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白拍子ですが何か?  作者: ナウ
三章・平家全盛
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中国の歴史書と邪馬台国

仁安3年[1168年]2月、平清盛が出家

六条天皇が僅か5歳で退位、一方後白河上皇と滋子の子である8歳の憲仁のりひと親王を即位させた

第80代・高倉たかくら天皇である

これにより滋子は皇太后に立てられた



「滋子様が皇太后でございまするぞ!!」


何やら嬉しそうに言う鈴

まぁ、確かに知っている身近な人間が地位ある立場に立てば興奮もしよう


「まぁのぅ…」


憲仁即位と滋子皇太后の話を聞いた磯は浮かない顔をした


「嬉しくはないのですか?、磯様」


「いや、めでたいが…のぅ」


「のぅ…何でございますか?」


「会うのも制限されてしまっておいそれと会いにもいけなくなる」


「それはまぁ…そうでございますね」


「それに天皇即位とは言っても所詮は後白河の傀儡だ」


「それはまぁ…」


「大してめでたくもないのだよ」


「まぁ…今は素直に喜ぶべきではございます」


「かのぅ」


「でございましょう」


「どう思う?、こんまい」


そう言うと静を抱きかかえる磯

そうすると静は喜ぶ

鈴も桜も特にどうという事もないが、磯が抱くと喜ぶのだ


「ほら、わろうた」


こんまい静の笑い顔に磯も思わず笑う

こんまいは相変わらずこんまい

しかしいずれは大きくなる

こんまいとは言え既に以前よりは大きい

はいはいも出来るようになったし、つかまり立ちも何とか出来るようになっている

手先も器用に物を掴めるようになってきた

しかしそういう時こそ色々危なっかしいので目を離す訳にはいかない年の頃である

すぐ口に物を入れたり、立てるといってもふらふらしているのでこけ易い

しかし最近ではもっと大きくなれば親子で旅行などをしてみたいという思いが出てきた


「早く大きくなるのだぞ」


磯のその言葉に静はきゃっきゃっと喜んだ


「そういえば最近は宋に行く者達が多いな」


「南宋でございまするな」


清盛しんせいも宋との海外貿易で更に儲ける云々言っておったしな」


「福原の地に行かれるとか何とか」


「元々あった港を利用するらしい」


「確か五泊ごとまり[五港]の一つで大輪田泊おおわだとまりと呼ばれている場所にございますな」


「よく知っているな、鈴」


「その地は飛鳥の時代の頃に僧である行基ぎょうき様が開いたとされております」


「誰だそれは?」


「畿内を中心に困窮者のために布施屋や寺院をいくつもお作りになったりした法相宗の僧にあらせられます」


「ほう」


「温泉もいくつも発見したという伝承も伝わっておりまする」


「ほう、温泉も!!」


「磯様、温泉と聞いて目の輝きが違いますな」


「温泉を発見する、即ち開場し湯に入るという事だな」


「そうでございますね」


「温泉を提供するその僧は良い僧だ」


「はぁ」


「入浴無くして人に発展は無しだ」


「そうでございますか?」


「かくいう鈴も入浴は好きではないか」


「確かに肩までざばーっと浸かれば体の疲れが一気に抜けていきまする」


「であろう」


「はい」


入浴の奨励

それ即ち磯流の極意なり

最近では磯だけではなく鈴も弟子の白拍子達も入浴を楽しみにしている

幸いにして磯には財があるので貴重な水の入手も水を沸かす人的労力もさして労せず整えられる

全身の凝りを解すには入浴と体を揉んで解すのが最適である

そして適度な食の摂取

伊勢から早く魚介類を仕入れる方法を独自に持っている磯には飢えなど無きに等しい

何より倉にはある程度の蓄えはしてある

面倒なのは強盗による略奪だが、検非違使を周囲に見回らせているので余程でなければ大丈夫である


「こんまいも入浴は好きだもののぅ」


抱っこしながらゆっくり揺らすと静はその揺れが気に入っているのか喜ぶ


「姉さん、ありがとうございます」


入浴を終えた桜はその濡れた髪を拭きながら部屋に入ってきた


「さっぱりしました」


「であろう、湯とは良いモノだ」


「ですねぇ」


櫛で髪を梳かしながら桜は答えた


「そう言えば鈴」


「何でございましょう?」


「宋とは如何なる国だ?」


「さて…海の向こうの事についてはさっぱり分かりかねます」


「かつてあった唐との関係は?」


「随分前に唐が滅亡した云々ぐらいしか知らず、さっぱりにございます」


「さっぱりとは、入浴の如きだな」


「左様でございまするな」


「気になるな宋」


「ただ…」


「うん?」


「聞いた話では唐が滅亡して直ぐに宋になった訳ではなさそうです」


「それは一体どういう事だ?」


「何やらいくつもの国が乱立した戦乱の時代があったとか」


「魏・呉・蜀の時代みたいなモノか」


「何ですか、それは?」


「三国が立って戦った時代があって三国志というらしい、本になっていて一部では日本でも輸入品として出回っている」


「はぁ」


「中華の歴史は他にも春秋戦国時代や五胡十六国時代、南北朝と呼ばれるややこしい時代があったらしいな」


「そうなのですか?、よく知っておられますな」


「怪僧の秘蔵本に書いてあった、詳しくは書かれてはいなかったが」


「信西様ですか、確かにそういった書物を持っていらしてもまったく不思議ないお方でございました」


「中華の中で長期政権だったのは周代、漢代、唐代だな」


「周とやらは知りませんが漢と唐の名前は知っております」


「漢代の昔に始皇帝なる奴がおったらしい」


「しこうていでございますか?」


「皇帝だ、始まりの皇帝、群雄割拠していた中華を統一した奴らしい」


「ははぁ、そんな方がおられたのでございまするか」


「何にしろ中華の歴史は面白いな」


「大陸の歴史は日本よりも遥かに古き時代の歴史を持っておりますからな」


「それよ、古事記や日本書紀といったお笑い歴史書では話にならぬ」


「あれがお笑い歴史書でございますか?」


「そう、何故なら邪馬台国の記述が出てこぬ」


「邪馬台国でございますか?、聞いた事がありませぬが」


「魏の書に東夷伝倭人条があってな、三国志当時の日本の状況を伝える極めて重要な書だ」


「はぁ、そんなモノがあるのでございますか」


「それによると当時の日本は中華から倭と呼ばれ、邪馬台国の女王・卑弥呼が治めていたとある」


「女王様が…でございますか?」


「そう、女王だ、そしてその書には天皇のての字も出てこない」


「書き忘れていたのでは?」


「いや、恐らくは書き忘れではないだろう」


「どういう事でございしょう?」


「当時は天皇という名前で呼ばれていなかったか、そもそも居なかったかだ」


「居なかった?」


「そう、当時はまだ天皇という存在そのものが存在していなかったという事だ」


「それはあり得ないでございましょう、この国は神の…」


「そうとも言えない、そもそも日の本や天皇と言いだしたのは聖徳太子の時代以降の事と言われているからな」


「つまりそれ以前は分からないと?」


「そう、三国志の時代…つまり今から900年以上も昔の事は分からないという事だ」


「古事記や日本書紀は…」


「編纂は時の権力者の都合が入る

都合の悪いモノは消される」


「なるほど」


その磯と鈴のやり取りをぽかんと見つめる桜

桜自体まったくの無学ではないが、中華の歴史や日本の古代史が飛び交うとちんぷんかんぷんの世界になってしまう


「え~と…」


「桜、別にお前が話に付き合う必要はない」


磯の言葉に桜は頷く


「は…は、はっは…」


「ん?」


抱いていた静が少し何か言った気がした」


「はっは、い…そ」


「んん?」


「何と、静様がお喋りになられましたな」


「はは?、いそ?、何だ?」


「母、磯・・と聞こえました!!」


「何?」


「まぁ!!」


はしゃぐ鈴と桜に押されて磯の歴史話はそこで終了した

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