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不思議な留学 ー留学先のオウゴウヌ王国って世界地図にないんだけどー  作者: U.X.
第6章 新たな出会い、そして強化
93/94

第93話 フランクリン軍事大臣とレオ近衛師団長の会話 ー帰りの車中にてー

話は少しさかのぼって、練兵場から王城への帰り道だった。

 

レオ近衛師団長は、フランクリン軍事大臣の車に乗車して、王城に戻った。

 

 

 

フランクリン軍事大臣の車には、後部座席はレオ近衛師団長とフランクリン軍事大臣が乗車した。

 

助手席にはキース軍事次官、運転は軍事大臣の秘書が担った。

 

 

 

あ、内閣メンバ全員に自動車のセダンタイプが配備されており、内閣メンバの秘書の一人は自動車教習を受けるのが必須となっている。

 

つまり、オリビア第三王女が自動車の運転ができるのは、彼女がジョージ宰相の秘書であるためだ。

 

 

 

 

 

その車の中、レオ近衛師団長は横に座ったフランクリン軍事大臣に頭を下げた。

 

「フランクリン・クーパー軍事大臣閣下、、、

 

 今回は、我が娘、ドーラの分隊のために、

 物資を入手いただきありがとうございました。

 (第87話)

 

 改めてお礼を申し上げます。」

 

 

 

そして助手席に座ったキース軍事次官にも声をかけた。

 

「キース・ランバート軍事次官殿、、、

 

 今回は骨を折っていただき、ありがとうございました。」

 

 

 

 

 

フランクリン軍事大臣は笑顔で返した。

 

「ワスイ帝国の脅威が迫っている中、軍事力の強化は当然のことじゃないか。。。

 

 そんな遠慮はいらないよ。。。」

 

 

 

キース軍事次官も笑顔で返した。

 

「平時において背広組の仕事は、

 戦時に備えた軍事力の整備ですから。。。」

 

 

 

フランクリン軍事大臣は笑顔でレオ近衛師団長に語った。

 

「戦時において、レオ近衛師団長、君が総司令官として活躍できるよう、

 平時に軍備を整えるのが、私の仕事さ。」

 

 

 

 

 

補足すると、オウゴウヌ王国軍の組織上、トップは軍事大臣、次は軍事次官である。

 

レオ近衛師団長は、その軍事次官の下である。

 

ま、レオ近衛師団長の同格として、クラリス参謀総長になるのであるが。。。

 

 

 

一方、近衛師団長は平時においても女王直轄となる。

 

アン女王から直接指示があれば、その指示に従わなければならない。

 

すなわち、レオ近衛師団長はフランクリン軍事大臣の部下であるが、純粋な部下でもない。

 

 

 

しかも、戦時において近衛師団長は、オウゴウヌ王国軍総司令官となり、オウゴウヌ王国軍すべてが女王直轄となる。

 (第39話)

 

つまり、戦時においては、近衛師団長は軍事大臣より上になる。

 

戦時においても行政のトップは宰相である。

 

しかし総司令官となった近衛師団長は、行政の上では宰相の次の位置となる。

 

 

 

そう、近衛師団長と軍事大臣との間は極めて微妙な関係にある。

 

 

 

そして、フランクリン軍事大臣とキース軍事次官の意見は正しい。

 

軍事大臣と軍事次官は平時において軍備を整えるのが仕事なのだ。

 

そして戦時になれば、総司令官になった近衛師団長に、軍事大臣は全てを委ねなければならないのだ。

 

 

 

 

 

フランクリン軍事大臣は遠くを見るようにつぶやいた。

 

「それにしてもあと1年でドーラ殿下は日本に渡る。

 

 次の近衛師団長が内定するのがその1年後だから、

 2年後に次の近衛師団長が内定するのか。。。」

 

 

 

レオ近衛師団長も遠くを見るようにつぶやいた。

 

「ええ、、、早いものです。。。

 

 エリーゼ分隊長(=主人公修司の母)が日本に渡り、

 私が近衛師団長になれと言われて、

 もう28年になります。。。」

 

 

 

フランクリン軍事大臣は遠くを見つめたまま、鼻先でふっと笑った。

 

「その1年後、つまり27年前、

 私はまだ若くて、軍事省から宰相官邸に出向していた。

 

 当時の宰相ブライズ・ヨーク閣下から、

 突然、個室に呼ばれた。

 

 何事かと思い、個室に入ると、

 現宰相のジョージ・ロビンソンと、当時の第三王女のソフィア殿下と、

 君が待っていた。。。

 

 ジョージから、

  『次の軍事大臣になってくれ』

 と言われた時は驚いた。。。」

 

 

 

レオ近衛師団長は、横に座っているフランクリン軍事大臣に顔を向けて語った。

 

「懐かしいですな。。。

 

 あの時は近衛師団長に内定していたことは告げず、、、

 

 私は軍を退役したことにして、

 宰相官邸で秘書をしておりました。。。」

 

 

 

 

 

何度も言うが、近衛師団長と軍事大臣との間は極めて微妙な関係にある。

 

だからこそ、軍事大臣を慎重に選ぶ必要がある。

 

 

 

レオ近衛師団長は28年前、次期近衛師団長に内定した後、軍を退役したと偽って、宰相官邸で秘書をしていたのだ。

 

そして、すでに次期宰相に内定していたジョージ・ロビンソン氏と、ソフィア叔母さんと共に、軍事省から宰相官邸に出向していた若手官僚を観察し、フランクリン・クーパー氏を選んだという訳だ。

 

ちなみに、軍事大臣が一番最後に決まる内閣ポストである。

 

 

 

 

 

フランクリン軍事大臣も、横に座っていたレオ近衛師団長に笑顔を向けて語り掛けた。

 

「その1年後、つまり26年前、アン女王陛下が即位し、

 その即位式でアン女王陛下と君が結婚式を挙げた。」

 

 

 

補足すると、オウゴウヌ王国では女王の即位式と結婚式を同時に行う。

 

準備に何年もかけて盛大に祝うのだそうだ。

 

 

 

 

 

レオ近衛師団長はフランクリン軍事大臣に顔を向けたまま、笑顔で語った。

 

「その結婚式の直後、

 アンから次期元老院議長と、次期内閣メンバが発表され、、、

 

 フランクリン・クーバー軍事大臣閣下は壇上に上られましたな。。。」

 

 

 

フランクリン軍事大臣は前を向き、遠くを見るような目でつぶやいた。

 

「懐かしい。。。」

 

 

 

フランクリン軍事大臣は再び、横に座るレオ近衛師団長に顔を向け、語り掛けた。

 

「それからずっと、レオ近衛師団長が控えめでいてくれて助かったよ。。。」

 

 

 

レオ近衛師団長は笑って答えた。

 

「あはは。。。

 

 いやー、、、

 

 前の近衛師団長、ダグラス義父上から、

 それはそれは、きつい指導を受けましたから。。。

 

  『近衛師団長は脇に控えていろ!』

 

 ってね。。。」

 

 

 

 

 

何度も言うが、近衛師団長と軍事大臣との間は極めて微妙な関係にある。

 

 

 

そのため、オウゴウヌ王国において、


 『近衛師団長は政治には口を出さない』

 

という不文律がある。

 

 

 

それを歴代の近衛師団長は固く守っている。

 

 

 

近衛師団長が下手に政治的な発言をすると、余計な政治的な混乱を引き起こしかねないためだ。

 

 

 

なぜなら近衛師団長は、女王の夫で、戦時には全オウゴウヌ王国軍の総司令官になるのだ。

 

そんな大きな力を持つ近衛師団長が、政治的な発言をすることはタブーなのだ。

 

 

 

 

 

レオ近衛師団長は本当は陽気でおしゃべりだ。

 

しかし、上位貴族との晩餐会では微笑むだけのことが多い。

(第37話)

 

それはこのためである。

 

 

 

 

 

フランクリン軍事大臣は再び前を向くと、ため息をつき、少し深刻な表情でつぶやいた。

 

「それにしても、、、

 

 私の任期中に、戦争の危機が訪れるとはな。。。」

 

 

 

フランクリン軍事大臣も、助手席に座るキース軍事次官も、前の月の国防秘密会議に出席していた。

(第59話)

 

約200年前の戦争から、このオウゴウヌ王国は他国との大きな戦闘は行っていない。

(第27話)

 

ワスイ帝国の脅威が迫っている中、軍備の強化の責任を、フランクリン軍事大臣は担っていた。

 

 

 

 

 

レオ近衛師団長も前を向き、ため息をつき、少し深刻な表情でつぶやいた。

 

「全くです。。。

 

 私は、

  『ずっと平和で、総司令官になるときなどない』

 と思っておりました。。。」

 

 

 

 

 

フランクリン軍事大臣は再びため息をつき、横に座っているレオ近衛師団長に顔を向け、問うた。

 

「軍備の方は、私の方がやるが。。。

 

 どう?

 

 用兵や作戦面では進んでいるかね?」

 

 

 

レオ近衛師団長は苦笑いを浮かべ、横に座っているフランクリン軍事大臣に顔を向け、答えた。

 

「それはクラリスの管轄です。

 

 私はクラリスを信頼しています。」

 

 

 

 

 

レオ近衛師団長は、軍備はフランクリン軍事大臣に任せ、作戦立案はクラリス参謀総長に任せていた。

 

 

 

いや、任せざるを得なかった。

 

なぜなら、政治的に近衛師団長は微妙な位置にいるからだ。

 

 

 

本当はレオ近衛師団長自身が前面に出て、軍備拡張や作戦計画を行いたかった。

 

だが、それを下手に行えば、政治が乱れたり、軍の規律が乱れる恐れがあった。

 

 

 

そう、ワスイ帝国との戦いの前に、国内が乱れる恐れがあったからだ。

 

 

 

今、レオ近衛師団長が優先すべきことは、自分が前面に出るよりも、フランクリン軍事大臣とクラリス参謀総長のサポートに回ることだった。

 

 

 

 

 

レオ近衛師団長は、これまで以上に、慎重な言動が求められていた。



 

と言って、何もしないわけにもいかない。

 

なぜなら、ワスイ帝国の脅威が迫っていたのだから。。。



 

何もしていなければ、いざと言う時に、兵士達がレオ近衛師団長の指示に従わない恐れがある。。。


難しい線引きをレオ近衛師団長には求められていた。

 

 


それがレオ近衛師団長には歯がゆかった。

 

そして、誰にも言えず、一人で悩んでいた。

次話は2026/5/10 0時に更新予定です。

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