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婚約破棄され捨てられた泣き虫令嬢、愛される。

 少しばかりうねった桃色の長い髪と愛らしさ満点の小動物のような顔立ち、まさに『可愛い』を体現したような娘リリアベル。


 彼女は幼い頃から周りより泣き虫だった。

 周りがもうそんなに泣かない年代になってからも彼女だけはよく泣いていた。


 悪意はない。ただ、涙が溢れると止められないのだ。彼女自身周りとは違っていることを理解はしていた。が、それでもどうしようもなかった。泣き虫は自力では治せなかった。


「リリアベル、悪いけど、君みたいなすぐ泣く女とはやっていけない。だから婚約は破棄とさせてもらうよ」


 ある日のこと、婚約者ガウスからそう告げられたリリアベル。


 やはり泣いてしまう。


 大粒の涙を瞳からこぼすことをやめられなくなってしまったリリアベルに対し、ガウスは心ない言葉ばかりを浴びせた。彼は躊躇しなかった。もう関係が終わると分かっているからか、以前のことまで掘り返すようにして彼女を責める。そんな状況だから彼女が泣き止めるはずもなく。リリアベルは結局長時間にわたって泣いてしまった。


 こうしてリリアベルとガウスの関係は終わった。



 ◆



 数日後、婚約破棄されてから泣いてばかりいたリリアベルの前に一匹の蝶に似た人物が現れる。


 蝶のような妖精。

 虹色の羽根を持つスイート族であった。


「泣かないで、これから僕が貴女を幸せにしますから」


 リリアベルの前に現れたスイート族の一個体は雄で、それもただの雄ではなく族長の息子だった。


 彼は幼き日のリリアベルに助けられたことがあって、それ以来、ずっとリリアベルのことを見守り追っていたのだった。もっとも、リリアベル本人はまったく気づいていなかったのだが。


「一緒に生きましょう」


 彼の言葉に、リリアベルは頷く。


 こうして新しい人生が始まるのだ。



 ◆



 リリアベルはスイート族族長の息子の妻となった。

 で、あれから数年が経った今も、一族が暮らす森の奥の村で生活している。


「このハーブティーはこの森あってこそなのよ! 飲んでみて!」

「はい! ……美味しい!」


 今リリアベルは泣いていない。


 夫はもちろんのこと、彼の友人知人や族長家に仕える者たちも、皆リリアベルに優しかったのだ。


「美味しい蜜がありますわ、リリアベル様。いかが?」

「ありがとう! 貰います!」


 彼女は今、とても愛されている。


 ちなみにガウスはというと、スイート族に伝わる伝説の呪術によって肥らされ、重度の生活習慣病になってしまっている。


 腹の肉は三日で五十倍くらいになり、血圧は高まり、足の爪にまで異常が発生している。



◆終わり◆

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