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男二人で征く異世界漫遊記  作者: HYA
第二章 南大陸
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第8話 南大陸の地脈の神殿 往路

 出発初日 9時頃

 地脈の神殿は、オールシーから北西方向にあるので、西門から出発することになる。出発時に衛兵から、

「道中、お気をつけて。」

 と見送りの言葉をかけられる。

「1日目位の距離までは村があるけど、それから先は目的地まで人の集まる場所は無いね。」

「そうか、それなら好都合。」

 マップを確認すると、村を通り越した辺りにちょっとした休憩場所に使えそうな道に面した馬車を停められるちょっとした空き地があった。そこに到着する頃には18時位にはなっているであろう。

「今日も一日、品質と安全が第一。着実に進んでいこう。おっと、品質はこの際関係無いか。」

 と宏が自分自身に気合を入れる。俊充も、

「今日も一日安全第一。」

 と宏に合わせて、合いの手を入れる。

 幹線街道とは異なり、主要都市への道ではない為か、路面状況は宜しく無い。

 だが、我慢出来ないと言うほどでもない。普通の巡礼者達は、どれだけ大変なのかと思いを馳せる。


 その日は特に問題なく、予定の休憩場所へと到着した。時間は17時位だ。

「流石に村を超えたこの場所を通る人もいないだろう。野営の支度をしようぜ。」

 と言い、馬車のタープを広げ、街道側に椅子とテーブルを出す。

 一方で、街道とは反対側で見えない位置に、ステンレス製の湯舟と風呂桶、木製の簀子、衣類置きを設置する。夕食後に久々に入浴する為だ。オールシーにいる間、ささっと作った。石鹸は仕入れているのだが、浄化魔法がある為、入浴前に浄化魔法で洗浄すれば良いので無理に使う必要は無かった。あくまでも入浴のみを堪能すると言う娯楽の側面が強い。

 ターポートからオールシーへの旅程で風呂に入れなかった事を反省し、今後道中でも風呂に入れるようにしたのだ。


「今日の夕ご飯は鴨の丸ごとロースト香草風味粗挽き胡椒がけと中に詰めた温野菜がメインだよ。副菜はチーズだね。足りなかったらパンも出すよ。ちなみにデザートはオレンジだよ。」

 炭火コンロにかけたダッチオーブンから、ローストを取り出し切り分け配膳する。ワイングラスを並べ、ターポートで仕入れた赤ワインを注ぐ。こちらは予め、樽から瓶に移し替え、合成コルクで栓をし、アルミのキャップシールで封印したものだ。瓶詰めの際味見をした所、瓶熟しても良さげな雰囲気だったので、アイテムボックス内で3年ほど加速させ瓶熟させている。ソムリエナイフで封を切り、栓を開けグラスに注ぐ。

「ようやく赤ワインが飲めるよ。これもターポートの商業ギルド経由で仕入れた銘醸ワインさ。名前は“ユニコ”って言うんだって。」

「ほーう。それは楽しみだ。」

 そう言い、一口含む。その味わいは、力強く、芳醇な香りがする。口当たりも滑らかだ。

「久々の赤だから旨いなー。でもちょっと若くて硬い感じがする。まだまだ熟成を進めても良さそうだ。」

「それだけじゃなくて、折角作った料理も食べて欲しいな。」

 そう言い、料理を勧めてくる。

「鴨の野趣溢れる肉の味わいとワインとの組み合わせが心地良い。」

 合間にチーズを挟みながら食べ進めてゆく。

「鴨のお腹に詰めた根菜類も出汁を吸って美味しいでしょ?」

 と食べながら俊充が言う。

「ああ。これも旨い。滋味深い味だ。」

 肉の合間に、温野菜、チーズ、丸白パンと手を付け、皿を空にしていく。デザートも食べるのを忘れない。

「ああー、食った食った。ご馳走さん。」

「どういたしまして。」

 さっと後片付けをし、馬車の中に入る。ソファーに腰掛け腹がこなれるのを待つ。そうして1時間程雑談した後、

「そろそろ良いかな?お風呂入っても。」

「俺は後からで良いよ。」

 そう言って俊充は、火魔法、水魔法を併用しお湯を湯舟に満たしてゆく。それから自分に浄化魔法をかけ、かけ湯をし、湯舟へと入った。

「ああー、久しぶりのお風呂だー。気持ち良い。」

 20分位して俊充が上がってから、宏も風呂に入る。少しぬるめだからもう少し熱くしたいなと思い、熱い湯を足して温度を調整し、湯舟に入る。

「今日一日の疲れが洗い流されるようだ。」

 満足して風呂から上がり、後片付けをして馬車に入る。そして湯冷めする前にベッドに横になり、眠りについた。


 2日目

 朝食を終え、馬車を走らせる。幹線街道とは異なり、馬車の一団もまばらである。

 基本的には、神殿とその付帯施設に物資を届ける商人と、巡礼者しか訪れないからだ。周りを眺めると、だんだんと周りの樹木の密度が高くなっていく。

「周辺の視界が徐々に悪くなってきたな。そろそろ気配探知、敵意探知の警戒魔法を本格的に発動させよう。」

 宏は魔法を発動させ、マップと連動させる。この連携技はマップのスキルを持つ宏にしか出来ないことだ。今の所は特に問題は無い。

 15時位になった時、探知魔法に気になる反応が見つかった。

「左側の森の中に気になる反応がある。4体位集まっているな。距離は探知範囲ギリギリの約1900m。野生動物かな?何にしても攻撃的な連中でなければ良いのだが。」

「そうだね。でもこのまま馬車で通過しちゃうから、あまり関係無くないかな?」

「まあ、頭の隅に置いておくだけでもいいだろう。わざわざ中に入って確認するなんて手間はかけたくない。」

 そのまま馬車を走らせ、先に進むことにした。この日はこれ以外特に気になる事は無かった。


 3日目~4日目 神殿到着

 3日目は順調で、4日目の15時頃神殿が見えてきた。森の中に大きく切り開かれた平地があり、その中央に鎮座している。その姿はまるでイラクのウルにある、ジッグラトのような大きな建造物だった。明らかにこの南大陸に来てから街で見た建築様式とは異なっていた。衛星写真?で見てはみたものの、上から俯瞰した視点のみだったし、こうして実際に見てみるとその歴史を感じさせる荘厳さに少々感動を覚える。

 神殿の正面右側には、教会や宿等の建物が軒を連ね、ちょっとした村のようになっている。

 敷地内の入り口に槍を携えた僧兵がいる。こちらを見つけると話しかけてくる。

「巡礼者の方ですか、お疲れ様です。」

「いいえ。実は南大陸に来た以上、荘厳な建造物で有名な神殿がある女神教の聖地の一つであるここを一度は訪れたかったのですよ。神殿の最上部の建物にある女神像に祈りを捧げることは出来ますか?」

「女神教は寛容で、神殿は一般開放されておりますので、敬虔な信者でなくとも参拝は可能です。ただ大きい建物なので、儀式以外では夜間明かりを確保することが難しく、月明かりのみで暗い箇所が多い為、危険ですので基本夜は入れません。」

「教えて下さってありがとうございます。宿があるようですが、1軒だけですか?」

「そうですね。ただ普通の宿とは異なり、主に信徒を相手にしたものなので、設備は簡素で、食事も最低限。部屋は大部屋で各々雑魚寝をして休みを取る形になります。はっきり言って快適ではありませんよ。これも修行の一環のようなものですしね。物資を運んで下さる商隊の方も泊まらずに、各々野営している位ですから。」

「そちらについては野営の準備がありますので、問題ありません。馬車と馬は何処に停めたら良いですか?」

「神殿の右側に各建物類がありますが、左側は何もない広場になっています。そちらに停めて貰えれば大丈夫です。」

 左側に視線を移す。商隊の一団が一組と、信徒を連れてきたと思われる乗合馬車2台と随伴馬車が停まっている。護衛の傭兵と思われる一団も2組そこにいた。彼らは野営の準備をしているようだ。

 馬車を進め、出来るだけその集団から離れた場所に馬車を停める。



 女神教とは、女神ダムキナを信奉する一神教である。教義も穏当かつ寛容なためかその教圏は広く、南、西、北大陸で多くの信徒がいる。教会もある程度の人口がある村、町、都市には必ず1か所はある。ちなみに、俺たちを送り出した女神ダムガルヌンナは、この異世界では女神ダムキナを名乗っている。



 まだ明るいので、早速神殿の女神像を拝謁すべく、神殿の長い階段を上り始める。

「かなり長い階段だな。こりゃ一苦労だ。少しげんなりしてくるな。」

「そう言わずに頑張って登ろうよ。良い運動の機会じゃない?」

 黙々と階段を上り、最上階の女神像が安置されている建物に入った。女神像はこれまた巨大な台座の上に置かれており、神々しさを感じる。異世界に飛ばされる前にいた白い空間で見た女神様にそっくりだった。

 台座をよく見ると、正面に扉のようなものがあり、その両脇に両手の手形が彫られていて手が収まりそうだ。また正面の扉のようなものには、この大陸に来てから見たこともない楔文字が刻まれていた。だが、同時翻訳のスキルを持つ二人にはその内容が分かる。

「浄化の手を持つ者達よ、両脇の手形に手を合わせよ。さすれば扉は開かれん。この神殿と扉は地脈の合流点を守るものなり。」

 と書いてある。どうやらここから地脈の合流点へ行けるようだ。

 だが、周辺を見ると参拝して感極まっている信者、女神像を見張っていると思しき僧侶など、そこそこの人数がいた。今扉を開ける訳にはいかない。時間も17時近くなり薄暗くなり始めたので、僧侶から神殿から出るようにと各々促されていた。素直に従って階段を下りる。


 神殿の運営状況を踏まえて、夜間に侵入し、地脈の集合点へ行くことに決めた。

 そうと決めたら晩飯だ。

 人々の一団から離れているとは言え、新鮮な食材を使って調理すると目立つし、時間も惜しいので弁当にする。豚肉の香草焼きがメインで温野菜の付け合わせ、チーズ、丸白パン、ラズベリーだ。夜間に行動するため、飲み物は水だ。

 一通り食事をとって、腹がこなれた後、馬車に入りベッドを出して仮眠し夜に備えることにした。


 23時に目が覚める。辺りは真っ暗で、大気汚染の無い事も相まって、星々が綺麗だ。少々感動する。明かりは月明かりのみだ。周りを見ても動いている人々は誰もいない。

 二人は各々認識阻害と気配遮断、夜目の魔法をかける。夜目の魔法の効果は覿面で、暗視装置をかけたように、はっきりと見える。すぐさま神殿へと向かう。階段の入り口は封鎖されているとは言え、木製のコーンのようなものにロープが張られているだけだったので、簡単に跨いで侵入した。最上階の建物を目指す。

 最上階に着き、建物の中に入る。女神像の台座に近づき、宏は右手の手形に、俊充は左手の手形に手を合わせた。扉が開く。中はほんのり光っていて、部屋の中心部に縦穴とそれに沿う形の螺旋階段があった。光は縦穴の底から発しているようだ。

 螺旋階段を下りて底に着くと、大広間があり、その中心に光と闇が陰陽印のような形で渦巻いていて、光が明滅している。その渦には四方八方からの光が合流している。

「これが地脈の合流点か。光の渦に混じっている闇が穢れのようだな。」

「そうだね。早速浄化の手で触れて穢れを浄化してしまおう。」

 二人が同時に手を触れると、闇の部分が霧散するかのように消滅した。渦の光量が高まる。

「ここまで光量が上がると目に来るな。まあこれで1か所目の浄化が完了したということか。」

「でも残り3か所。まだまだ先は長いね。」

「そう言えば、出入り口の扉は開いたままだったよな。あまり長居するのも不味い。さっさと退散することにしよう。」

 すぐさま螺旋階段を上り、出口から出る。と同時に扉が閉まる。

 目を凝らしてみたが、周りには誰もいなかった。

「良かった。気づかれていないようだね。」

「まだ油断はできないぞ。馬車に戻るまでがお仕事だ。」

 階段から降りつつも、周囲を警戒する。降り切った階段入り口の周囲を見ても誰もいない。時間は1時だ。流石に皆寝静まっているのだろう。

 馬車に無事戻ることが出来た。すぐさまベッドの準備をして腰掛ける。

「急いで事を成したから、身体的にも精神的にも疲れたよ。」

「同感だ。浄化魔法で体を綺麗にしたら、さっさと寝よう。明日は…いやもう今日か。敢えて早起きする必要は無いな。少し遅くまで寝て居よう。」

 横になり目を閉じる。すぐさま意識が闇の中へ沈んでゆく。

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