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夜会の後に4

間が空いてしまいました。

すみません。

楽しんで頂けたら幸いです。

翌日、ミッシェルは学校にいつも通りに到着すると、既にアイザック達が教室の後ろを陣取っていた。

ミッシェルはいつもの様に挨拶をする。

「おはようございます。アイザック。ジャック」

「おはようミッシェル。ちょっと場所を変えようか」

アイザックはにこやかに挨拶を返し席を立った。

促されるままミッシェルはアイザックの後ろをついて行く。

ジャックは挨拶もせず眉間にしわを寄せつつミッシェルを睨みながら二人の後ろに続く。



何?

この異様な雰囲気!

ジャックの殺気がもの凄いんですけど…。

身の置き場に困りつつミッシェルは足を進めた。

沈黙が三人の間を暫し包む。



近くの空き教室まで来るとその沈黙を破ったのはアイザックの謝罪の言葉だった。

「ごめんミッシェル。ジャックに君がラハン公爵家の者だってバレてしまった」

『何?』

ミッシェルは無言でジャックを凝視してしまった。

何故それでこの殺気?意味が分からない。

「その件に関しては申し訳ない。ジャックにも他言無用と話はしているから安心して」

『その件』?

まだ何かあるの?

それに何をもって安心出来ると?

眉間にしわを寄せながらミッシェルはアイザックを眺める。

「もう一つは私の婚約者の件だよ」

一瞬細められた目にミッシェルは戦慄を覚えた。

ミッシェルはゴクリと生唾を飲み込み次の言葉を待つ。


まるで断罪されるのを待つ小動物みたいで案外面白いものだな。


アイザックは不謹慎にもそんな事を考えてしまう自分に苦笑してしまった。

「ミッシェル。昨日ケイティ嬢が君の家に行ったよね。何をしに行ったの?」

やはり敬称付きか…。

ミッシェルは思いっきりため息をつきそうになる。

そして二人の様子…特にジャックからの様子から察するにとんでもない誤解が生じている様に思われる。


まさかの自分『間男』?


絶対そう思っているよ。

ここで対応を間違えば不敬に問われてしまうかも…。

下手打つと頭と体がさよならしてしまう。

どちらにしろあまり小気味良い未来ではないのは確かだ。

何か良い方法は無いだろうか?

一瞬が永遠とも思える位の時間に考えられるだけの事を考えた。

自分には大体ケイティに懸想する事も、王家の婚約者に手を出す気概も全然無いのだと思わせなければならない。

ミッシェルは意を決してアイザックをキリリと見据える。

「アイザック。その件に関しては私も一言言いたい。ケイティに私を男だとは言わなかったの?」

非難する様なミッシェルの言にジャックが憤る。

「お前、殿下の婚約者を呼び捨てにするとはどういう事だ!」

怒る所論点ズレてない?

大体、王子のアイザックの事は既に呼び捨てだよ。

「ジャック。良い」

そんなジャックをアイザックは制した。

「詳しく話す前にケイティ嬢が席を外してしまったのでね」

悪びれた様子もなく言うアイザック。

「でも手紙にはしたためたはずなんだけどね」

と付け足してくる。

まぁアイザックに不備がなかったのは知っているけど、ここはミッシェルがその事実を知らないと思われていないと余計な粗を探られてしまうから敢えて聞かなかった事にして話を続けた。

「昨日の午後突然いらして、女性のお茶のみ友達認定されてしまったのだけど」

「…」

「…」

二人とも無言である。

「挙げ句、私の楽しいお兄様との一時を邪魔する様に居座るし…」

涙目になりながらミッシェルは昨日の鬱憤を晴らす様にアイザックに詰め寄る。

『絶対この二人、私とケイティの事勘ぐっている。事と次第によっては私不敬罪になってしまう』

ミッシェルは迫真の演技で二人を翻弄した。



自分自身には、お兄様との楽しい一時を…(思い出しただけでも虚しい過去)あんな見せつける様に私の理想カップル演じなくたって良いじゃない。とは言わないが、それ位の気持ちを込めて兄と二人きりの午後をぶち壊されたとアイザックに訴える。


ミッシェルのあまりにも迫真の演技にアイザックは当事者なだけにたじたじであるが、その様子を一歩後ろから見ていたジャックは呆れた面持ちでため息をついた。


「ミッシェルは重度のブラコンなんだな」

冷ややかなジャックの声。

「敬愛していると言って頂けますか」

地を這うようなミッシェルの声。

「はん?女みたいな言葉使いして、気取った処で様になってないからな」

「気取ってなどおりませんが」

「お前、いつもすかしてんだよ」

「いつもって、何ですか?」

「ちょっと顔が良くて頭が良くて魔術に長けて剣技に勝れていて女子にモテるからっていい気になるなよ」

何か自分で言っていて急にジャックは虚しくなった。

「は?私が何時女子にモテたと?」

尚も食いつくミッシェルにジャックは再び息づく。

「お前の何も知りませんみたいにして女子の気を引いているところだよ」

「意味分かりませんが?」

「これだからモテる男は…」

呆れ顔のジャックにミッシェルは更にカチンと来る。

自分の容姿棚に上げて何言っているんだ!と

「モテるで言うのであれば、むしろ私よりもアイザックやジャックの方でしょう。毎朝女子に『キャーキャー』言われて」

「何言っているんだ。俺もアイザックも婚約者がいる身だぞ」

「騒がれているのは事実ですが!」

「おま「二人ともその辺で…」」

いがみ合う様に睨む二人の間にアイザックが割って入った。

「アイザック言わせてくれ」

アイザックは苦笑してしまう。

そんなアイザックにジャックは一瞬下を向き、再びミッシェルの方を見据えた。

「ミッシェル。ケイティ嬢は仮にも殿下の婚約者だ。そんな立場の女性が他の男の所へ通う意味を考えて欲しい」

ジャックは敢えてアイザックを先程から『殿下』と言った。

「分かっていますよ。ですからケイティには婚約者であるアイザックから嗜めて頂けますか?私からでは多分聞いて頂けないと思いますので」

苛立ちを抑える様に言うミッシェルにアイザックはにこやかに了承する。

「判った。ケイティ嬢には私から話をしてみよう」

「宜しくお願い致しますね。デ・ン・カ」

恭しく頭を下げたミッシェルだが、どう見ても慇懃無礼(いんぎんぶれい)である。

アイザックがまたもや苦笑してしまう。

ミッシェルは頭を上げるや冷笑を浮かべ二人を射ぬく様に見た。

「ところで…どうしてケイティが我が家に来た事が分かったのですか?」

あのケイティがわざわざそんな事を知らせる訳がない。

鋭い眼光に今まで見せた事のないミッシェルの一面を見て、アイザックは息を飲む。

以外と鋭いな…下手に誤魔化しても無駄だろう。

一瞬で頭の中で結論を出すとアイザックは一つ息をつく。

「ペレッタ公爵家に数人の間者が王家より入っている。罷り成りにも王族の婚約者だからね。間違いがあってはいけないだろう?」

ミッシェルは一瞬ケイティに同情の念を抱いてしまった。

お互いがお互いを敬称で呼び合い、更にあらぬ疑いをかけられ監視され、お互いに牽制し合っている事実に居たたまれなさを感じてしまう。

どんだけ相手を疑っているんだ…。

「アイザック…。それって男としてどうよって思うんですが…」

「その件に関してはアイザックには非はない。そう陛下に進言して見張らせているのはむしろ私の方なのだから」

ジャックはそう言うと再びミッシェルを睨む。

「お前が公爵家の者でなければ、俺がお前を消していたところだ」

一瞬にしてミッシェルは目を細目ジャックを値踏みする様に見る。

「どうやって?」

あえて挑発する言葉を選ぶ。

「色々手はある」

「ふう~ん。まぁ良いけど…。そう言う事を言うのは、今はその気が全然無いと思って良いんだよね。ジャック」

「あぁ、念のため確認しておくが、ケイティ嬢とは何でもないんだな」

「ある訳がない」

ミッシェルは軽く即答する。

「今後も?」

「ありえません」

女同士で何があると?

そう言えたら楽なのに…。

思わずため息をつくとジャックを更に逆撫でしたらしく、ジャックがプルプルと肩を震わせていた。

「二人ともこの件は私に預けてくれないか?」

渋々とジャックが頷く。


しかし、アイザックは深層の令嬢にこれからこてんぱんに説き伏せられるとはこの時は思ってもいなかった。




お読み頂きありがとうございます。

次話はアイザック視点でのお話になります。

また読んで頂けたら幸いです。

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