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麗しのハーフダークエルフの最恐魔王が勇者アリアにだけは甘い  作者: 久遠悠羽
第3章 滅びし王家の血と竜騎士の帰国

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第57話 ヴェイルからのプレゼント

 更に数日後の事だった。

 その日の業務は早目に終わった。


「ヴェイルの奴、早々に全員帰らせてオレだけ残れってどういう事なんだろう。それに少し前からアイツは居ない。何処に行ったんだ」

 リュークはヴェイルに魔王軍の第2広域訓練場に呼び出されていた。


 夕刻の広い訓練場に一人ポツリと佇んで不審がる。

「ここで待ってろって言われたけど……個人的に体術訓練でもするのかな?」


 そう独りごちた時だった。

 遠くからバサリバサリと何かの音がし始めた。

 彼がその方角を見ると、二頭の飛竜がこちらに向かって飛んで来るのが確認出来た。


「あれは……ストライア?」

 影はみるみる近付き、瞬く間にリュークの側に舞い降りた。

「わっ」

 ビョオゥという音と共に風が起こり、訓練場の砂が巻き上がって咄嗟に目を瞑る。


「待たせたなリューク!」

 目を開けるまでに、ヴェイルの声が聞こえて来た。

 見ると、自分の王機竜ストライアに乗ったヴェイルと、もう一頭に乗ったパトラクトラがいた。

 二頭とも6ガルドル(6メートル)程の体長の竜である。


「ヴェイル……パトラクトラ様も。これは一体……」

 リュークが驚いていると、彼らはいとも軽い動作で竜の上からひらりと地面に舞い降りた。


 ヴェイルがニコニコしながら近付いて来て言う。

「ドレス展示会の日に『今度何かで埋め合わせする』って言ってただろ? だからお前に王機竜をやろうと思って」

「ええっ?! オレに竜一頭? それ『埋め合わせ』のレベル超えてない?」

 彼が驚く。


 パトラクトラも近付いて来て言う。

「遠慮するな。こっちの黒竜《マギシラハ》は名を『ユシュラン』と言う。ヴェイルの竜、ストライアの妹だ」

「いえ、パトラクトラ様……遠慮とかそう言う話では……」

 リュークが戸惑って答えた。


 ヴェイルが続けて話す。

「実は今度の隊編成に飛竜部隊を作ろうと思っていてな。お前が乗りこなせるならそれに越したことは無いから、乗ってみろ」

「え、ちょ、酷っ。陛下の都合で? ……ええ?」

 彼がユシュランに向かってグイグイとリュークの背中を押す。


 リュークは困ってしまった。少し怖いのだ。


 それを見ていたストライアがパトラクトラに何か話している。

「そうか。そんな事が……」

「何? 母上」

 ヴェイルが聞くと、彼女が答えた。


「おまえ達、前に一緒にストライアに乗ったそうだな」

「え。うん。そうだけど」

「ストライアは『リュークがヴェイルにギューってした、大好きで仲良しだった』と言っている。そうなのか?」


 パトラクトラの言葉を聞いたリュークが赤くなって咄嗟に彼女を向いて謝る。

「も、申し訳ありませんっ! ……え、でも、ギュー……って?」


 ―—オレ何かしたっけ……? 確かあの時は……


 ストライアが『大好きで仲良し』などと言うのでリュークは一瞬パニックになった。


 ヴェイルが平然として言う。

「その時は一人用の鞍しか着けてなかったのに、俺が無理言って後ろに乗せたから、落ちそうになったリュークがしがみ付いただけだぞ?」


「うん、そうそう、急に高く上がるから怖くて……ごめん」

 リュークが思い出して縮こまってしまい、ヴェイルに謝る。

 パトラクトラは黙って見ている。


「それにしても、お前は本当に母上とはちゃんと話せるんだな。羨ましいなあ」

 ヴェイルは気にせず、愛おしそうにストライアに寄って行って頬擦りをした。


「あんな顔するんだ……アイツ」

 彼の様子を見てリュークがポツリと独り言を言う。


 それを見ていたパトラクトラが彼に向かって静かに言った。

「リューク、本当にいつも済まないな。あの子の側にいてくれてありがとう」

「え? い、いえ、どうなさったのですか? 急に」


「……お前さえ良ければ、ずっとあの子の横にいて支えてやってくれないか……」

 彼女はそう言うと少し俯いてしまった。


「勿論そのつもりですよ。オレで良ければ出来る限りお支《つか》えいたします」


「そうではなくて……お前はヴェイルの事を……」

「はい?」


 ―—何だ? 何の事を言っているんだこの方は。

 オレがヴェイルの事を……ん? 前から好きだが? 可愛いが?


「あの……もし何か、オレの態度が度を越しているのならば……気を付けます」

 気になってしまったリュークが言う。

 

「謝らせるつもりで言ったのではなかったのだが……お前は本当に良い人に育ったな」

 パトラクトラが困った様にため息を吐いて笑った。

 

 けれども彼女はそれきりにして話を変える。


「それはそうとユシュランに乗ってみろ。鞍には安全ベルトも付いているから大丈夫だ」

「はい」

 彼は仕方なく、恐る恐る飛竜に近付く。


 ユシュランと呼ばれたその竜は、ストライアよりは薄く控えめな体色をしている。

 綺麗な竜だなとリュークは思った。

 彼女は自分が乗りやすいように、大人しく膝を付いて低くなってくれている。


 鐙をかいて乗ると、ヴェイルが安全ベルトの掛け方を教え、金具をきっちりと嵌め込ませてくれた。


「黒竜《マギシラハ》はこちらの言う事は完全に理解する。手綱は虹馬《アルカンシエル》の操作とほぼ同じだから。自由に飛んでみろ」

 彼の言葉に、リュークは頷いて手綱を持った。


 そして右手で優しく胴を摩《さす》り、声を掛けてみる。

「行こう。ユシュラン!」


 竜は一声鳴くと、リュークを乗せてゆっくりと空に飛び上がった。

 ストライアも応援する様に鳴く。


 ヴェイルは嬉しそうに、飛んで行く彼とユシュランを見上げた。


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