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麗しのハーフダークエルフの最恐魔王が勇者アリアにだけは甘い  作者: 久遠悠羽
第3章 滅びし王家の血と竜騎士の帰国

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第54話 魔王と勇者の朝練

 トラフェリアの静かな早朝の事だった。

 まだ辺りは薄暗いが、小鳥達が目覚めて互いを確かめ合う様に鳴き交わしている。


 ミレーヌは起きて観葉植物に水をやっていた。

 朝食前のひと時に、自分が大切に育てている草木や花々に挨拶を兼ねて水を掛ける。


 水差しを手に持ち、窓際の吊り下げ植え込みに水をやろうと窓を開けた。

 彼女の部屋からは軍の広域訓練所が遠くに見える。

 その背後の山並みの間から、眩しい朝陽が顔を出しているのを目を細めながら眺めてみた時だった。


 ギィンギィン!と鋼のぶつかる音がした。

 何事かと思い、広域訓練所の方に視線を移す。


 そこには朝陽を浴びながら剣で撃ち合う2人の姿があった。

「あれは……アリア?!……それにヴェイル様っ?!」

 ミレーヌは驚いて水差しを落としそうになった。


 アリアとヴェイルが模擬戦をしている姿がそこにはあったのだ。


 ―—朝からアリアにこっそり会いに来て……模擬戦?!

 ……何をやっているのかしらあの魔王様は!!


 2人は真剣に剣を交えている。

 勇者であるアリアの高速斬撃は凄まじく、ミレーヌでさえ受けるのが難しい。

 それをヴェイルは一撃も逃さず剣で受けている。何という動体視力なのか。


「行きます!剛牙剣撃グガスレイガ!!」

 アリアが詠唱した。新術の様だ。


挿絵(By みてみん)


 彼女の剣に横列4本の魔剣が加わって加速度を増して同じ斬撃を作る。

 ヴェイルは瞬く間に防御盾を目の前に展開して2本を防ぎ、残りの2本は剣で素早く弾く。

 魔剣は勢いよく地面に突き刺さり、砂飛沫を上げた。


 一旦2人は止まり、剣を鞘に納めながらヴェイルが話す声が、ミレーヌの長く尖った耳に届く。


「アリアは妖魔力を上手く変換出来るようになったね」

「うん。もう光属性魔法で上書きする必要も無くなったから、身体にも馴染むようになって来たの」

 余裕のあるヴェイルに比べ、息を上げたアリアが答える。


「あれは……デートなのかしら?『剣戟デート』…?」

 ミレーヌが呆れて呟く。


 その時、ベッドサイドに置いてある、リュークから貰った通信用魔石の呼び出し音が鳴った。

 急いで取り上げて反応用の文字を押す。


「おはようございます、ミレーヌ姫。急だし、早朝から申し訳ないが……そちらにうちの『恋にはポンコツ魔王』が行っていないだろうか」

 声の主はリュークだった。


 ミレーヌは嬉しくなって返す。

「おはようございますリューク様。『恋にはポンコツ魔王』とはヴェイル様の事ですね?仰る事分かりますわ」

「はあ……勿論そうなのだが。もうすぐ早朝軍事会議が始まる時間なのに姿が見当たらなくて……もしやと思って」


「ヴェイル様ならこちらの第一広域訓練所でアリアと斬撃訓練をしておられますわ。多分こっそり来られたつもりの様です」

「ええ?やっぱりそうか。ありがとう、ミレーヌ」

 通信はそこで切れた。


 ミレーヌはもう一度窓際に行ってみる。

 程なくして広域訓練所にいる2人の元へ、参謀服を着たリュークが魔法陣で転移して来た。

 何やらヴェイルに説教をしている様だ。

 彼はアリアに何か言おうとするのもそこそこに、腕を引っ張られて魔法陣の中に消えて行く……


 リュークとヴェイルを見送ったアリアは暫く佇み、やがて振り返るとトラフェリア城に向かって歩き出した。


 10プラク(「1プラク=1分程度の単位」およそ10分)程して城の裏門に帰って来た彼女に、そこで待っていたミレーヌが声を掛ける。


「おはよう、アリア。ヴェイル様と朝のデートですか?」

「おはようミレーヌ。見られちゃったのね。デートじゃなくて単に剣戟と新術式見て貰ってただけなんだけど。軍部の人達じゃもう私の剣や術を受けられる人がいないから」

「……ヴェイル様、早朝から軍事会議があったみたいよ?」


「そうみたいね。リューク様が慌てて来て引っ張って行っちゃった。私がお願いしてこっそり来て貰ったんだけど、時間過ぎちゃってたみたい。悪い事したな。

 あれ?でもどうしてそれを知ってるの?」


 ミレーヌがギクリとして返す。

「リュ、リューク様から通信があって……」

「あっ、個人通信魔石交換してるんだ。……良いなあ」

「アリアもヴェイル様にお願いしたら渡してくださるんじゃないかしら?そしたら事務通信使わなくても……」

 彼女が少し赤くなって言う。


「ええ、そうね……お願いしてみるね今度。でも、くれるかなあ。忙しそうなのに」


 自信なさげに言うアリアにミレーヌは優しく返す。

「くださるわよきっと。今日だって来てくださったんでしょ?よほどアリアの事が好きなのよ」

「えっ?そ、そうかなぁ……そうなら良いなあ」

 アリアは照れて防具のままの手を頭にやった。


 ミレーヌはその様子を姉らしく眺めて言う。

「さ、シャワー浴びて着替えてらっしゃい。朝食を一緒に食べましょ?待ってるから」

「うん!ありがとう!すぐ行くね」

 彼女は明るくそう言うと、嬉しそうに部屋に向かって走り出した。


 その後ろ姿を見送ったミレーヌは呟く。

「……わたくしがリューク様に朝の訓練をお願いしたら、来てくださるかしら……

 あっ、でもわたくしの方がムリだわ……好き」


 彼女は顔に手を当て少し頬を染めたが、すぐに降ろし、朝食に向かうために歩き出した。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 それぞれの様子の一部始終を見ていた視線があった。


 遥か上空に自分の石白竜ピエドラブランカに乗って様子を見ていたドナウザーン公国第2王子のリオクがいた。

 竜の下方に反射板の様な透明な防御壁を張り、屈折率で自分の姿が見えない様にしていたのだ。


「トラフェリア国第2王女、アリア=エルナディア。ドラゴンキラーの勇者か。確かに強そうだ」

 乗っている石白竜ピエドラブランカがガルルと鳴く。

「え?なんだパキラ。……お前もやられる?そんな事はないだろう。高知能竜は国際的に駆除対象外だからな。まあ、もし何かあったってオレが守ってやるよ」

 リオクの短く黒い角が朝陽で光る。


「それにしてもトラフェリアの結界は弱そうだなあ。簡単に突破出来るぞこれ。それに、相手してた男も何。強かったけど、誰だろう。

 でも上司っぽい?それか何処かの将軍っぽかったかな?そんなヤツに怒られて回収されて行くとかさ、下っ端じゃん。マジでヌルいな」

 彼は鞍の手綱を引いた。


「『強い配偶者を連れて帰ったヤツが竜王を継ぐ』……か。

 朝から駆け回ってみて得したな。アリアも候補に入れとくかぁ」

 そう言うと、防御壁を解除し、飛竜に向きを返させて飛び去って行った。




 

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