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男二人で征く異世界漫遊記  作者: HYA
第二章 南大陸
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第9話 南大陸の地脈の神殿 復路

 5日目

 9時位に目が覚める。簡単な朝食をとった後、11時位に出発し、地脈の神殿を後にする。途中先日追い抜いたであろう巡礼者の集団とすれ違ったが、そのまま先に進む。その日は何事も無かった。


 6日目

 まだ森のエリアを走行しているが、夕方位になれば樹木の密度も少しずつ薄くなってくるであろう。着実にオールシーへと近づいている証だ。

 13時頃警戒魔法に反応が現れた。

「正面に反応4、距離1500m。それから右側の森1000m位にも反応が3あるぞ。どちらも集まっている。正面の奴らは街道をこちら側に、森の奴らは街道方面に移動中。」

「正面は徒歩の巡礼者かもしれないけど、森から来るのは怪しいね。遠目の魔法をかけて、正面の奴らを確認するよ。」

 早速魔法をかけ正面を見据える。巡礼者かと思っていたが違った。矮躯で薄緑の体表に腰蓑を巻き、長い鼻と耳を持った禿頭の醜い容姿、手には棍棒や石斧を持っている。明らかに人間ではない。

「あれってモンスターか!」

 宏も正面を見ながら、

「馬車を止めろ!あれは敵だ。排除するしかない。まだ距離は十分にあるから焦る必要は無い。その前にモンスターの証拠を残しておかないとな。」

 馬車を止め、地面へと降りる。すかさずアイテムボックスからスマートフォンを取り出し、望遠モードで撮影する。終わってからスマートフォンを仕舞い、武器を取り出し構える。

 警戒魔法の敵意感知が反応を知らせる。相手もこちらに気づいたようだ。モンスターの一団が走りながらこちらへと向かってくる。

「直接殴り合いたくはないな。遠距離から攻撃魔法で仕掛けよう。」

「基本的な攻撃魔法の射程距離は長くて100m位だね。組み合わせや工夫次第で伸ばせそうな感じもする。」

「今はそんな事を試している時間は無い。射程内に入り次第攻撃開始だ。射程の長い土魔法のストーンバレットで攻撃を頼む。まずは牽制する。」

「了解。」

 こちらも走り出し、距離を詰める。100mを切ってから一斉に攻撃した。

 石礫が敵を打ち据え、モンスターが悲鳴を上げ立ち止まり混乱する。こちらから更に近づき20mを切ったところで風魔法のエアカッターを連続して発動させる。風刃が相手をズタズタに切り裂く。モンスターは赤い鮮血をまき散らしながら断末魔の悲鳴を上げ4匹とも斃れた。気配探知から4匹の反応が消える。

「何とか倒したか。一応物的証拠も確保しなければ。」

「ファンタジー小説での定番だとこいつらはゴブリンかな?だったら鼻と耳を証拠として持っていこう。宏、解体スキル持っているでしょ?お願い。」

「俺かよ。これは解体スキル関係無いと思うがな、仕方ない。」

 気色悪い感触を我慢しながら、証拠部位のダメージの無い個体からそれぞれ鼻と耳を切り落とし、生分解性樹脂から作った袋に入れ、アイテムボックスに仕舞う。

「後は森の中にいた連中か。この分だと何もない事が期待出来ないな。」

 気配探知の反応が、残りの連中を捉える。街道に出てきたようだ。こちらも目視で確認するとゴブリンと思しきモンスターだった。

 仲間の断末魔を聞いたのか敵意むき出しでこちらへと向かってくる。

「先ほどと同じ手筈で始末しよう。」

 もはや作業と化した手順で、残りのモンスターを始末する。

 始末した後、森の中に少し入り掘削の魔法で穴をあけた後、モンスターの死体を得物毎放り込み、再度土で埋める。

「これで良し。」

「念のため、警戒魔法で周囲を確認するか。」

 周囲2000m以内に反応は無かった。

「前から試してみたかったのだが、警戒魔法の射程を伸ばすアイデアがあるんだ。」

「どうやって?」

「知っての通り、警戒魔法は術者を中心として半径2000m程を探知するが、その範囲を絞り込む。要するに円を扇状にするんだ。すると射程がその分伸びるんじゃないかと仮説を立てている。では早速試してみよう。」

 試してみた所、やはり扇の角度を狭めるほど射程が伸びる事が判明した。最大で10km程探知できるようだ。これをレーダーの如く360度スキャンさせる。一度に探知できる範囲は狭まっている為時間はかかったが、マップ上で森の右側10kmの地点に5以上の反応が現れた。

「まだいるって事か。だが、森の奥だ。直ちに影響はないだろう。」

「そうだね。でも森に近い村には注意を促したほうが良いんじゃないかな?」

「その位はしておくか。」

 二人は再び馬車を走らせ、先へ進むのだった。


 7日目

 ようやく森に最も近い村に到着した。

 村人に村長の家の場所を尋ねる。やはり村でも一番立派そうな家がそうだった。

 そこへ向かいドアをノックする。

「俺達旅行者のヒロと言います。村長さんに用事があって来ました。」

 ドアが開く。40代半ばくらいの男が顔を出した。

「私が村長のホレスです。何用でしょうか?まずは居間にどうぞ。」

 訝し気な顔をされつつも、家の中へと案内される。

 宏が早速用件を切り出した。

「実は神殿からの帰りにモンスターと思しきもの計7匹と遭遇し、何とか撃退しました。ここから森の街道に入ってある程度進んだ辺りです。ここから馬車で1日はかかるでしょうか。」

「モンスターですと!どのような外観だったのでしょうか?」

 宏はバックパックから、マジックボックスを経由してスマートフォンと袋に入れたモンスターの討伐部位を取り出す。袋の中身とスマートフォンの写真を見せる。

「これは周りの風景を記録する魔道具です。これがモンスターの姿となります。」

「これはゴブリンじゃないか!」

 やっぱりゴブリンだったようである。村長の顔が険しくなる。

「ゴブリンは一匹の戦力は大した事は無く、村人でも大人であれば、槍などの得物を持っていれば十分に対応できます。ですが、奴らの最大の強みはその数です。数匹なら対応出来るからまだ良いほうで、数十と言う集団で来られると、軍隊でなければもう対応できません。大抵ゴブリンが散見されるようになると、森の奥に集落を作っていることが多いのです。それに奴らは多産です。放置すると忽ち100匹以上の大集団へと成長するでしょう。ここから馬車で1日位の距離であればこの村も神殿も危ない。至急オールシーに救援を依頼しなければ。」

 焦った顔で使用人に早馬と使いの者を呼び寄せるよう指示を下した。

「ヒロ様、申し訳ないですが、証拠となるものをいただけないでしょうか?」

「魔道具を渡す訳にはいかないが、袋に入っている鼻と耳なら良いですよ。」

「ありがとうございます。それで充分です。早速早馬を遣わせます。」

 早馬と、村の中でも一番馬の扱いに長けた男が呼ばれ、村長から事情を説明される。ホレスは一旦書斎へと籠り、オールシー駐留騎士団、領主宛への書状を書くとすぐに現れ、書状と証拠を男に渡すと、男は直ぐに馬を走らせ、やがて姿が見えなくなった。

 少し落ち着いたのか村長が、

「これからどうなさいますか?まだ夕方まで時間は十分ありますが、泊って行かれますか?それなら我が家の客間を用意します。」

「いや、こちらも先を急いでいるので、これから出発します。ゴブリンのせいで旅程に遅れが生じているもので。」

「そうですか。道中お気を付け下さい。」

 村長の家を辞し、馬車を走らせる。いずれにしても、自分達に出来る事はやり切った感じがした。これ以上介入しても目立つだけで本来の目標から遠ざかってしまう。そう思い一路オールシーを目指すのであった。


 8日目

 17時頃ようやくオールシーの西門が見えてきた。早速入街手続きをしようとすると衛兵から話しかけられる。

「神殿方向の森の街道でゴブリンが出現したそうですが、大丈夫でしたか?」

「何とか無事到着する事が出来ました。幸いにもこちらに何も無くて良かったです。」

 ここでゴブリンを討伐した事を喋ると面倒事に巻き込まれそうなので、しれっと誤魔化しておく。無事入街手続きが終わり、1週間ぶり以上の宿へ到着するのであった。

 夕食後、ソファーに座りキョウ21年が入ったグラスを傾けながら寛いでいた。

「この8日間トラブルもあったけど、無事目的を達成出来て良かったよ。でもまさかゴブリンとご対面するとはね。」

「ああ。本当に異国どころか異世界に来たのだと改めて実感したよ。今回の戦闘では無事撃退することが出来たけど、課題も見つかったな。」

「そうだね。基本的な魔法の射程が長いもので100m位あるとは言え、最大射程だからね。しかも距離に比例して威力も減衰するし、有効射程はもっと短いよ。戦闘での危険を減らす為にも基本的な魔法の射程を伸ばす工夫も必要だよ。最も、大規模な範囲攻撃魔法を使えば有効射程100mは楽に超えられるけど、見た目が派手で遠くからでも使用している事が分かるし、通常の戦闘で使うには威力過剰で使えないよ。ましてやこんな都市の近郊で練習する訳にもいかない。まだ宿の期限も11日は残っているから、ゴブリン騒ぎとは無縁と思われる東門から出た人気の無い場所でもっと使い勝手の良い魔法の実験をするのも良いかもしれない。」

「まだ課題はあるぞ。俺達は結局近接戦闘をしていない。近接戦闘のスキルもあるとは言え、実戦を経ないと不安な所がある。それに、モンスターもそうだが、盗賊等の人間を相手にする可能性も十分考えられる。」

「流石に人間相手は勘弁して欲しいね。殺されるかどうかの瀬戸際とは言え、人を手にかけるのは気が進まないよ。」

「そうだな。甘いと思うが人間相手であれば極力殺さないようにしよう。例えば闇魔法の中に精神操作系や、睡眠系の魔法もある事だし、基本的な攻撃魔法でも殺傷力を抑える工夫が入る余地がありそうだから、非殺傷性の魔法を積極的に使おう。」

「けど、近接戦闘の問題はどうしようか?魔法の訓練がてら、猪のような野生動物でも相手にしてみる?」

「やらないよりはましだろう。でも野生動物も十分危険だからな。安全マージンを十分にとる必要はあるぞ。」

 結局、東門を出た人気の無い場所で、近接戦闘訓練と魔法実験を行うという方針が定まった。

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