮かび上がる。


 該当する名であるヴェイルの瞳が光り、読み上げる。

「『我、魔族の真王、ヴェイル=ヴォルクリア』」

 

 次の文字も浮かび上がり、同じく瞳が光ったリュークが読み上げる。

「『我、火焔の副王、リューク=ノワール』」


【確認シタ。ソノママ動クコトナラズ】

 傀儡人形が命令する。


 細い帯が、胸元近くまで這い上がり、彼らの身体を的として固定した。


 ……最後に文字が台座に刻まれた。


 2人の瞳がもう一度光り、声を揃えてその文字を読み上げてしまう。


「「『我ら2名、魔石プラバライアに、この命を捧げる……』」」



 その言葉が響くと同時に、台座の上の魔石が2つ、眩い光を放って弾けた。


 中から飛び出した核が彼らに真っ直ぐ飛び、胴衣リーヴィも鎧も突き抜け、2人の右鎖骨下に鋭く刺さった。




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― 新着の感想 ―
あっ、、、ああ、、、、、、 心臓止まりそうですが月曜日18時待ちます;;;;;;;;
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