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夜会の後に2

楽しんで頂けたら幸いです。

ケヴィンとミッシェルは食堂へ行くと近くに居た侍従に早めの昼食を頼むと共に家令のサムを呼ぶよう依頼する。

程なくして昼食と共にサムがやって来た。

「遅くなり申し訳ございません」

サムは食堂へ入るなり一礼をする間、侍女が昼食を運び込む。

「昼食後にペレッタ公爵家のケイティ嬢が訪問する予定になっている。急で悪いが中庭のサロンへ3人分のお茶を用意して欲しい」

ケヴィンは用件だけをサムに伝える。

「ペレッタ公爵家ですか」

サムは訝しげに反芻する。

「父達の今日の予定はどうなっているかな?時間が合えば一度引き合わせておいた方が良いかと思ってね」

ケヴィンは何食わぬ顔でサムにそう尋ねた。

「本日は3時に帰宅予定になっておりますが」

あまり気の乗らないサムは事務的にそう述べた。

「では帰る時に挨拶に伺う事を伝えておいてくれ」

「畏まりました」

サムは恭しく礼をとると食堂を後にした。



食堂を後にしたサムは急いで厨房まで行くと菓子類を自分で吟味する。

「ペレッタ公爵家の令嬢がいらっしゃる。下手な物を出して我が公爵家の恥になってはいけない」

そうキビキビ言うとサムは料理長や侍女頭にあれこれと指示を出し数人の侍従と共に中庭のサロンへと向かった。

サロンへ着くとテーブルのセッティングから始まり室内の調度品の調整など事細かく指示をする。

ある程度納得いった所で本宅へと戻って行った。

丁度玄関ホールに差し掛かると馬の嘶きが聞こえて来た。

サムは近くに居た侍従にケヴィンへ知らせる様に話すと、数名の侍従と侍女を伴い玄関ホールで出迎える体制をとる。

『間に合った』

サムは思いっきり安堵した。



ペレッタ公爵家のケイティ嬢がラハン公爵家へ来たのは初めての事だった。

ケイティは邸に入るなり家令を初めとする十数名の使用人から出迎えられ驚いた。

何故なら両家があまり懇意にしていない事を知っていたからだ。

そして、奥から颯爽と近寄る二人の人物に溢れそうな笑顔を向ける。

「ケヴィン…」

ケイティは小さく呟いた。

誰にも聞こえない声で…。



兄を先頭にし私達はケイティと形式的な挨拶を交わし場所を中庭のサロンへと移していた。

ケイティは女の私から見ても庇護欲をそそられる雰囲気で、きっとアイザックと彼女はラブラブなんだろうな~と、全然関係ない事を考えていた。

ん?

ラブラブなアイザックって想像出来ないんですけど。

思わず吹きそうになるのを我慢する。

そうしてミッシェルは紅茶を口にした。

あれ?

何かさっきからお兄様とケイティ嬢の二人だけで話していない?


私、邪魔者?


そう思い二人を観察するとどうも昨日今日の知り合いとは思えない位に話が弾んでいる。

そして、ケイティ嬢を見るにどうも恋する乙女モードになっているような?

これを気のせいと証するには無理があるのでは?

ケイティ嬢はアイザックの婚約者なんだよね?と問いたい。

むーっと二人を見ていたらケイティがミッシェルの方を見ると楽しそうに話しかけて来る。

「ミッシェル様はいつも男装をされているとか。私も一度拝見したいと思っておりましたの」

上目遣いにお願いされると…。


破壊力半端ない。


思わず絶句する。

「男の私から見てもそれは凄い美丈夫だから一見の価値はあるな。どうだ。ミッシェル男装して見せては?」

兄も楽しそうにそう言う。

侍女達からも兄を繊細にした感じのイケメンと言われているのでその評価には納得だが、はて?と思う。

「あの…ケイティ様。私の事はアイザックからどの様にお聴きされておりますか?」

アイザックは私の事を男だと思っていたはず。

そうだよね。

そうしたら私、今日は男装してなきゃいけなかったんだよね。

タラリと冷や汗が流れる。

「自分と肩を並べる程の文武両道で魔法にも長けているから女子からの人気も凄い。人間が少し難い様だから今回は女装させて性格を丸くさせようと思う。だから協力する様にと言われました」

「…」

「こんなに愛らしい令嬢を男性と見間違えるだなんて、アイザック殿下もまだまだですわね」

ほほほほほと扇を当てながらケイティは笑った。

何となくだけど、アイザック馬鹿にされている様な…。いや、その前に『アイザック殿下』って敬称つき?友人には敬称なしにさせておいて婚約者には敬称つき?可笑しくない?

「あのケイティ様。もしやアイザックの事あまり良く思っていらっしゃらないのですか」

場所が場所なら不敬罪になる様な事を思わず聞いていた。

「そうですわね。油断できない相手と思っておりますわ。腹黒い所もありますしね。今回の事だって自分より見目が良く入試のテストで首席を取られた腹いせに女装させたのだと思いますわ。ミッシェル様は普段から良いように使われているのではなくて?」

あまりにも的を射ていて何も言えない。

「はい。おっしゃるとおりかと思います」

アイザック…貴方公務も大事だけど、その前に婚約者との溝を埋めた方が良いんじゃない?と真面目に思ってしまった。

そんな事を考えているとケイティはミッシェルを更に落とす様な事を言い出した。

「今日はここにこれて本当に良かったですわ。ケヴィン様とミッシェル様は本当に良く似ていらっしゃるからご兄妹なのではとかまをかけて本日お手紙致しましたの。正解でしたわね」

当たっていて嬉しいわ。と続ける辺り。策士だわ~と思う。

多分アイザックとケイティは似た者同士なのかもしれない。

故にケイティはアイザックに対して同族嫌悪もしくは近親憎悪みたいなものを感じているのかも…。

でもね、多分策略家としてはケイティの方が上かもしれない。

ミッシェルは深いため息をつきながら今度は男装する事をケイティに約束する。

「嬉しいですわ。私あまり友人がいませんの。良ければお友達になっては下さいませんか?」

ケイティは身を乗り出してミッシェルに言い寄る。

思わず腰が引けてしまうも

「私もお友達はいないので喜んでお受けします」

間違ってはいない。

だってアイザックは私の友達ではなく主みたいなもの…。何せ私はアイザックの小間使いになっているんだからね。

「では私の事はケイティと呼んで下さいませ。出来ればケヴィン様も」

有無を言わせぬ迫力に私も兄も同意した。

ケイティ様は見た目と違い凄く押しのある方なのだと思ったのは言うまでもない。


でもね、この時まだ私は知らなかったんだよね。

ケイティ様の本当の狙いに…。





お読み頂きありがとうございます。

また読んで頂けたら幸いです。

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