最後の召喚
コレにて魔法使いの勇者召喚譚はおしまいです。
やぁ諸君、魔法使いマーリンだ。
このやりとりも長く続いたが今日で最後だ。
私も長く世界に関わりすぎた、魔王と戦うために勇者を召喚する日々。
ぶっちゃけ飽きた。
なのでほとぼりが冷めるまでは浮世と関わりを絶とうと思う。
だから最後に7代目勇者の話をして終わりにしよう。
七代目勇者、ソレはある魔王を倒すために呼び出された勇者。
魔王ヘイトレッド、その魔王はたいした力を持たない魔王だった。
たった一つ、憎しみの感情を無差別に増幅する以外には。
魔王ヘイトレッドの力によって、この世界に住むありとあらゆる命は、憎しみを無差別に増幅され殺しあった。
ソレは人だけにとどまらず、獣も、虫も、配下である魔族ですらもだった。
自然あらゆる者達が魔王ヘイトレッドを打ち倒そうとした。
けれど近づけばその力に惑わされ、遠くから狙撃を行なえば、視界に移った瞬間に正気を失った。
苦渋の策で視界外から戦略級破壊魔法で周辺の土地ごと破壊するも、魔王の力によって生き延びた。
弱いとは言ってもソレは歴代魔王としてはである。
普通の人間からすればその力は強大、戦略級魔法も防御に集中されれば防がれてしまう。
かつての勇者達も精神を侵すその力には相性が悪いといわざるを得なかった、
アイドルである5代目勇者の歌を活用すれば人々を正気に戻せるのではないかという案が出たのだが、それはファン同士の抗争という最悪の結果をたたき出した。
こうなってはどうしようもないといつものように私の元に使者がやって来た。
正直彼らもピリピリしている、どうやら魔王の力の影響のようだ。
私のように強い力を持った魔法使いや、精神修養をしている武術家達ならば耐えられるだろうが普通の人間には困難なようだ。
私としても同士討ちで世界が滅びても困るので勇者を召喚することにした。
呼び出された勇者は普通の少女だった。
とても可憐でとびきりの美少女だという事以外は。
だから即座にプロポーズをした。
七代目勇者は最初恥らっていたがやがて私のプロポーズを受け入れてくれた。
では結婚しよう。
そしたら使者達が怒り出した、魔王を退治してもらわなければ困ると。
仕方ないので私が開発した奥義、天星魔法で魔王を天空から攻撃して消滅させた。
奥義なので視界外からでも余裕で殲滅可能だ。
コレでなんら問題なく結婚できる。
使者たちに殴られできるなら始めからやれと言われた。
理不尽だ。
とはいえ魔王を退治したのでお引取り願った、
コレが7代目勇者の冒険の顛末である。
そして時は流れ、息子と娘は結婚し家を出て行った。
妻は私と同じ不老長寿の魔法によって今も若い姿のままだ。
私達は家ごと魔法で空に浮かび上がり、私たちの事を誰も知らない土地へ向かった。
次に使者達が来たら驚くことだろう。
今日まで私の物語を聞いてくれた諸君、ありがとう。
いつか再会することがあったら君達の物語を聞かせてくれたまえ。
「それでは、さらばだ!!」
ご愛読ありがとうございました。