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《無敵チート》で異世界無双!~猛毒茸だってドラゴンだって俺の体に傷一つ付けられない~  作者: 長尾隆生@放逐貴族・ひとりぼっち等7月発売!!
アブリルへの道

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第5話 森の恵みと無敵バーベキュー

 壊れかけの門と、腰を抜かした兵士たちを後目に、俺たちはそそくさと関所を通過した。

 背後で何やら騒いでいる声が聞こえた気もするが、振り返ることはしない。

 面倒ごとはごめんだ。


「はぁ……びっくりしました。門があんなになるなんて……」


 肩の上でサンテアが、まだ少し興奮冷めやらぬといった様子で息をつく。

 彼女も肝が据わってきたのか、先ほどまでの不安そうな表情は消えている。


『ふふん、見たか! 我の……いや、アンリヴァルトの力の前には、人間の作った門など無力よ! これぞ神の威光……ではないが、まあ良し!』


 エルラードは、結果的に威光を示せたのが嬉しいのか、上機嫌だ。

 自分の手柄のように言っているが、原因の一端はお前の余計な言動にあるんだぞ、と言ってやりたい気持ちをぐっとこらえる。


「まあ、結果オーライってやつだな。これでしばらくは面倒な検問もないだろ。アブリルまで一気に行くか!」


 俺は気を取り直して、再び街道を走り出す。

 新しい領地に入ったからか、道の様子や周りの風景も少しずつ変わってきたように感じる。

 畑の種類が違ったり、家々の作りが微妙に異なっていたり。

 そんな些細な変化も、サンテアにとっては新鮮なようで、きょろきょろと周囲を見回している。

 リュックの中のギンも、時折もぞもぞと動いては、外の匂いを嗅いでいるようだ。


 昼近くになり、太陽が真上に差し掛かる頃、街道は深い森の中へと入っていった。

 木々が鬱蒼と茂り、ひんやりとした空気が漂う。


「よし、この辺で昼飯にするか。サンテア、腹減ったろ?」

「はい! 少し……」

『我もじゃ! さっさと美味いものを用意せい!』

「へいへい」


 俺は街道から少し脇に入り、森の中の開けた場所を探す。

 手頃な広場を見つけ、サンテアを肩から降ろしてやる。


「さて、今日のメニューは何にするかな……。そうだ、ギン、お前の鼻も借りるぞ」

「きゅーん!」


 ギンはリュックから飛び出すと、早速地面の匂いを嗅ぎ始めた。


「アンリ様、私は木の実とか、食べられる草を探してきますね!」

「おう、頼む。ギン、サンテアについててやれ。危ない草とか実は教えろよ」

「きゃうん!」


 ギンは心得たとばかりに、サンテアの後をついていく。

 二人の小さな背中を見送りながら、俺はさて、と腕まくりをする。


「メインディッシュは肉だよな、やっぱり」


 俺は軽く周囲を見渡し、森の奥へと足を踏み入れる。

 無敵の体のおかげで、普通の人間なら聞き取れないような微かな物音や気配も感じ取ることができる。

 しばらく進むと、大きな木の根元で何かがガサガサと動く気配を捉えた。


「お、いたいた。今日の獲物は……でけぇ猪だな」


 そこにいたのは、牙を剥き出しにした巨大な猪だった。

 普通の猟師なら複数人で罠を仕掛けてようやく仕留められるような大物だ。

 猪も俺の存在に気づき、低い唸り声を上げて威嚇してくる。


「悪いな、今日の昼飯になってもらうぜ」


 俺は特に構えることもなく、真っ直ぐ猪に向かって歩いていく。

 怒り狂った猪が、猛烈な勢いで突進してきた。

 地面を抉る蹄の音、鋭い牙。

 まともに食らえば、鎧を着ていても無事では済まないだろう。


 しかし。


「よっと」


 俺は突進してくる猪の鼻先を、まるでボールでも扱うかのように軽く手のひらで受け止める。


 ドゴンッ!!


 衝撃は、ない。

 ただ、俺の手のひらにぶつかった猪は、その勢いのまま、綺麗に宙を舞い、数メートル先の太い木に激突して……そのまま動かなくなった。


「……ありゃ、ちょっと強く止めすぎたか? まあ、いいか」


 俺は気絶した巨大猪を軽々と担ぎ上げ、野営地へと戻る。


 広場に戻ると、サンテアとギンが既にたくさんの木の実やキノコ、山菜などを集めて待っていた。


「アンリ様、おかえりなさい! わっ、すごい! 大きな猪ですね!」

「おう。今日のメインディッシュだ」


 サンテアは目を輝かせ、ギンは猪の匂いを嗅いで興奮したように尻尾を振っている。


『ふん、まあまあの大物じゃな。しかし、仕留めるのに時間がかかりすぎじゃ。もっとこう、一瞬で、神々しく!』

「うるさいな。文句言うなら手伝えって」

『我にこのような下働きをさせようと? 不敬じゃぞ!』


 エルラードはいつもの調子だ。

 俺は巨大猪を手早く解体し、食べられる部分だけを選り分ける。

 無敵の力は、こういう作業にも地味に役立つ。

 硬い骨も腱も、まるで豆腐のように切れてしまうのだ。


 次にバーベキューの準備だ。

 手頃な太さの生木を数本、先端を尖らせて串を作る。

 かまどに火を熾し、猪肉を分厚く切って串に刺し、焚き火の上で炙り始める。


「いい匂いがしてきましたね!」

「ああ、たまらないな」


 肉の焼ける香ばしい匂いが森の中に広がる。

 サンテアが集めてきた木の実をデザート用に洗い、キノコや山菜は鍋に入れて即席のスープを作る。

 ギンは、俺の足元でおとなしく肉が焼けるのを待っている。


 やがて、猪肉がこんがりと焼きあがった。

 表面はカリッと、中はジューシーそうだ。


「よし、できたぞ! 食うぞ!」

「はい! いただきます!」

「きゃうん!」


 俺たちは焼きたての肉にかぶりつく。


「んん~~~! うまいっ!」

「はい! 噛めば噛むほど味が出て、すごく美味しいです!」


 野性味あふれる力強い肉の旨味が口の中に広がる。

 塩を軽く振っただけのシンプルな味付けが、肉本来の味を引き立てている。

 スープも、森の恵みが詰まった優しい味わいだ。


『む……むむ……まあ、悪くはない。悪くはないが、やはり都の高級料理には……』

「いいから食えって。サンテア、こいつにもちゃんと食わせろよ」

「はい! 女神様も、どうぞ!」


 サンテアはエルラードにもスープを運んでやる。


 食事中、サンテアはギンが集めたキノコの中に、毒キノコとよく似たものがあったけれど、ギンがちゃんと教えてくれた、と興奮気味に話してくれた。


「やっぱり、ギンちゃんは特別な子なんですね」

「かもな。まあ、可愛いからどっちでもいいけど」

『やはり、ただの毛玉ではなさそうじゃな……。あの鼻と勘は、そこらの魔獣とは一線を画す。あるいは、森の精霊に近い存在やもしれん』


 エルラードが珍しく真面目な考察を口にする。


「へぇ、精霊ねぇ」

「精霊さん、ですか?」

『うむ。全ての森には精霊が宿ると言われておる。特に古い森や、魔力の濃い森にはな。そして、精霊は時に獣の姿を借りて現れることもあるという……』


 エルラードの蘊蓄が始まったが、俺は肉を食うのに忙しくてあまり聞いていなかった。


 食事が終わり、焚き火の残り火で暖を取りながら、俺たちはしばしの休息を取る。

 森の中は静かで、鳥の声と風の音だけが聞こえる。


「さて、腹も膨れたし、そろそろ行くか」

「はい!」


 俺は焚き火を完全に消し、後片付けをする。

 食べきれなかった肉は、干し肉にして保存食にする。


「よし、出発だ。目指すはアブリル!」


 再びサンテアを肩に乗せ、ギンを腕に抱き、俺は森を抜けて街道へと戻る。

 腹ごなしにはちょうどいいダッシュだ。


 アブリルまで、あとどれくらいだろうか。

 美味い魚介料理を想像しながら、俺は軽快に走り出した。

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『悪徳領主の息子ですが、父の真似をしたら名君と呼ばれてしまいました』
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