第44話 魔王が戦乙女でリィナでドレス 2
「これは一体どう言う事だ?ヴェイル、リューク……」
魔王城の、防音結界で完全に遮音された作戦会議室で、前魔王グラディスが向かいに座っているヴェイルとリュークに言った。
手には魔王軍の1日休暇閉鎖申請書と、ナザガラン特設国際展示場横開発予定地区の土地伐採申請書がある。
「……ですから……その日はアルタ商会のドレス展示会にリュークと、俺もリィナとして参加しますので休暇にしてしまおうと思っていまして。
俺は当日は新術研究の為に呪術室に籠もると臣下にも伝えてありますし、誰も入らせませんので……」
ヴェイルが小さな声で言う。
「だからと言って何故魔王軍1日休暇閉鎖にするのだ」
グラディスが聞く。
「それが……アルタ商会のチラシに大きく『ドレス展示会に戦乙女のリィナ=エミル様ご出演!!』と書かれてしまっていて、皆が見に行きたいと言い出しましたので……思い切って閉鎖にしようかと」
「……あまり言いたくはないが、お前は愚か者か?」
「うう……」
グラディスの言葉にヴェイルがますます縮こまる。
「あれだけ私も手を貸して『リィナは不在だ、ナザガランには【戦乙女部門】などと言うものもない』と通達を出して懸命に火消しに走っていた矢先ではないか。お前が率先して人前に出て、バレてしまっては意味がないのではないか?」
「申し訳ありません。私が出てもいいと言ってしまったものですから……」
彼の言葉にリュークが謝る。
「リュークはまあいいのだ。魔王軍一の火焔斬撃戦士だしな。見た目も逞しくて美形だし、男性として魅力的だ。……問題はヴェイルだろう。よりにもよって魔王だぞ?国家元首が女装…… お前、私の息子だよな?確か……」
「……お気持ちお察しします」
リュークがつい言ってしまう。
ヴェイルが目を瞑って言う。
「申し訳ありません。頑張って絶対バレない様に所作に気を付けます、父上」
「そっちに全振りしてどうする」
グラディスが大きなため息を吐いた。
「実はもう……私達のドレスとスーツも仕上がっていまして、出演料も支払われて来たんですよ」
リュークはそう言うと、アルタ商会からの明細書と口座に振り込まれた金額を見せた。
グラディスがそれを確認して顎に手を当てた。
「お前達の出演にこれ程の価値を見出しているのか。一体どれだけの売り上げ予想を出しているんだ」
リュークが答える。
「今回は結構派手に各国にも宣伝している様です。ナザガランだけではなく、トラフェリアやルガリエル……他の国からも観客が押し寄せる様でして、我が国で1番広い国際展示場を使用して3部構成、立食パーティー形式で行われるそうなのです」
「なんだと?そんな大規模なのか。ううむ……」
グラディスがまた考え込む。そしておもむろに尋ねる。
「それは……私も観に行って良いのだろうか」
「はい?」
「ええ?」
リュークとヴェイルが驚く。
「父上が観に来るのか?!あ、いや、『来られるのですか?』」
慌てたヴェイルが言う。
「ダメか?」
「い、いえ、そんな事は……でも俺の女装を見る羽目になるんですよ…?」
「うん、そうだな……それはもう、覚悟する。いや、実はな……パトラクトラが行く気満々で」
「母上が?」
ヴェイルの問いにグラディスが少し目を逸せて答える。
「うむ。実は彼女もドレスをこの前新調していた。何故かそのドレス展示会に私は必要だと言って……アイツ、モデルで呼ばれているのか?」
「それは……聞いておりませんが」
ヴェイルが不思議そうに言う。
「それからなんだこの『ナザガラン特設国際展示場横開発予定地区の土地伐採申請書』は。お前が自由に使うと言う事か?100ガルドル(100メートル)四方に外部干渉不可の結界も張ってくれとあるが。あの小高い森林地帯をどうするんだ」
グラディスが聞く。
「そこは……今修行中の魔法を使うかも知れないから申請を。その範囲には動物も入ってこない様にして欲しいのです。どうせ更地にする予定の土地なのでしょう?」
ヴェイルが少し嬉しそうに言う。
「嬉しそうな顔の時って、ホントろくな事考えてないよな、お前は」
リュークが隣で呆れた様に言った。




