忍び寄る敵9
半球睡眠
良く動物に聞く言葉だが、今まさに自分が同じ様な事をしている。
半分の意識を魔力回復に、半分の意識を会話にと注意散漫になっているのは全てお酒のせい。
「何だミッシェル。もう酔ったのか?」
ジャックが笑いながら指摘して来る。
「すみませんね」
ぼんやりとしながら更にグラスを傾けた。
半覚醒状態の今は、端から見ると酔っているのと変わらない。
「一度ケヴィン殿と酒を飲んだ事があるが」
「!!」
思わずお兄様の名前に反応してしまう。
「結構強かったぞ」
ジャックが感嘆しながらそう言う。
うん。
そうだね。
兄達は結構豪酒だよ。
私は程々だけどね。
「ジャック。いつケヴィンと酒を飲んだんだい?」
アイザックが笑いながらジャックに問い掛ける。
けど、目が笑ってない。
凄い芸当だ。
一瞬『リアンお兄様に似ているな』と思ってしまった。
「騎士達の懇親会があって、兄を送ったらそのまま一緒にという事になった。あれは去年だったかな。何故かケヴィン殿にからまれてしまった。もう途中から記憶すらなくて」
そう言うと思いっきりため息を吐く。
きっとお兄様の逆鱗に触れたのだろう。
あの兄弟は笑ながら報復して来るから怖いんだよね。
そう思いチラリとジャックを見た。
「まぁ。母の情報で同じ年の子供がいると聞いたので、その子の話とか聞こうと思ったんだが……まぁ、それはもう本人を見たから分かったからいいか」
何かを納得したのかジャックも一気にグラスを傾けた。
そして、アイザックと同じく私にグラスを向けて来る。
はいはい。
どうせ私は小間使いですよ。
そう思いジャックにも御酌する。
その後は気分を良くしたジャックがアイザックとの幼い日々の話をしたりと主に私は聞き手に徹した。
そして、事件が起きたのは宴会を初めてから5時間程が過ぎた頃。
草木も眠る丑三つ時。
三人でボトルを数十本開けた頃だった。
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