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怪異日常録  作者: カエデ


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8/8

黒い雨を連れてくるモノ

なんでもない朝。


カエデとレインの1日は、共にコーヒーを飲むことから始まる。


「おはようございます、カエデ」


レインは淹れたてのコーヒーを、カエデの前のテーブルにゆっくりと置いた。


「おはよ、レイン。いつもありがとな」


レインの体は飲み食いするのも可能に作られてるらしい。体に入ったものの処理方法は、人間の消化とは別物らしいが、カエデは説明を聞いてもよくわからなかったので、ただそういうものだと受け入れた。


「いえいえ。それより、今日も歩き回って怪異探索ですか?」


「依頼が来なければ、そうやなー」


「そろそろ生活費が減ってきたので、報酬を受け取っておきたいところですね」


「そうは言っても、神出鬼没な怪異を見つけるのって、ほぼ運やからな」


「それもそうですね。焦っても仕方ありません。気長にいきましょう」


「出会う時は連続で出会うねんけどな。ってか、俺ら割と遭遇率高ない?」


「そうですね。っというか、カエデには怪異を引き寄せる力でもあるのでは?とエクスプローラーの中では結構有名な噂ですよ?」


「なんやそれ。初めて聞いたわ」


カエデは笑いながら、窓から外の様子をチラ見して、その表情を笑顔から好奇心へと変貌させる。


「...レイン、早速その効果出たかもしれへんで」


「はい?」


「外見てみ。雨降っとる」 


「天気予報は一日晴れのはずでしたが...。しかし、天気予報が外れたから怪異のせいと言うのは流石に...」


「ちゃうわ。よう見てみーや。その雨...真っ黒や」


「!!」


レインも表情を一変させた。


外に降り注ぐ雨は、確かに真っ黒だった。

それを確認したレインは、すぐさま携帯を取り出す。


「エクスプローラーに連絡します。もし、あの雨が触れたらアウトみたいな怪異なら...最悪の事態も想定されます」


「待ちーや、レイン。触れたらアウトって感じではなさそうやで」


「バカですか!?何してるんですか!?」 


カエデは窓から手を出し、黒い雨に晒した。

その顔は新しいオモチャを前にした子供のようで、未知のモノへの恐怖心など感じさせない。


「感触はただの雨と変わらんな。冷たいし、色が黒いだけか?」


「まったく...」


呆れながらもレインも観測に混ざる。


「これが怪異ならば、別にただの黒い雨であったとしても、不思議ではありません。目的や意思、行動や現象に意味がない怪異などザラにいますからね」


「まあね。でも、どういう原理なんやろ?どうせ、科学的に証明できる要素なんて持ち合わせてないんやろうけど、この黒い雨は何で出来てるんやろうな?」


「分かりません。でも、それを可能な限り観測して、答えに近い、納得できる説明を見つけるのが私達の仕事であり、役割でしょう?」


「かったいわ。面白そうやから、調べる。俺らはいつもそうやろ?」


同意を求める笑顔をレインに向けるカエデ。


「一緒にしないでください。私は観測者として与えられた役割を全うするだけです。...しかし、カエデの好奇心に寄り添う。それも相棒である私の仕事ですからね。付き合いますよ」


そう答えるレインの表情もまた、優しいものだった。


「素直じゃないねー。まあ、いいや。とりあえず外に出てみるか?」


「そうですね。この黒雨自体が怪異なのか、はたまた黒雨を降らせてる怪異がいるのか。その辺を確認しないとですね」


「んじゃあ、行こうか」


そう言って外に出ようとしたとき、カエデの携帯から着信音が鳴り響く。


「ん?誰や?」


「エクスプローラーからでしょうか?この黒い雨の正体を突き止めてくれとかそういう...」


「......」


「カエデ?」


「レイン...これ...」


カエデが静かにレインへと携帯の画面を向ける。


「!?」


そこには、顔に靄のかかった口元だけが不気味にニヤついている男のようなモノが画面に映っていた。


「なんですか、これは?」


「知らん。でも、間違いなく怪異やろうな」


「害は?」


「今のところない。画面に映ったこいつを見たら何かが起こるってタイプではなさそうや」


「なるほど」


「ただ、こいつなんかずっと画面を内側からノックしてる。しかもパーで」


「はい?」


「いや、ほんまに。ノック音はコンコンいうてるけど、手の形はパーでノックしてる」


「いや、意味がわかりません」


「怪異が意味わからんのは日常茶飯事やろ」


「確かに」


「あれ?いつの間にかいなくなってる」


「本当ですね。なんだったんでしょう」


「黒い雨も止んでる。あいつの引き起こす現象やったんか?」 


「断定はできません。可能な限り情報を集めてみましょうか」


「せやな。意味わからん怪異の中でも、特段に今のところ謎の塊みたいなやつ出てきたな...」


「嬉しそうですね」


「そう見える?」


「ええ。すごく」


「さすが、俺の相棒やね」


「はいはい。さあ、今日も今日とて調査開始です」


「了解」 


二人は今日も謎を追う。


怪異報告書


報告者:レイン


観測者:カエデ


怪異名称:レインマン


怪異分類:人型


危険度:不明


発見場所:不明。カエデのスマホに一度出現。


概要:顔に靄がかかっており、口元だけが不気味に笑っているように見える。


確認された現象:出現同時刻に黒い雨が降っていたが、関連性は不明。要調査。


発生条件:不明


検証結果:不明


危険性評価:不明


推奨対応: 調査


備考:発見者である観測者レインと観測者カエデが調査を試みるも、その後姿を現すことはなく、調査は一時中断された。

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