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おまけ 玉織紬ちゃん(26)をどうしたいか

別サイトでアンケートやった時のおまけです。多分なろうの読者様間でも割合は一緒だと思います

「……は?」


 私はスマホの画面を二度見した。


 読者様アンケート。

 玉織紬ちゃん(26)をどうしたいか。


 一位、島流し。

 二位、籍を入れる。

 三位、ハロワにぶち込む。

 四位、ご飯を奢る。

 五位、腹パン。

 六位、ビンタ。

 七位、お布団あげる。

 八位、売り飛ばす。

 九位、イナズマ椅子。


「……愛が重いのか、雑なのか、敵意があるのか、保護欲なのか、どれか一つに統一してくれない?」


 あまりにも感情の向きが散らかっている。

 でも、しばらく眺めているうちに、私はじわじわと嫌な事実に気付いてしまった。


「これ……みんな、私のことを“危険な捨て犬”か何かだと思っていないかしら」


 島流し。

 籍を入れる。

 ハロワ。

 ご飯。

 お布団。


 どう見ても、討伐対象ではない。

 かといって、好意的な人間扱いでもない。

 ちょっと可愛いし嫌いじゃないけど、そのまま野に放つのは社会に悪いみたいな扱いだわ。


「失礼しちゃう」


 私はむっと頬を膨らませた。

 ……いや、客観的に見れば妥当かもしれないけれど。


 私はまず一位を見直した。


「島流し……」


 遠い島。

 海。

 人里離れた自然。

 定期船でしか来られない場所。

 気兼ねなく食って寝てしていられそうな静かな環境。


「……ちょっとだけ魅力的なのが腹立つわね」


 自給自足とか、魚介類とか、野生動物とか。

 そういう方向へ想像が広がりかけて、私は慌てて首を振った。

 違う、そうじゃない。

 島流しは罰なのよ。罰がちょっと住みやすそうに見えるのは、私の社会性が死んでいるだけなのだわ。


 次に二位。


「籍を入れる!? 何で!?」


 私は思わず声を裏返らせた。

 理解が追いつかない。

 こんなもの、愛とか恋とかじゃないでしょう。

 どう考えてももう俺が責任を持って飼うしかないの票じゃない。


「嫌よ、そんなの。重いわよ。私に家庭責任なんて背負わせたら家が沈むわ」    


でも、そこで少しだけ考えてしまう。


 朝起きたらご飯がある。

 怒鳴られずにご飯がある。

 冷蔵庫へチェーンが巻かれていない。

 しかも合法的にそこへ居ていい。


「……いや、駄目ね。だいぶ駄目な方向の夢だわ」


 私は目を逸らした。

 危険すぎる。

 こういうのは、心が弱っている時ほど刺さるのよね。


「これ票入れた人、恋愛感情じゃなくて保護欲でしょう。保健所から引き取る感覚で結婚を決めない方が…」


それにここ入れてくれた人多分いい人なのよね。私善人嫌いだし…お互いろくでもないことになる未来しか見えないわ


 三位。


「ハロワにぶち込む」


 私はしばらく無言になった。


「……善意としては、たぶん一番まともなのが嫌だわ」


 そうなのよ。

 結局これが、一番人として扱っている発想なのだ。

 ちゃんと働け。

 ちゃんと生きろ。

 社会へ繋がれ。


「でも、ぶち込まれるのは嫌」


 そこだけは明確だった。


 四位。


「ご飯を奢る」


 私は少しだけ和んだ。


「それは……まあ、良い人ね」


 分かっている。

 この票を入れた人は、かなり私の取り扱いを理解している。

 空腹時の私が災害で、満腹時の私が比較的おとなしいことを、本能で察しているのだわ。

 偉い。

 かなり偉い。


「一食だけで懐柔されると思われてるのは心外だけれど、でも実際かなり効くのよね……」


 悔しいけれど、正解寄りなのだわ。


 五位、六位。


「腹パン、ビンタ」


 私は遠い目になった。


「読者様の中に、朔の教育方針へ理解を示している層がいるわね……?」


 嫌な理解度だ。

 腹へ一発入ると私が条件反射で謝ることまで見抜いている感じがする。

 しかもビンタも続いている。

 “まずしばく”がそこそこ支持されているの、だいぶ終わっているでしょう。


 七位。


「お布団あげる」


 ここで私は完全に黙った。


 ご飯をくれて。

 お布団もくれる。


「……その人、かなり好きだわ」


 ぽつりと本音が漏れた。

 いや、好きってそういう意味ではなくて。

 思想が合うのよ。

 飯と布団。

 それだけで人間の幸福の半分以上は埋まるでしょうに。


「その人には、あまり怖がらせない程度に善処したいわね……」


 八位。


「売り飛ばす」


「雑!」


 私は思わず突っ込んだ。

 でも、分からなくもない。

 自分の手元で処理できない危険物を前にすると、人は誰かへ丸投げしたくなるもの。

 非常に人間らしい対応だわ。


「ただ、売られた先でも絶対に何か起こすわよね、私」


 そこは自信があった。

 極めて嫌な自信だけれど。


 そして九位。


「イナズマ椅子」


 私はスマホを見つめたまま、静かに目を閉じた。


「……いるわね。朔派の過激派が」


 票数は少ない。

 少ないけれど、確実に存在する。

 “通常のしつけでは足りない”と理解している層が。

 嫌すぎる。

 でも、何となく納得してしまうのももっと嫌だわ。


 結局、全部見終わってから、私はソファへだらしなく沈み込んだ。


「……でも、よかったわね」


 ぽつりと、自分でも意外なくらい穏やかな声が出た。


 この結果。

 私のことを、完全に捨ててはいないのだ。

 好き放題言ってるし、雑だし、腹パンだの島流しだの売却だの散々だけれど。

 それでも、“どうするか”を考えてくれている。

 面倒を見る気が、一ミリくらいはある。


「まあ……野良の珍獣としては、悪くない支持率かしらね」


 私はそう言って、ちょっとだけ嬉しそうに笑った。




感想いただけ無かった場合紬ちゃんを読者様の扶養家族にします(脅迫)

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目隠し眼帯と首枷と手枷と足枷と腕枷と口枷と獣耳枷と獣尻尾枷を着けて、枷もりもりの拘束具もりもりの身も心も戒められ縛られ封じられた獣耳美少女になりませんか? 年中無休毎日12時間睡眠な外敵なし美味しいも…
作者が責任持って面倒見てください。生みの親でしょ! 主人公は石油王に珍獣として飼われるくらいでしか人として幸福になれる道がない気がするよ。
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