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レザリアの三賢者

遂に!

父殺しの続編を始めました!

よろしくお願い致します!

 勇者アトスがその仲間たちと魔王を討った年から数えて千年前。

 まだこの大陸に国が一つしか無かったころ。

 その国の名は「レザリア」という。

 レザリアは大陸の中心で栄え、その勢力を円形状に広げてきた。

 故に、レザリアは「円の国」とも揶揄される。

 そのレザリアが栄えた理由。

 諸説あるが、最も有力な説として三人の賢者が国を導いたと言われている。


 金色に輝き、風になびく髪が民を導く象徴とされた青年「メルキオール」。

 蒼色の髪は見る者の怒りを鎮め、心のあるべきところを優しく諭したとされる壮年の「バルタザール」。

 三人の中で最も賢く、決して自分の本心を見せない。その容姿は薄気味悪く、それでいて常に影が付きまとう老人「カスパール」。


 レザリアの三賢者と呼ばれたこの者たちは、それぞれがそれぞれの考えを記した本を持ち寄り、互いに見合わせ、「良い」と思われた部分を抜粋し、それを教義とした。

 それを元に練り上げた書は「マギ」と呼ばれた。

 三人はそれをレザリアの王に献上し、レザリアはその「マギ」に記されたことを指針として繁栄していったのだ。


 レザリア王国がこの大陸随一の大国となるには、そう時間はかからなかった。


 ーーだがある日。


 三人の賢者と「マギ」は、レザリアから忽然と姿を消してしまった。

 優秀な指導者を失った大国はその地盤を失い、山が崩れるが如く衰退し、やがて滅んだ。


 三人の賢者が何故国を去ったのか。

 どこに行ってしまったのか……



 それは誰も知る由がない。


 ーー抜粋:レザリア王国の滅亡、三人の賢者の行方ーー



 ーー


「やめろ、バルタザール!!」


 黒く分厚いローブに身を包んだ老人は、皺が刻まれ、痩せ細ったその手を自分の前に突き出し、叫んでいた。


「そ、それをどうするつもりなのだ!?」

「カスパール、我々は間違っていた! こんな物を持っていても何も始まらない!」

「だからと言って、お前の一存でマギを失うわけにはいかぬぞ! 世界はマギを必要としておるのだ!」

「ふざけるな! 人々の心を支配するようなものは、もはや錬金術とは言えん!」


 老人カスパールに名を呼ばれた、壮年の男バルタザール。

 彼はベージュを基調としたローブに身を包んでいる。

 そして、その手には青い石版が握られていた。


「何を言うか! それは……賢者の石は……」

「こんな物……私たちは作るべきではなかったのだ!」


 バルタザールがそう叫ぶと、かれの足先から一筋の光が地面を伝い始めた。

 その光はちょうどカスパールを包み込むようにして、五つの方向へと伸びていく。

 そして全ての光が繋がると、そこには五芒星が現れた。


「ぬぅ!? これは……」

「カスパール。君の考えは非常に危険だ!」


 五つの頂点から光が伸び、今度は五芒星を包むように円が描かれた。

 その外周には光の文字が現れる。

 カスパールの額から、汗が一筋流れた。


「ふ、封印結界!? バルタザール、貴様……」

「カスパール、せめてもの慈悲だ。この地で、この大陸の行く末を見守っていてくれ」

「ふ、ふざけるなぁぁぁぁぁ!」


 カスパールは人差し指を立て、空中で三角形を二つ描くように動かす。

 それは青い光を放ちながら重なり、六芒星を生み出した。


「マギはこのワシの物だ! 誰にも渡さん!」

「よせ! 封印結界の中で錬金術を使うな!」

「マギはワシの物だぁぁぁぁぁぁぁ!」


 そしてカスパールの指先から解き放たれた六芒星だが、それはバルタザールに届く前に空中で弾かれ、カスパール自身へと跳ね返ってしまった。

 カスパールは再度六芒星を描くが間に合わず、先に出した六芒星はカスパールの前で爆ぜた。


「ぬ、ぬぉぉぉぉぉぉぉ!?」


 身構え、我が身を庇うカスパールだったが、爆ぜた衝撃は結界の外には漏れず、全て結界内に広がっていく。

 それに巻き込まれたカスパールは全身をズタズタに引き裂かれるが、衝撃は倒れる事を許さず、なおも蹂躙され、やがて彼は力なく地面に倒れ伏した。


「あ、あぐぐ……、が、あぁぁぁぁ……」


 満身創痍……

 と言われれば聞こえがいいほどに、カスパールの全身は肉が抉られていた。手の指はいくつか千切れ、右足は膝下から無くなっており、腹は破かれて大量の血を流していた。

 その夥しい血の中に、彼はその身を横たえているのだ。


「……カスパール」


 バルタザールは近くへ行くと、彼をそのまま見下ろした。

 カスパールは震えながら、ゆっくりと顔を持ち上げた。


「ーーバ、バルタザール……」

「許せ、友よ。マギはこの世界に存在してはならないのだ」

「……や、やめ、ろ……。そ、それ、は、永遠を、約束する、ものだ……」

「友よ、永遠など存在しない。存在するのは、その永遠を願い、夢見る人間の想いだけだ」

「ち、違……」

「もう眠れ、友よ。願わくば、永遠が君と共にあることを祈ろう」

「ふ、ふざけ、るな! メ、メルキオールが、貴様を、か、必ず殺す!」

「……」


 口からゴホゴホと鮮血を吐きつつ、なおも悪態をついて来る老人を、バルタザールは哀しげな眼差しで見つめていた。

 そして、手を出して一筋の線を描く。


 ……五芒星。


 カスパールの上で輝き始めた五芒星の頂点を線で結ぶ。

 五芒星は更に光を増した。


「友よ、これで永遠の別れとなる。君が望む永遠だ」

「バルタザール! ワシは、ワシは必ず蘇る! 蘇るぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 あらん限りの力を振り絞って叫ぶカスパールを、周囲の岩が取り囲み、包み始めた。


「いつの日か、必ず! 必ずだぁぁぁぁぁぁぁ!」


 最後の岩が、積み上げられた岩の上に置かれ、カスパールは完全に閉じ込められた。

 バルタザールは更にその岩の牢獄の周囲に五芒星を走らせ、封印結界を施した。


「……友よ。我らの愚かな奢りで、この世界を混沌に落とす訳にはいかぬ。憎むなら、君の愚かさを見抜けなかった私を憎め」


 バルタザールはひとりごちると、視線を変えた。

 その先には……

 岩にもたれて目を閉じる青年の姿があった。


「カスパール…….、新たな王は必要ないのだ。世界を混沌にみちびく王など……」


 バルタザールは青年の肩を抱き抱え起こすと、岩の中に閉じ込められた老人にそう言い残してその場から立ち去った。


 片手に青い石版を抱きながら。


 そして千年後……

 カスパールの封印は解けてしまう。

 ラグとシンが戦った場所……

 クロノシア国とバルト国を繋ぐ山脈にカスパールは封印されていたのだが、二人の戦いは知らず知らずのうちに結界を破壊してしまったのだ。


 千年の時を経て、カスパールは自らの予言通り、復活した。


 世界をその手に収めるために……-

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