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小さな賢者の配達人(リトル・セージ・ポストマン)  作者: 馬ノ やすら
幕間

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幕間

冒険者ギルドにて


「うわぁーん!」

受付嬢が声を上げ泣いている。

副ギルドマスターのケリーはそれを見ながら茶を飲んでいた。

「そんなにあいつが出ていったのが寂しいのか?まさか……惚れてたのか?」

「ち、違いますよ!確かに可愛いとは思っていましたが……。」

「はぁ。」

「そういうケリーさんはなんとも思わないんですか?」

「うん……?そうだな。」

そう言いながらケリーはラインの事を思い返す。

「あいつと実際に面識を持ったのは途中からだが、まあ一言で言えば変人だったしな。」

それに同意するかのように受付嬢も頷く。

「まさしくですね。まさか『配達』をするためだけに冒険者ギルドに入ってくるとは思ってもいませんでした……。」

思い出されるのはラインとの最初のやり取り。


「それにあの素人とは思えない仕事内容に、完遂率。未だ失敗無しですよ!?」

「だな……。それに途中で引っ掛けてきたあのちびネコ。」

「うう……。グラミちゃんだけでも残してほしかったです……。」

「馬鹿言うな。あれでも土地神になり得る魔獣だぞ。流石に面倒見きれん。」


「それにしても寂しくはないんですか?」

それを聞いたケリーが思わず茶を吹き出した。

「ぶふぉ!ごほごほ。」

「ケリーさん、汚いです。」

「阿呆が。お前のせいだろう!まったく……。寂しい理由はあるまい。それに配達人(ポストマン)の情報はあいつが続ける限り、世界の裏側にいても入ってくるんだ。」

受付嬢はそこまで聞き思い出す。

「冒険者組合のネットワークですか!!」

「ああ、そうだ。今じゃ種族の垣根を越えて、冒険者組合は世界中に存在している。つまり、あいつが配達人(ポストマン)であり続ける限り、最新の情報は入ってくる。 それで十分だろう。」


ケリーがそう言うと一瞬受付嬢の顔が明るくなるがそれでも受付嬢から焦った言葉が飛んでくる。

「でもどうしましょう!?」

「何がだ?」

「『配達』ですよ!滞っていたもののほとんどはラインさんが解決してくれていたのに出ていってしまったじゃないですか!!」

「あー、確かに……な……。まあ、なるようにしかならないだろう。」

「受付の私の身にもなってください!!」

そうして受付嬢がケリーに八つ当たりしていると窓口に一人の来客がある。


「こ、こんにちは!!あの!!」

それは一人の少年だった。

受付嬢はその姿を見て対応を開始する。

「はい?こちらは冒険者ギルドです。ご依頼でしょうか?でしたらばこちらでお受けいたします。」

そう言い、いつもの笑顔を浮かべる。

「い、いえ……。僕も冒険者に……。」

そう言いかけたところで、少年は頭を振った。

「僕も『配達人(ポストマン)』になりたいんです!」

決心した少年の目は真っ直ぐ前を向いている。

その言葉と目に受付嬢の心が揺れる。

一瞬下を向いた後、しっかりとその少年を見てこう答えた。

「はい!冒険者登録はこちらです!どうぞ。」


錬金術ギルドにて


ミストとシルバが共同で研究作業をしている。

題材となっているものはスライムだ。


「しくしく……。」

「もー、いつまでそうやってしおれているんです!?シルバさん!」

錬金術ギルド副ギルドマスターのシルバは、見るからに萎れながら作業をしていた。

「だって、ミスト君!!あんな逸材だよ!?それに錬金術ギルドとの掛け持ちもさせたばかりだ!それが……、あんまりだ!!」

「またそんなこと言って……。彼らがいつかこの国を出ていくのはなんとなく想像できていたじゃないですか。」

「だけど、早すぎるだろう!」

「いつまでも、そんなウジウジしないでくださいよ!シルバさん、もう五十歳になるんですよね!?」

「まだ私は四十七歳だ!!」

ラインはシルバを二十代後半から三十代前半だと思っていたが、それは大きな見当違いだったようだ。


パーシヴァルの書斎にて


パーシヴァルは酒を飲みながら書類の束を見ている。

その書類には『秘匿事項』と大きく書かれているのが分かる。


「……。」

パーシヴァルは無言で一枚、また一枚とページをめくる。

そこにはラインが自身の手によってアイゼンバッハ家から追い出された後のことで判明していることが書かれている。

冒険者となり、配達のみで四角鉄級にまで昇格した実績。

その過程で出会った、国家警戒級の魔獣の子を引き取り従魔としたこと。

錬金術ギルド副ギルドマスターからの指名依頼。

商業都市グラールで王国内でも数人しかいない国家鑑定士シルバとの出会い。

そして金級冒険者パーティ獅子の鬣との合同作戦への電撃的参加。

更にはその作戦での活躍。


「ふーっ。」


パーシヴァルはぐいっと度数の高い酒を煽りそして椅子に身を深く委ねた後、手で顔を覆う。


「やはり血は争えないか……。顔だけでなく性格まで母親似とは。」

いつもは厳格な顔に若干の笑みが浮かぶ。

「喜べ、リーニュよ。ラインは間違いなく、お前の息子だった。」


秘匿書類の最後にはこう書かれている。

目標への配達、及び受領を確認。

配達の依頼を受領後、出国を確認。


「……。行ってこい。配達人(ポストマン)……。」


第一部

~完~


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