出会い2
この交番に配属されて3年になる。
道案内ができない場所はないと自信がある。
この小さくも平和な町に、珍しく怪しい大きな男の目撃談が多く入ってきた。
ただ、なにか悪いことをしたわけではない。
姿が特徴的すぎて、大きくて岩のようにゴツゴツしていたという目撃談と、顔は彫像のように美しい人であったという目撃談もある。角を曲がると消えるというのもある。
それが、「人ではなく、『それ』なのではないか」と、一種のオカルト的に町で話が大きくなってきていた。
そして今、大きなマントのような布に包まれた怪しげな「それ」が目の前にいる。
確かに大きい。
ゆっくりと怪しまれないように近づく。
そして、表情が見えるところまで進むと、「それ」は私に振り向いた。
顔は彫像のようにというより、彫像そのものだった。
「君は大きいな。私は、そこの交番にいる小谷というものだ」
お前は警察というものだな。
「そのとおり。いささか、君は噂になっていてな。」
この男は口が動かない。
「君は、面をつけているのか。」
そうではない。
「なるほど。面の隙間がないが、どうやって話している?」
音は口のあたりを振動させている。
「噂は本当なのかな。君は、日本人ではないな」
不気味な男なのだ。口を開かずに声を出す。
この世ならざる恐ろしい存在だと思うのだが、
その圧倒的な存在感がそれを口にすることを許さなかった。
噂になっているのか。居心地がよい土地だったのだが……
「噂といっても。お前に助けられたというものばかりでな。
まあ、失礼ながら不気味なお前の姿から想像もできない明るい内容でな。
どうしても、お前と話してみたかった」
そうか。不気味がられてはいないのだな。今の私は大した力はない。
ここで稼働制限までいたいのだ。そしたらただの岩になる
「稼働制限?」何のことかと聞こうとしたら、道路向かいのほうから呼びかける声がかかった。
こちらに向かって手を振っているのは、車いすに乗った森元さんだった。
森元さんは元々活動的で、68歳のとき、病気で最近車いすになったが相変わらず外へどんどん出て行く方だった。森元さんは、信号も横断歩道が近くになかったので、道路を横切って、こっちへ渡ろうとしていた。
「だめだ。あぶない。森元さん戻って、戻って」と声をかけた時、
「それ」は、あちらにいた。
「それ」は、森元さんの車いすを後ろに引いて道路を横切るのを止めさせた。
「それ」に、楽しく話しかけている森元さんが見えた。
今何が起こった。瞬間移動しなかったか。
今度、直接聞いてみようと思う。




