模範試合3
「アイザック。昨日はとんだご無礼をお許し下さい」
深々と頭を下げ謝罪の言葉を述べる。
一拍置いてアイザックが「気にするな」と優し気な声音で返答する。
恐る恐る顔を上げれば何故か頭を撫でられてしまった。
「『出来の悪い子程可愛い』と、昔叔父に言われた事があったが……」
『あったが……何だ?』
ポカンとそんな事を考えていると
「今はその心境が分かる様な気がする」
『はっ?』
顔に出なかった私を名一杯誉めてあげたくなる心境だった。
「男同士のハグは良いだろうか。何故か物凄く抱き締めたい衝動だ」
「『なし』でしょう。それは」
何処の熱血スポ根だよ。
そう思いマジマジとアイザックを見た。
「あまり見つめないでくれ。照れる」
何か言語がおかしくないか?
そう思い更にマジマジとアイザックを見てしまう。
「昨日の件は私も悪かったと思っている。立場上謝らないがミッシェルなら分かってくれると信じている」
「はい」
王族を謝らせるって、そんな恐ろしい事を皆の前でされたら貴族として死んでしまう。
「アイザックの立場は重々分かっております」
だから、さっきのような誤解を招くような発言はしないで欲しい。
そう思い真っ直ぐにアイザックを見ていると何故か滅茶苦茶機嫌良さそうに微笑まれてしまう。
「お詫びも兼ねてミッシェルをもてなしたい。次の休みには王宮に遊びに来て欲しい。既に母上の許可も頂いているから大丈夫だ」
「……」
それって強制って言いませんか?
王妃様の許可って何ですか?
私に断る権利なんてないですよね。
「りょ……了解致しました」
口をひきつらせながら何とか応えたが、正直いらない世話だと思う。
何せ休日は大好きな兄が最近は休みで楽しい憩の一時を過ごしているのだ。
それが全ておじゃん。
思いっきり遠い目になってしまう。
「あぁ。そうそう。泊まりでおいで。夜の絶景も見せたいから」
そう言うと更に微笑まれてしまう。
「あの……それも王妃様の許可を……」
「勿論貰っているさ。だから安心しておいで」
そう言ってアイザックは再び私の頭を撫でた。
これって子供扱いだよね。
何か滅茶苦茶複雑。
そして、既に王宮へとお泊まりが決定事項だ。
私は心の中で盛大に溜め息を吐いたのだった。
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