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第141話 シャーロット第二王女の日常

余の名はシャーロット・オウゴウヌ。

 

オウゴウヌ王国の第二王女にして、王太子である。

 

まず、第140話で余が『暴走した』と言われたことに反論したいと思う。

 

 

 

まあ、余も幼いころ、母上・アン女王陛下が、どうして王家の権威に拘るのか、分からなかった。

 

でも、余が18歳になり立太子して、しばらく経った後、その理由が分かった。

 

 

 

第35話で述べたように、このオウゴウヌ王国は貴族達の盟主として成立した経緯がある。

 

よって、女王と言えど、全てのことに独断専行が許される訳ではなく、重要事項は元老院での議決が必要だ。

 

つまり、

 『元老院で女王の意見を通すには、

  女王に力や権威が無ければ何もできない』

のだ。

 

 

 

特に、ワスイ帝国の脅威が迫っている今、多くの補正予算を元老院で通さなくてはならない。

 

そう、今は『女王の力と権威が最も必要なとき』なのだ。

 

 

 

そのためには、女王の力と権威を、上位貴族に示す必要がある。

 

ドーラ姉上には大変だが、毎月、地方に行って、有名な食材と酒を買い付け、上位貴族に振る舞い、我がオウゴウヌ王家の力と権威を示さねばならぬのだ。

(第140話)

 

これを『暴走』と言われるのは、心外である!

 

 

 

 

 

それにしても、、、最近のドーラ姉上を見ていると、、、

修司殿が来てから、楽しそうだ。。。

 

毎日が充実しているようだ。。。

 

 

 

ドーラ姉上の分隊が、上位貴族の軍事教練に大幅に遅刻した時はあきれた。

(第74話)

 

聞けば、ドーラ姉上の分隊は騎兵連隊隷下なのに、騎乗できないメンバが少なくない。

 

いわば、ドーラ姉上の分隊は、騎兵連隊の落ちこぼれ集団だったのだ。。。

 

 

 

だが、修司殿が来てから、ドーラ姉上の分隊は変わった。。。

 

父上であるレオ・オウゴウヌ近衛師団長と、クラリス・イング参謀総長は、ドーラ姉上の分隊を注視しているそうだ。。。

(第60話)

 

国防会議で、この二人とは同席することが多く、話してくれた。。。

 

 

 

 

 

妹のオリビアはジョージ・ロビンソン宰相によれば、若手有望官僚である、ブリトニー・ヨークとクリスティアナ・ワーシントンとディーン・ウエストウイックと仲が良いようだ。

 

ま、オリビア曰く、この3人はオリビアに対して遠慮がないそうだが。。。

(第84話)

 

だが、遠慮なく物が話せる同年代の同僚がいると言うのは、良いことだと思う。。。

 

 

 

 

 

かくいう余には、ドーラ姉上やオリビアのように、同じ年代あるいは若い同僚というものはいない。

 

全て年上である。

 

ま、余の部下でなく、母・アン女王陛下の部下である。

 

皆、私より20歳以上年上である。

 

余は18歳の時に立太子したが、それから同じ年代あるいは若い部下というものは持ったことはない。

 

 

 

まあ、これは仕方がない。

 

これからドーラ姉上とオリビアと共に、次期元老院議長、次期宰相、次期近衛師団長を決め、余を支えるスタッフを決める最中なのだから。。。

(第39話)

 

 

 

現状、余の部下と言うと、秘書ぐらいしかいない。

 

ただし、秘書もすべて余より年上である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今、朝の午前8時だ。

 

そのきっかり午前8時にドアをノックする音がして、秘書がドアを開けた。

 

そして秘書は告げるのだ。

 

「シャーロット王太子殿下、仕事に参りましょう。」

 

 

 

そう、朝8時、余の王太子として仕事が始まる。

 

余は個室から、秘書と共に執務室に移動する。

 

と言っても、同じ宮殿の中であるが。。。

 

 

 

余の執務室はとても広い。

 

大臣や参謀総長の執務室よりも広い。

(第59話、第106話)

 

 

 

まず、執務室の入口には最大20名が収容可能な来客用の待合室がある。

 

 

 

その待合室の奥に秘書室があり、最大20名が勤務可能だ。

 

ま、余の秘書は現在は10名足らずであるが。。。

 

 

 

その秘書室を抜けると、最大50名が収容可能な大会議室がある。

 

 

 

その会議室を抜けて、一番奥に、余が執務を行うスペースがある。

 

そのスペースには余が執務を行う大きな机とオフィスチェアがある。

 

また、会議室とは別に、数人の面会用の長机と革張りソファもある。

 

 

 

 

 

今日も余は秘書に連れられ、一番奥の執務スペースの机に座り、仕事を始めた。

 

机の上には余が処理すべき書類が山のように積まれている。

 

その書類を見て、いつもため息をつく。

 

今日もこの書類の山との戦いである。

 

 

 

 

 

さて、先ほど、余の秘書は現在、10名足らずと言った。

 

この中で、一番長く秘書を務めているのは、余が立太子したときに配属された秘書3名である。

 

この3人の秘書は余より10歳ほど年上だ。

 

3人の秘書が余の秘書となった時、彼女達は20歳台後半であった。

 

そもそも、母上・アン女王陛下の秘書も、王太子である余の秘書も、そう簡単になれるものではない。

 

 

 

彼女達は、前は宰相官邸の秘書であった。

 

宰相から推薦され、母上・アン女王陛下の秘書や、王太子である余の秘書になることができるのだ。

 

いわば、選ばれた者達である。

 

 

 

実は、本来、宰相官邸の秘書も、最初は各省庁の大臣の秘書を経る必要がある。

 

大臣の推薦が無ければ、宰相官邸の秘書にはなれぬ。

 

 

 

オリビアが宰相官邸で秘書をしているが、あれは上位貴族あるいは王家の特別枠だ。

 

ま、だから、オリビアが次期宰相を見定めていることが、一部若手官僚に見抜かれたようだ。

(第39話)

 

でも、それくらい見抜けぬようでは、次期宰相として失格だ。

 

 

 

話を戻すと、本来宰相官邸の秘書になるのも、選ばれた者しかなれぬ。

 

さらに、その宰相官邸の秘書から、選りすぐられた者しか、母上・アン女王陛下の秘書や、王太子である余の秘書になることできぬ。




つまり、母上・アン女王陛下の秘書や、王太子である余の秘書になることができるのは、

 『選ばれた者の中から、更に選りすぐられた者』

だけなのだ。


 

 

それを20歳台後半の若さで成し遂げた者が、余の最初の秘書の3名となったのだ。

 

これだけでも、余の最初の秘書3名の能力の高さがわかると言うものであろう?

 

 

 

 

 

そう、女王陛下の秘書も、余である王太子の秘書も狭き門であるのだ。

 

よって、女王陛下の秘書も王太子の秘書も、次官並みの給与が支給されている。

 

 

 

 

ああ、母上・アン女王陛下の秘書も、余・王太子の秘書も全員女性である。

 

別に女性に限るとのルールがある訳ではない。

 

ただ、母上・アン女王陛下も、余も女性だから、同じ女性を秘書にしているだけだ。

 

 

 

実際、宰相官邸や大臣の秘書には、男性もいる。

 

 

 

 

 

さて、余が18歳で立太子し、まもなく5年が経つ。

 

余の最初の秘書3名もその間、結婚・出産し、母親となっている。

 

 

 

出産の折には、産休を与えねばならぬ。

 

その折に、余の秘書は逐次増員した。

 

 

 

また、昨年、余は大学を卒業した。

 

王太子の仕事が本格化し、秘書をさらに増員した。

 

 

 

今、余の秘書は10名足らずである。

 

5年以内に余は即位するが、そうなれば秘書をもっと増やさねばならぬ。

 

実際、母上・アン女王陛下の秘書は現在20名弱である。

 

そうでなければ、女王の仕事を回すことができぬからだ。

 

 

 

 

 

 

え?

 

なぜ、そんなに秘書がいるのかって?

 

 

 

まあ、女王と王太子、そして大臣の秘書は24時間体制の3交代制なのだ。

 

女王と王太子の秘書は、午前6時半から午後3時半、午後2時半から午後11時半、午後10時半から翌朝7時半の3交代制である。

 

 

 

 

 

え?

 

なぜ、深夜勤務の秘書がいるのかって?

 

 

 

まあ、災害はいつ起こるのか分からないからだ。

 

災害が起きた時のために、女王と余の秘書は宮殿の執務室の秘書スペースに待機している。

 

ま、基本は一人で待機しているのであるが。。。

 

 

 

ただ、深夜勤務の秘書は待機していて何もしないわけではない。

 

彼女は余の翌日のスケジュールを組むのだ。

 

余も母上も、数か月先まで予定が埋まっている。

 

そこを調整しなくてはならなないのだ。

 

 

 

先ほど、大臣の秘書も3交代制といったが、その秘書達も宰相官邸の大臣の個室と、官庁を行き来する。

 

そして、女王、王太子、大臣の時間調整を行うのだ。

 

 

 

またスケジュールを組むためには、余が翌日に目を通す全ての書類を塾特使、直近の会議の予定も頭に入れねばならぬ。

 

特に法案や陳情書は絶対に詳細まで読み、概要をまとめ、優先度を決め、スケジュールを組むのだ。

 

そして朝、午前6時半から7時半の間に、次のシフト、つまり午前6時半から午後3時半の秘書に、その内容を引き継ぐのだ。

 

 

 

 

 

午前6時半から午後3時半のシフトの秘書が、最も忙しい。

 

だから、もっとも秘書の数が多い。

 

 

 

深夜に整理された法案や陳情書のリストの概要と優先度から、余がざっと理解すると、法案や陳情書を手早く読み、余が秘書にざっと指示する。

 

その指示に従って、秘書が詳細を実施するのだ。

 

 

 

当然、余は法案や陳情書を手早く、かつ正確に読まねばならぬ。

 

そして手早く秘書に指示せねばならぬ。

 

これが難しい。。。

 

 

 

しかも、母上であるアン女王陛下と共に、有力貴族や内閣メンバとの会議も組まれており、1分単位のスケジュールなのだ。

 

それを秘書は管理しているのだ。

 

 

 

 

 

次に、午前6時半から午後3時半のシフトの秘書は、午後2時半から午後3時半の間に、午後2時半から午後11時半の秘書に引継ぎを行う。

 

このシフトの秘書が2番目に多い。

 

 

 

というのも、午前でこなしきれなかった業務を午後9時までに終わらせなくてはならぬ。

 

しかも、余は、母上であるアン女王陛下と共に、夕食は、有力貴族や内閣メンバと会食をとることが多い。

 

 

 

やっぱり、1分単位のスケジュールをこなさねばならぬ。

 

それをサポートする秘書は大変であろう。

 

 

 

女王、王太子、大臣の秘書達は、24時間、365日対応可能でなくてはならぬ。


よって、週末も誰かは働かねばならぬ。


だが、秘書達も休日は必要だ。


また、いつまでも深夜勤務や週末勤務をさせるわけにもいかぬ。


余の秘書達も家庭を持っているからだ。


つまり、シフトの交代だって必要だ。




まだ余が立太子したばかりの頃で、大学に通っていた頃は、基本は平日の午前6時半から午後3時半のみのシフトで秘書達も対応できた。


しかし、余は昨年大学を卒業した。


王太子の仕事が本格的に始まり、秘書達も24時間、365日の対応が必要になった。


よって、現在、余の秘書は10名足らずとなっている。



5年以内に余は即位する予定であるから、そうなれば、もっと秘書が必要になる。


分かってもらえたであろうか?






ああ、余も王太子となって、忙しい毎日である。


でも、どんなにかかっても午後10時、どんなに遅くても午後11時には、秘書が余の仕事を終わらせる。

 

実際、風呂に入って、午後12時には寝ないと、翌朝6時に起きるのが辛い。

 

 

 

そして、余の翌日の仕事の効率が落ちるので、強制的に午後11時には仕事を終わらせるのだ。


秘書達は余の体調も管理してくれる。


ありがたいと思っている。

 

 

 

  


だが、立太子して5年、大学卒業後に本格的に王太子の仕事を始めて1年、秘書にはよく叱られる。

 

特に、余の最初の秘書の3人には、よく叱られる。

 

やれ

 『法案や陳情書を読む時間が長すぎます!』

だの、逆に

 『法案や陳情書をちゃんと読んでください!』

だのと言われる。

 

 

 

有力貴族や内閣メンバとの会議や会食では、秘書には発言権はないが、余と同席する。

 

そして会議や会食が終わると、

 『王太子殿下、何を言ったのかわかっていたのですか!』

と余の発言を叱る。

 

逆に余が何も言わなければ言わないで、

 『王太子御出席の意味があるのですか!』

と叱られるのだ。

 

 

 

余の秘書達よ。。。


もうちょっと優しくしてほしい。。。






だが、秘書から叱られる余を見て、母上・アン女王は苦笑いを浮かべ、余に言い聞かすのだ。

 

「シャーロット、、、

 

 女王や王太子は秘書に叱られて成長するものだ。。。」

 

 

 

そして、こう続けるのだ。

 

「余も、そなたと同じ、王太子であった頃、

 

 そして即位したばかりの頃、

 秘書にはよく叱られた。。。

 

 そなたの祖母、ブリジット母上もそう言っていた。。。」

 

 

 

そういえば、まだ余が幼かった頃、つまり、母上・アン女王陛下が若かった頃、秘書に叱られる母上をよく見た。

 

 

 

 

 

母上・アン女王陛下は、さらにこう続けた。

 

「同時に秘書は、女王にとって、

 行政や政治の上で、妹(=ソフィア・デービス)以外の、

 もう一つの相談相手でもある。」

 

 

 

そう、ドーラ姉上はあと1年足らずで日本に行ってしまう。

 

その後は、余の妹、オリビアが相談相手になる。

 

オリビアの結婚相手が未来の元老院議長であり、オリビアが未来の宰相を決める。

 

余の妹、オリビアは余のスタッフの鍵となるのだ。

(第39話)

 

 

 

実際、母上・アン女王陛下は、ソフィア叔母上をたまに宮殿に呼び、二人で相談することが多い。

 

母上・アン女王陛下でも、オスカー・デービス元老院議長閣下や、ジョージ・ロビンソン宰相閣下に相談しにくいことはあるのだ。


いや、夫、レオ・オウゴウヌ近衛師団長、つまり父上にも相談しにくいことはあるのだ。

 

そんなときは母上・アン女王陛下は、ソフィア叔母上を宮殿に呼ぶ。

 

 

 

きっと、余が即位したら、余の妹、オリビアも、そんなときの余の相談相手になるのであろう。。。

 

 

 

 

 

そして、オリビア以外の相談相手は、余の秘書達となるのだ。

 

なぜなら、余の秘書達は先ほど言ったように、選りすぐられた精鋭達であるからだ。

 

 

 

 

 

母上・アン女王陛下は、よく私に言い聞かす。

 

「特に立太子したころの秘書は、

 苦楽を長く共にする仲間であるぞ。

 

 大事にせい。」

 

 

 

実際、余が立太子した前後だった。。。


その頃、母上・アン女王が立太子したときの秘書数名が定年退職した。

 

母上・アン女王は、彼女達の退職を惜しみ、定年を延長しようとした。

 

だが、彼女達は涙を浮かべ、「女王が法を曲げてはなりませぬ」と固辞した。

 

 

 

母上・アン女王も涙ながらに別れを告げた。

 

「余が王太子であったころから、

 ずっと秘書として余を支えてくれて、、、

 

 礼を申す。。。

 

 ありがとう。。。」

 

 

 

 

 

きっと、余の最初の秘書3人も、苦楽を共にする仲間になるのだろう。。。

 

 

 

あ、余の最初の秘書のうちの一人が、余の執務スペースにやって来た。

 

秘書は笑顔で余に告げた。

 

「王太子殿下、会議のお時間です。」

 

 

 

余は机の上の時計を見て、「そうか」と答え、席を立とうとした。

 

 

 

だが、秘書は余の机の上の書類を見て、余を罵った。

 

「王太子殿下!

 

 なんですか!

 

 ちっとも作業が進んでないじゃないですか!

 

 今日も忙しいんだから、さっさと書類を処理してください!」

 

 

 

余は小さな声で「はい」と答えた。

 

 

 

余の秘書達よ。。。


やっぱり、、、


もう少し優しくしてくれぬか?

 

 

 

余は歩きながら書類を読み、会議室へ向かった。

次話は2026/7/13 0時に更新予定です。

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