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麗しのハーフダークエルフの最恐魔王が勇者アリアにだけは甘い  作者: 久遠悠羽
第3章 滅びし王家の血と竜騎士の帰国

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第52話 黒竜との会話

 魔族の国ナザガランの西隣から北部へと広がるダークエルフ達の国、タイカーシア。

 その山岳地帯寄りにある滅んだ王朝の遺跡に、1頭の巨大な黒竜マギシラハが寝そべっていた。

 パトラクトラの王機竜、ラタウスである。

 側には彼の2頭の子供の竜……ヴェイルの王機竜ストライアと妹のユシュランも緩やかな趣でしゃがみ込んでいる。


 艶やかな羽毛に包まれた巨大なラタウスの上には、しなだれる様に寝転んでいる人物がいた。

 愛竜の羽毛を撫でながら呟く者。それは1人で故郷を訪れていたパトラクトラだった。


「ダザイヤ銀河……ナダイン恒星系第3惑星ベラクロワ……北半球にのみ存在する陸地、アルファラン大陸……その中のエルフ由来の国々……世界とは何と小さな物なのか」


[この世界の事がそこまで分かっているとは。タイカーシアの最高位魔術院は優秀なんだな……かつて主の実力もすぐに見抜いて術者登録してくれたし]

 何処からともなく聞こえた声に向かって、パトラクトラは顔を上げた。


「ラタウスのお陰だ。突然飛ばされて来て右も左も分からない私を魔術院に連れて行ってくれただろう?『黒竜マギシラハつかえている程の人物だ』と言う事で宿舎にも入れて貰えたんだ」


[主はヒトだからな……ヒトの中で生活せねばならん]

 声の主、ラタウスが語りかける。


 パトラクトラが続けて言う。

[お前はいろんな事を知っているな。もしや、次元黒碧竜スワシュデルオクラインの事も知っているのか?あれは何なのだ……

 4ヶ月前の親族間戦争最終戦の時に、グラディスもヴェイルも危なかったから久しぶりに呼び出したのだが……320年も経っていたのに応じて来たのだぞ?」


[我も母に伝え聞いた事しか知らぬのだが……奴は我ら竜族に似た姿をしているだけで『竜』ではない。常に力を欲する宇宙空間の神が都合良く視覚化した物と聞く。『次元の魔女』が次元を開くから、獲物を狩りにくるのだ。その好物は『ヒト』と『欲望』……それに『魔力』]


「竜ではない…?」

[対として生まれて来る『次元の魔女』も出現する形式が分からない。ある世代に突然現れる……主の様に。歴代でも数人しか居なかったらしい。

 力の影響は遺伝するが、子供が『次元の魔女』そのものになる訳ではない……そして何故か大体が早逝だ。主も気を付けろ」


「それは恐ろしいな……」


 パトラクトラは寝そべったまま肘を付いて顔を上げた。

[『時空の魔女』だった主の姉も、主を逃す為に力を使った。その後、すぐに倒れてそれきりになったがな]


「姉は死んだのか?」

[分からない。当時の宮仕えの鬼族ラーキシャス不死アンデッドのリヒト』が抱えて去ってから2人とも行方知れずになってしまったのだ]


「姉と彼は婚約していたのだよ。もう、遠い昔の話になってしまった……いくらリヒトが不死でも……さすがに300年も経てば……」


[どちらにせよ、処刑された主の父王と母である王妃、主と姉との2人の王女、全てをクーデターで失ったアガン王朝は即日崩壊した。内部密通者もいたのだろうな。再建や維持を称える者もおらず、それ以来300年以上タイカーシアは最高位魔術者達が作る術院を頂点とした自治国家を維持している]


「私だって姉が無我夢中で逃してくれた先が300年後のタイカーシアだとは思いたくなかったよ」

[我ら黒竜マギシラハの寿命は約700年だ。主達は皆古代エルフ由来の人間で寿命は100年程しかない。なのに主があの日から300年経った頃に、此処に全く変わらぬ姿で突然空間を割いて現れた時には、流石に我も驚いたのだぞ]


「この、元いた王宮の遺跡にそのまま飛ばされるとはな。時空は超えるが場所は固定だったのが、ある意味では助かった」

 パトラクトラは甘える様に羽毛に顔を埋める。


「お前がいてくれたから事情が分かって、上手く最高位魔術院に入る事が出来た。孤独にならずに済んだし、そこに研修に来ていたグラディスにも会えたのだ。感謝している。ラタウス」


 そう言うと彼女は、側に置いている朧灯蜻蛉ろうとうとんぼという、蛍光蝶と同じ様にほのかに灯りながら飛ぶ蜻蛉を数頭閉じ込めた籠の、儚い灯りに照らされた顔で微笑んだ。


[息子にはもう伝えたのか?]

「何を?」

[自分が現代のエルフ由来人とは違う魔力回路構造をしている、300年前の身体のハーフダークエルフだと教えてやったのかと聞いている。主の力が遺伝して自身の重力構造に変化を与え、術式が使えている事も知っているのか?]


「ヴェイルにそれを伝えた所でな……他にも自己修復機能があったり、多種属性魔法を吸収発散出来る程度の差なのだが」


[しかし、あの子は密かに周りの魔族と自分が違う事を気にしているのではないか?]

「そうかも知れない……私の配慮は足りていないのかもな。いずれ話すよ。お前も話してやってくれ」

[承知した。いつでも話そう]


「ありがとう。ラタウス」


 パトラクトラは礼を言うと、もう一度ふわりとした羽毛に全身を預け、目を閉じた。



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