よん。 たこ焼き機はもちろん、
相変わらずのゆるゆる話です。
ちょっとでも笑っていただければ本望です。
「たこ焼き、食べたいなあ」
「なにをいきなり?」
「なんか、こう、無性にたこ焼き食べたなるときってない?」
「あるわけない」
「えー……」
「あのねえ。たこ焼きっておやつでしょ?滅多に食べないおやつを無性になんて食べたくなるわけないじゃない」
「えーっ?たこ焼きってしょっちゅう食うもんやろ?そこらじゅうにふつーに売ってるし」
「はあ?なにそれ。それって関西に限ってのことでしょう?こちらに来てからたこ焼きを売っている屋台とか見たことある?」
「……はっ?!そういやないかも……」
「ないかもじゃないわよ、ないのよ」
「あー……せやからなんや無性に食べたなったんやわ」
「自分が思っているよりもあんまり食べたいとか思ってないんじゃないの?」
「なんやて?そないなわけないやん。ちゃーんと食べたいって」
「うそ。だって、こっちに来てからどのくらい経った?私と知り合って、ずっと一緒にいるけれど、タコ焼き食べたいだなんて初めて聞いた気がするし」
「そらぁ……実家に行ったときに食べてるからやない?たこパ、ええで」
「たこぱ?たすぽの親戚?」
「なわけあるかいな!なにゆうてんねん、ほんまに……」
「いやあねぇ、冗談に決まってるでしょ。知ってるわよ、タコ焼きパーティの略ってことくらい」
「冗談かいな!うわ、うわ、ちょー貴重!?自分、冗談いうんや」
「あのねえ、私だって冗談くらい普通に言いますけど」
「それこそうそやわ。自分、俺と付き合ってから俺がぼけかましても突っ込んでも綺麗にスルーしてたやん。冗談とか、苦手なんやって思てたし」
「なんでそうなるの?私があなたのぼけとか突っ込みとかに付き合わないのはどうしていいかわからないからで、冗談がわからないからじゃないし」
「えー、そうなん?なんや俺、めっちゃ損してる気になってきた」
「意味わかんない。どうして私が冗談を言うってわかっただけで損してるとかになるのかなあ」
「そらあ、なんていうんですか?冗談言えるんやったら二人で言い合ったほうが楽しいやん?俺のボケや突込みがわからんのは寂しいけど、せやけど自分の冗談とかで楽しめるんやったら二人で楽しみたいやん。二人でいるときは二人で笑いあってたいやん?一人でぼけて突っ込んで、一人であほみたいに冗談ゆうてるより、二人でおんなじ冗談で笑いあえたらええやん」
「……なにこれ、なんか、恥ずかしい」
「えええっ!?どこに恥ずかしい要素あった?」
「要素だらけなんだけど、どうしてわかんないかなあ」
「ないないないって!」
「あー……もうっ!いいから!ええっと、そ、そうだ、たこパはどうするの?」
「なんやねんなもう、そのあからさまな話題変え。まあのせられたるけどやあ。たこパな、たこパ。やりたいなあ。今からでも材料こうてきて、やろか」
「材料買ってくるの?めんどくさいなあ」
「なにゆうてんねんな。材料選びは大切やで。それに一度決めたらやっとかんと絶対後から後悔するし」
「そういう後悔は違う話題の時にして。どうしてたこパごときでそんな深刻な話みたいになってるんだか」
「たこパごときっ!?なにゆうてんねんな!たこパはごときなんてもんやないし!」
「……は?」
「あんな?実家とかやったら、たこパとか普通に週一でやるから!昼から初めて晩飯までやりきるし!ビールも旨いし、具かてたこだけやのうて豚キムチとかエビマヨとか、バリエーション豊かにできるし!」
「は、あ」
「下手したらおにぎりと味噌汁つくで?」
「はあ?それはやりすぎでしょ」
「ちゃうてちゃうって!マジいけるって!前にお好み(焼き)に味噌汁とご飯つくゆうたやん」
「あー、そういってたような」
「ゆうたって!ちなみにやな、焼きそばにもつくで?」
「は?何で焼きそばにご飯とみそ汁?」
「ふつーやて!」
「普通じゃないって」
「いやいや、うちの実家あたりはふつーやし!」
「それは……そこだけの文化でしょ」
「う。ま、まあこっちのほうはちゃうかもやけど」
「違うわよ」
「ばっさりやな……」
「ほらほら落ち込まない。材料買いに行くんでしょ?……って、その前にたこ焼き機も買うんだよね?」
「はあ?なにゆうてはりますのん?たこ焼き機ってあるに決まってるやん」
「え。いやいやいやいや、決まってないって。普通の家にはないからね。……というか、やっぱり持ってるんだ……」
「そらそうや。持ってるに決まってるやん。ちなみに2台持ってるで。電気用とコンロ用やね」
「ええっ。なにそれ。やかん持ってなかったくせに、たこ焼き機2台っておかしくない?」
「やかんの代わりは鍋で賄えるけど、たこ焼き機の代わりのもんってないやん」
「……なにそれ。なんとなく納得できる自分がいますごく嫌なんですけれど。でもあれだよね、この前ツイッタ○でたこ焼き機の話題をしてたんだけど、関西の人って『他の家は知りませんがうちにはありますよ』っていうんでしょ」
「あー、うん。そうかも。俺かて聞かれたらうざいなあとか思いながら『よそは知りませんけど、うっとこには二台ありますよ』って答えると思う」
「どうしていちいち『他は知らない』とかつけるのかな」
「あんな。よう考えてみ?きっとどこでもあるやつをいちいち持ってるかどうか普通きくか?きかんやろ?ってことは、もしかしてそこだけは持ってはれへんかもしれへんっていう微かな期待と絶対もってやるやろっていう傲慢な思い込みからあほな質問かましてるわけやん。その答えやねんから『よそは知らんけど』ってなるわけ」
「ほー、なるほど」
「あんなあ、ほんま、勘弁して」
「で、買いに行くの、行かないの?」
「行く行く行く行く、行きますから!」
「うん、じゃあ、ほら。寒いからマフラー」
「……ありがと。相変わらず誤魔化すん、上手いなあ」