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麗しのハーフダークエルフの最恐魔王が勇者アリアにだけは甘い  作者: 久遠悠羽
第2章 魔王陛下は今日も玉座に座っていない

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第48話 ドレス展示会 4 ―リューク回想録―

 急いで会場に戻ってみると、観客の1人がヴェイルの腕を掴み上げていた。


 周りには割れたグラスや食器が散乱している。

 何やら怒っているようだ。……酔っているのか?


「おやめください。皆様の前ですよ…?」

 ヴェイルが冷静に言う。側ではアリアがハラハラして見ている。

「どうしたんだ、どう言う事だこれは」

 オレは割って入った。


「ふ。騎士様のご登場か。俺はコイツに跪いて謝れと言っているんだ」

 ヴェイルを掴んでいる男が言う。どうやらルガリエルの者らしい。

 周りを見てみると似た様な雰囲気の男が数人いる。


「オレは魔王軍第一部隊参謀、リューク=ノワールだが……何故この様な経緯になったのか説明して欲しい」

 内心殴り掛かりたい所を必死で抑え、努めて冷静に言う。

 

 ヴェイルを掴んでいた男が乱暴に腕を離し、吐き捨てるように言った。

「コイツのこの前のバトルマッチで、俺達の兄弟達が重傷を負わされたんだ。……回復が間に合わなくて後遺症が残って歩けなくなった者もいる……」

「それは……エルリックか?それともアディライトか?」

 オレは覚えている方の戦士の名前を言ってみた。


「違う。後から戦った3人だ。クリサード、ラインダクト、ミーアンガという。ドーム状の結界の中で戦った方だ」


「それなら、そいつらの方こそ卑怯な手を使ったからだろう。大体リィナ1人に3人がかりで、模擬戦なのに真剣を使って、誰にも見えない様にした中で一斉に襲いかかったんだろ?」


「そっちこそ!見えないのを良い事に中に強い者達を3人程呼んで戦わせたそうじゃないか。アイツらが言っていたぞ?あんな酷いやられ方、女1人で出来るわけがない!」

「なっ……」

「なんだと…?」

 ヴェイルとオレは同時に言った。


 やられた奴ら……悔しかったからってなんて酷い嘘を言うんだ。

 確かに常人で、魔法が使えても1人であそこまで強い奴はいない。

 ……オレか魔王ヴェイルぐらいしか。


 下世話な事を言うと、真剣で魔王に向かって来る様な奴は、あの場でヴェイルに殺されていても文句は言えないぐらいだ。

 コイツが『リィナ』を演じ切っていたからこそ殺されなかっただけで……


 けれども、ヴェイルが卑怯者扱いされるのは気に食わない。


 コイツは確かにあそこでたった1人で戦っていたんだ……でもその事を証明出来るものがない……


 その時、威厳のある声がした。

「何か揉めている様だな。この様な社交の場には相応しくないぞ?」


 皆がその声の方を向く。

 そこに居たのは目が覚める程に艶やかなドレスを着た、これまた美麗なダークエルフ、パトラクトラ様だった。


「パトラクトラ様?」

「王太后様…?今までどちらに……」

 ヴェイルが聞く。


 彼女はゆっくりと歩いて近付いてくると

「この国際展示場には古代からの書物や出土品や資料を揃えた大きな資料館が併設されているだろう。今日はそこの図書部門に籠って古文書を読んでいた」

と答えた。

 

 その為にドレスを新調したのかこの方は?

 それともただ新しいドレスが着たかっただけだろうか。

 ヴェイルに負けないぐらい破壊的な美しさに、つい魅了されて誰もが見つめているじゃないか。


 元々この会場には来るつもりだったのだろうけど、何か準備でもしていたのだろうか……


「お前達、アルタに来場者名簿は見せて貰わなかったのか?」

 彼女が聞く。

 オレが答える。

「はい。そちらには気が回りませんでしたので……」


 彼女は腕組みをして答えた。

「もしかしたら今日の機会にバトルマッチでのリィナの圧勝に不満を抱く者が来るかも知れないと思ってな。何せリィナは普段姿を見せないから……名簿を確かめてみたのだが、あの時の戦士と同じ苗字を持つ者が連名で申し込んでいたのだ。だから念の為待機していた」


 ええ?そこまで考えるか普通……凄いなパトラクトラ様は。

 ヴェイルが絡むと途端に名探偵になるのか。親バカっぷりが次元まで超えている。


 そして彼女は男達に向かって言った。

「あの時はリィナが1人で戦っている。結界はルガリエルの戦士が張ったもので、リィナは武器の召喚も助けを呼ぶ事も一切出来ない状態だった。なのに相手は3人とも真剣で、殺そうとして立ち向かって来ている。しかも途中で3人がかりで押さえ付けていたのだぞ?」


 え?そうだったのか……聞いてないぞ?

 ヴェイルも驚いて見ている…。話していなかったのか。

 ならば何故パトラクトラ様はその様子を知っているんだ…?


「嘘だ!適当な事を言うな!」

 男が更に怒って言う。

「……適当ではない。見せてやろう……」


 そう言うと彼女は右手を出した。その手には収まるほど小さな映写石があった。

 オレが前にタイカーシアの業者に作ってもらった形式の月長石の物と同じ様に、側面に再生や停止の古代エルフ文字が光った機材だった。

 その光る文字を押すと、例のバトルマッチの様子が空中に映し出された。

 早送りをしてドーム状の結界が張られたシーンまで再生する。


位相真眼ウルトベイミア

 パトラクトラ様が詠唱した。

 すると画面の中のドーム状の結界の中が透けて見えた。

 音声も全て聞こえる…これはどう言う事なんだろう。

 過去の映像の見えなかった部分まで炙り出す……不思議な魔法だった。


 その場にいた皆が黙って観ている。

 そこには「殺しても構わない」発言や、リィナが武器も持てない状態で防御の盾だけで戦い、3人がかりで真剣で斬り付けられ、襲われ、押さえ付けられた様子がハッキリと映し出されている。

 その時に辱めを受けそうだった事も分かった…。


 結果的にはリィナが勝っているが、どう見ても正当防衛だ。

「酷いのはそちらではないか」

 

 オレは凄んで見せた。

 男達が悔しそうに歯軋りをしたが、3人ほどが前に出て来た。


「それでも許せん!リィナ=エミル!この場で決闘を申し込む!」


 ええ?諦めが悪い奴らだなあ……どうしたらいいんだ。


「決闘…?今、決闘と言いましたわね…。私に決闘などと……」

 ヴェイルが下を向いた。が、すぐに顔を上げて言う。

「ふう。……まあいいですわ」


 そしてハイヒールのままツカツカと歩いて隣接しているテラスから外に出た。

 心なしか嬉しそうだ。


 そして申請を出していた例の結界が張られた開発予定地区を指差して言った。

「ちょうど新しい術を試してみようと思っていたのです。見ていただけますか?」


 彼はリィナのままの麗しい姿でそう言うなり、その土地を目掛けて両手を上げ詠唱した。

サー・エルダル・ヴィラム・咆哮イグナ・アルファール・重炎グロンダル・セラ・ヴィトラ

 ―—【天裂迅雷シュネラヴェルツ】!!」


 途端に轟音と共に地下からマグマが混ざった雷の柱が現れた。

 それはその土地の100ガルドル(100メートル)四方の範囲にキッチリとはみ出す事なく数十本天に向かって立ち昇って行く。


 辺りが暗くなり、こちらにも届く様な衝撃派を伴いあっという間に地盤が崩れる。

 柱は崩れたがマグマと雷は消える事なくその場に留まり、まるで竜の様にうねり、バチバチと発光し、空気を高温にしている。

 そこに生えていた木々や草が崩れた地盤に吸い込まれ、高温に焼かれて燃え盛った。

 まるで地獄の業火の所業だ。


 ヴェイルの魔法は水・氷特性のエレメント魔法と重力系しか見た事がなかったが、まさかの雷特性、いやマグマも?何処から?

 怖すぎるな……これって土特性も混ざった技って事か?

 ここに来てやっとグラディス様の雷特性を継いだ魔法が出せる様になった、と……いやオリジナル度が高すぎる。


 最近熱心に詠唱を練習しているなと思っていたが……

 しかも威力が物凄く、50ガルドル(50メートル)は離れているこちらにも熱波が伝わって来る。


 会場にいた誰もが驚愕して声も出ない。

 パトラクトラ様だけが唯一満足そうに微笑みながら頷いていた。


 そんな中、ヴェイルがリィナの顔で振り返って男達に言う。

「私なら今すぐにあの業火の中に、あなた方を転送する事が出来ますが?やってみましょうか?」


 男共は全員、何も言えずにその場にへたり込んだ。





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